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理系のような電気電子や機械、建築とは違い、文系は、大学で学んだことを仕事に直接的生かすことが少ないのが実情です。

理系の場合、自分が学生時代に学んだお勉強の知識をベースにどんどん専門スキルを磨いて、バリバリ実践をあげて昇格、というイメージを描くことが出来ます。では、文系学部卒で会社に入ってから他の人達と差をつけるにはどうすれば良いのでしょうか?

この記事では、文系出身の人が会社で出世するために必要な取り組みについて解説します。

必要な取り組みを解説する前に、理系職種と文系職種のあり方について確認します。文系職種の立ち位置を認識した上で、取り組みを見ましょう。




理系と文系の決定的な違い

理系と文系の決定的な違いを確認します。理系の仕事では、学生時代に学んだお勉強の多くが実務に生かされる、ということです。文系職種も、もちろんゼロではありません。
例をいくつか挙げてみます。
<文系>
■資材調達部門
物品の適正な購入
法令に基づいたメーカーとのやり取り
見積りやメーカー選定

■人事部門
人事労務管理
福利厚生
人材開発

いかがでしょうか。法令に基づいたやり取り、とか人事労務管理では、法学部で学んだ法律の知識を多少生かせるかもしれません。しかし、これらの職種に就くために法学部を卒業していないとダメかというと、全くそんなことはありません。配属されてから、その対象となる法令をピンポイントで把握すれば十分です。

ほとんどの業務が、会社に入ってから覚えることができるものです。

理系はいかがでしょうか。

<理系>
理系の業務の一例として、機械エンジニアの仕事を挙げます。お勉強の部分が直接的に生かされるケースがほとんどです。
■機械エンジニアリング
設計・製図
試作品組立
製造ラインフォロー
→機械製図、機械設計、機械材料、機械製作法、材料力学、機械要素、機械力学、物理、化学、数学など
の大学や高校で学ぶ学問ベースの総合的なスキル(場合によっては一部)、プラス、設計現場や製造現場で習得した現場スキルをもって、一人前の動きが出来ます。特に、三角関数や運動方程式などの数学や物理の知識は、まさにお勉強の部分が生かされます。

ひとつのメーカーの中で、機械エンジニアが、化学系研究部門へ異動したり、電気電子エンジニアリング部門に異動したり、ということは担当レベルでは皆無といって良いでしょう。

文系職種である、人事、調達、生産管理、企画、経理、サービス、営業などは、部門間異動が容易です。会社にも依りますが、人事異動が頻繁に起こります。専門スキルがなくても、その部門で1ヶ月なり1年なり教育を施せばそれなりに仕事が出来るようになるからです。(もちろんエキスパートになるには、その分野で10年20年の経験が必要です。)
また、文系職種ではありませんが、品質系や製造系も専門スキル無しで業務教育のみで成り立つ職種といえます。
理系の勉強をしていない人は、設計開発部門などに来ても、学問のベースが出来ていないため、どんなに教育しても伸び代がいまいちだったケースがほとんどです。

以上のことから、極論をいうと、文系と理系では、

<理系>
数学や物理化学などをベースとした専門的な知識がないとその職には就けない
<文系>
何の基礎知識や経験が無くてもその職に就ける

という決定的な違いがあるといえます。厳しいビジネスマン生活の中で、理系職種の人が、専門性を極める、という拠り所があるのに対して、文系職種の人は、どのようなスキルで他の人と差をつければ良いのでしょうか?

前置きが長くなりましたが、取り組みを見ていきたいと思います。




文系出身の社員が出世するための5つの取り組み

文系職種の人が会社で他の社員と差をつけるための取り組みです。専門性を高めることはもちろん重要ですが、大抵の会社で業務をこなすのに必要なスキルは、その部門で仕事をしながら上達できます。力をつけるべき要素は、

1. ビジネススキルを身に付ける
2. 後輩指導など人材育成
3. リーダーシップを身につける
4. 問題解決や業務改善
5. 語学力を身につける

以上の5つになります。

理系でも必要となるスキルですが、理系の人が揺るぎない専門性に加えて、上記5つのスキルも兼ね揃えているということは稀です。もちろん文系職種の人でこれらを全てマスターすることも難しいです。しかし、これらが備わっていれば、かなり「出来るビジネスマン」だとは思いませんか?

理系と比べて際立った専門性が低い文系職種では、これらをマスターすることが、優秀な社員→昇進、昇格の対象となるわけです。

ひとつずつ見ていきましょう。

1. ビジネススキルを身に付ける

ビジネススキルとは、かなり広い意味を持ちます。この記事の中ですべてを網羅するのはさすがに無理なので、ポイントを解説します。
いわゆるビジネススキルと呼ばれるものは、いくらでも学んで吸収してOKです。しかし、片っ端から学ぶのも大変です。出世するために必要なビジネススキルは、
思考力(地頭力)
人に説明するスキル
会議をリードするスキル
伝わる資料を作るスキル

です。
これが出来ると、周りへの大きなアピールになります。

伝わる資料を作るスキルを磨く
■お仕事で資料を上手に作るコツ、例を挙げて資料作成の基本を解説

上手にプレゼンを行うスキルを上げる
■会社でのプレゼンテーション、成功のために心得るべき4つの要素




2. 後輩指導など人材育成

自分だけが成長する学習行為だけではなく、後輩や所属する部門が成長するように、指導や周りの人の巻き込み、提案を行います。

■後輩指導のポイント
・後輩に自ら考えさせる
・考える上でのヒントを与える
・定期的に報告させる
・報告の形式も考えさせる
・自己啓発学習の大切さを伝える
・自己学習のポイントを伝える
各アクションは、それぞれ大変奥が深いですが、その手法は自分の色を出して良いかも知れません。会社の昇格試験のときには、以下のことも行います。

・昇格のために会社が求めることを伝える
・論文や面接の指導をする

⇒会社の昇進試験の論文や面接に関しての記事もありますので、指導の際の参考にしてください。
■会社の論文試験に合格する! 昇進試験、採用試験での論文の書き方のコツ、対策を解説
■会社の面接試験に合格する! 中途採用試験、昇進試験の面接のコツ、対策を解説

とにかく毎日話しかけて、後輩のやる気や成長具合いを確認します。そして大切なのが、自分の上司にその後輩の成長具合いを報告します。これにより、上司から「ちゃんと人材育成の視点を持って後輩の指導をしているな」と感じてもらうことができ、自分は更なる昇格昇進、とつながるわけです。

組織の成長のためには、構成するメンバーが大きく成長する必要があります。組織開発部門でない限り、課長以下の社員は、「組織開発」自体は専門の部門に任せて、自らは、そのメンバーの成長を推進しましょう。

3. リーダーシップを身につける

会社はリーダーシップを発揮する社員を求めています。誰を次期リーダーとして上に引き上げるか、見ています。その目に止まるようなパフォーマンスが出来れば、
・多くの人を束ねて指示を出す
・全体的なスケジュールを管理する
・どんな人にでも力を発揮する
・メンバーを気遣い、フォローする
・上司に進捗を定期的に報告する

という具合にリーダーとしての基本的な振る舞いを心掛けます。マネジメントの視点にやや近いかもしれません。やがて昇進の声が掛かることでしょう。

ちなみに、後輩の指導とリーダーシップは少し違います。
後輩の指導は、
そのひと個人の成長を促し、結果として組織の力を強くすることが目的。
リーダーシップは、
課業やプロジェクトを適正かつ順調に推進するために、多くの人を動かし、ミッションを達成することが目的。また、リーダーとしての新たなステップを踏むためのトライアルの場でもあります。




4. 問題解決や業務改善

■問題解決
どの会社にいても、問題解決の能力が求められます。
その問題の性質や度合いにも依りますが、まずは、その場を鎮めるための暫定対策を即実行します。
・費用を掛けてでも被害の拡大を防ぐ
・上司や関連部門にアナウンス
・顧客に謝罪
・類似問題発生の可能性は他にないか確認

などです。一旦、火消しをしておいて、次に恒久的な対策を取ります。
・問題の本質部分を改善する
・コストが掛からない手法を取る
・問題が発生しない仕組みを作る
・社員に再発防止教育をする

という具合で、暫定、恒久、でステップを進めて対策していきます。

問題解決には、暫定・恒久に加えてもうひとつ視点を持って対応する手法があります。それは、
・ソフト面での対策
・ハード面での対策

のステップです。

ソフト面での対策とは、業務や物事の根本は変えず細かいやり方や手順を変えたり、作業者が実行の時に注意を払って取り組む、などの対策です。

それに対してハード面での対策とは、本質的な部分を改善して、絶対にその問題が発生しないように仕組みを作り変えたり、その物事自体を無くしたりすることです。

簡単な例を挙げます。
〈問題〉
お客様に書いてもらう記入用紙で、毎回同じ内容の記入ミスや誤解がある
〈ソフト面での対策〉
・質問文を分かりやすく書きかえる
・事前に受付担当者が質問して後で追記する
・記入内容を受付担当者が詳細に説明する
・別紙の記入方法を読んでから記入してもらう
〈ハード面での対策〉
・三択や四択など選択式にする
・その記入項目そのものをなくす
・お客様記入行為自体をなくす

こんな例もあります。
〈問題〉
出入口のドアを開けると向こう側の廊下を歩いている人に当たり、危ない
〈ソフト面での対策〉
・「ドア開閉、危険」と貼り紙をする
・ドアの軌跡の床にテープを貼り紙して注意喚起する
・「この廊下では注意せよ」と全社通達する
〈ハード面での対策〉
・ドア自体を取り外す(可能なら)
・その廊下を通行禁止にする(可能なら)
・ドアをスライド式扉に改修する

ソフト面での対策は、ちょっと考えれば、いくらでも出てきます。ハード面での対策は、かなり思考を働かせないと出てきません。思考力(地頭力)あっての問題解決力、ともいえます。

■業務改善
会社組織は、常に改善を重ねて成長していきます。業務改善を常に意識する社員は、上昇志向があると見なされ、昇進、昇格の対象となっていきます。
担当者レベルで出来る業務改善とは、毎日繰り返し実行するマンネリ作業をなくしたり効率化したり、業務の成果を向上させたりするもので、主に以下のような内容です。

・時間と成果は同じで、作業する人数を削減
・人数と成果は同じで、作業する時間を削減
・時間と人数は同じで、得られる成果を倍増

これらは生産性向上の取り組みをする上で重要な考え方です。成果の倍増とは、いわゆるコストダウンと同じことです。人数削減や時間短縮も、結果的には人件費削減、コストダウンにつながります。会社は常に生産性の向上を目指しています。業務改善の背景には、この生産性向上があると意識しておくと、ビジネスマインドが磨かれていきます。




5. 語学力を身につける

5つ目は、これまでのビジネス視点とは異なり、特殊スキルの部類になります。
外国語といってもたくさんありますが、日本人にとって最も重要な外国語は、英語で間違いありません。

理系の人の中にも英語が得意な強者(つわもの)がたまにいますが、稀です。理系の職種では研究・技術開発や商品、サービスの推進のために専門書を読んだり調査をしたり、なかなか語学のお勉強に時間を費やせないのが実情、という人が多いです。

文系職種として身に付けたいスキルとしては、おまけみたいなものですが、そもそも語学系の学部は文系扱いですから、理系の人達よりは長けていたいものですね。英語が出来るだけでも、その先のビジネスマン人生の中で選択肢が増えて、メリットだらけです。

〈業務で英語が話せるメリット〉
仕事で英語が話せると、英語メールの対応が速くなったり、さまざまな英語での情報を取れたり、言語の仕組みを理解することで論理的に話せるなど、さまざまなメリットがあります。出世という観点で考えると、
・外国人対応に抜擢される
・海外出張に行ける
・海外勤務を出来る
・翻訳や通訳を臨時で任される

といった、業務の幅を広げるチャンスが巡ってくることがメリットになります。

英語が出来るだけでは、出世できません。英語を上達し、そのスキルをうまく活用し、アピールして業務の幅を広げることで、他の人より速く出世をものに出来るでしょう。

文系職種でも経理や商取引きなど専門的な勉強が必要な職種も多いです。そんな中で英語をひととおり話せるようになるまでには時間を要します。
本サイトでは、留学なしで英語を2年程度でマスター出来るようなアドバイスの記事も書いていますので、ぜひ参考にして下さい。
■留学しないで独学で英会話をマスターするための勉強法




まとめ

以上、文系職種の人が会社で出世するための取り組みを解説してきましたが、これらの取り組みは当然理系の職種でも必要になることです。理系の人達は、専門性が確立してきたら、新たなるステップとしていずれ意識していきます。文系職種では早い段階から、ぜひこれらの取組みを開始し、レベルの高いビジネスマンとして昇進、出世をつかみ取ってください。