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会社での昇進試験、就職・転職の入社試験やエントリー時の課題で、小論文や短い論述が求められることは多いです。文章を書くことが得意な人と苦手な人がいるため、この得手不得手が合否の分かれ目になることもあるかもしれません。少しでも上手に書くことで、ぜひ合格を手繰り寄せてみましょう。

いきなり上手に論文を書くことは難しいので、原稿用紙1枚程度(400字)の論文をまず上手に書くことを目指し、そこから幅を広げていきましょう。きりの良いところで、500字程度の小論文を書いてみます。
まず論文例を紹介し、なぜこんな論文になったのか、解説します。そこには、単純に文章を上手に書いただけでなく、合格するためのさまざまな要素や仕組みを注ぎ込みます。できれば、ご自身で書いてみてから、答え合わせをすると効果的です。もちろん先に見ていただいても学習できます。

前提として、書き手は「不動産業界」を目指しているとしています。論文は「だ・である」調で書くことが多いですが、ここでは丁寧さを出したいため、「です・ます」調で書いています。「だ・である」「です・ます」いずれかに統一していれば問題ありません。

会社で仕事をする上での、あなたの夢は何ですか。 500字で論じなさい。
(論文例はここから)

私の夢は、自分のアイデアやその実現により人々の暮らしを豊かにし、ハウジングの新しい価値観を創造することです。不動産業界はさまざまな業界とパイプがありますので、一致団結でその夢はかなえられると考えています。
私のこれまでの希望は、不動産仲介や売買でお客さまのニーズに合った物件を紹介し、喜んでいただくことでした。しかしそこには顧客満足を超える付加価値は発生しません。現代のIoTやAI、DXといった世の中のドラスティックな進化と、不動産業界は無縁ではいられません。たとえばAI機能を利用して、その地域や環境が今後どのように変化していくかを予想することで、そのハウジングがお客さまの未来のニーズに合致していくか検証できます。防犯や家事効率化といったIoT装備標準化の住宅推進などもあります。これらは、不動産業界だけでは成し遂げられません。ハウスメーカーやIT業界、案件によっては政府も巻き込んで進めるような一大事業となり得ます。大変な取り組みですが、次世代の便利で快適で安全な暮らしを実現させることを夢見ています。
不動産業界も科学の進歩と融合して新しい付加価値を実現できます。私は人々の暮らしを変える中核を担いたいです。






いかがでしょうか。500字の小論文はあっさりしていて、書いても読んでもあっという間に終わってしまいます。
会社や採点者によって評点は異なりますが、おおむね小論文評価の観点は以下のようなものです。

  1.  文章構成
  2.  出題への的確な解答
  3.  取り上げたテーマ
  4.  熱意の表れ
  5.  分かりやすい日本語使い

ひと項目ずつ解説します。

文章構成

「500字以内で記述せよ」とあれば、500字以内に収める必要がありますが、「500字程度で」という前提なら、数文字オーバーしても問題ないでしょう。
論文の書き方については、以下の詳細記事があります。記事では、序論・本論・結論の構成で記述し、それらの比重を2:7:1で書くとバランスが良い、と書きました。

今回の記述例では、その考え方を忠実に表現しています。以下をご覧ください。

論文記述上で厳しく決まっているわけではありませんが、この比重で記述すると内容がまとまりやすいメリットがあります。読み手にも伝わりやすく、また書き手である自分自身にとっても、全体を俯瞰して内容をとらえやすいです。

序論では、まず論文のテーマとポイントについて簡潔に述べます。

本論では、序論で挙げたことの理由や具体例、今後の施策などの詳細を述べます。
500字程度の小論文だと、本論部分ではあまり詳細な論理展開にまではいきません。

結論では、まとめを簡潔に述べます。新しい論理展開は原則しません。

出題への的確な解答

「あなたの夢は何か」と質問されているので、序論・本論・結論の各パートでその「夢」や「大きな目標」に関わる記述が必要です。ここでは「仕事論」「世間のニーズ」「業界の目指すところ」といったテーマに寄ってしまわないよう注意が必要です。確実にテーマに沿った軸で記述します。結論部分でのまとめも、テーマに沿った締めくくりにしましょう。

取り上げたテーマ

ここでは「夢」がテーマです。単純であっさり実現しそうなこと、ありふれたことは「夢」ではありません。また実現不可能な、飛躍したテーマも良くありません。「夢」のテーマ選びを的確に行います。

いまいちな例1|あっさり過ぎ
  • どんな問題にもくじけずに対処できる精神力を養う
  • その道のスペシャリストになり後輩の育成も行う
  • 誰とでも上手にコミュニケーションをとる
  • 数々の新製品を世に生み出す
  • 一人前の社員となり会社に貢献する
いまいちな例2|飛躍し過ぎ
  • 私の力で会社を業界トップにする
  • 社長になる
  • 宇宙の謎を解明する
  • 自然災害の起こらない世界を作る
  • タイムマシンを作る



世の中の時流を程よく取り込み、がんばれば実現できそうな内容が無難です。会社とは、破天荒な人材を好まず、組織の中で着実に成果を出してくれる人を好む傾向が強いです。テーマがあまりに飛躍していると、破天荒ぶりを感じ取られてしまう恐れがあります。
その業界や会社が目指したいだろうな、と考えることを自分事に置き換えて書くのが効果的です。保守的過ぎず、革新的過ぎない、ちょうどいい程度を見極めましょう。

熱意の表れ

テーマが「夢」でも「革新性」でも、そこに熱意が表現されていないと、単に文章の羅列です。
小論文は、学会の研究論文とは違います。昇進や採用などに向け、書き手にフォーカスすることがあるため、意気込みや誠実さ、モチベーションなどの人間性も読み取ります。

論文例では、お客さまへの強い思い、業界に革新をもたらしたい意気込み、世の中の技術を取り込みたいチャレンジ精神などを盛り込んでいます。

分かりやすい日本語使い

漢字や文法など、正しい日本語使いは当然のこと、分かりやすい日本語で書くことが、論文では重要です。限られた文字数で相手に的確に内容を伝えることは、ビジネスの世界では常に求められます。

「分かりやすい日本語」の目安
  • 一文多義にしない
  • 一文あたり60字以上にしない
  • 専門用語を多用しない
  • 冗長な文章にしない
  • 漢字ばかり使わない(※)

しないほうがいい内容でまとめました。すべては難しいかもしれませんが気にしてみてください。

※「漢字ばかり使わない」の部分だけ補足します。
接続詞、助動詞、接頭語、接尾語などにはあまり漢字の使用をおすすめしません。もちろん例外はありますが、今回の論文例では以下のようなひらがな使いを活用しています。

─例─
例えば    → たとえば
検証出来る  → 検証できる
変化して行く → 変化していく
喜んで頂く  → 喜んでいただく
これ迄    → これまで

「ありがとうございます」を「有難う御座います」と書くことは少ないと思います。このように漢字を多用すると紙面全体が真っ黒になり、洗練感がなくなります。当て字のように見えてしまうこともあります。ひらがなを活用して見栄えや読み心地を改善することを、校正の世界では「開く」と呼ぶこともあります。文を開くことは、読み手への配慮にもつながります。
難しくはありませんが、普段から文章を書き慣れていないと、少しハードルが高いかもしれません。

まとめ

500字の小論文と、3,000字の論文。労力は異なりますが、記述する上での観点は大きく変わりません。
実のある内容を構成立てて、誠実に、分かりやすく書けば、読み手にきっと伝わることでしょう。
論文は、ある程度練習しないとスラスラとは書けませんので、練習も必要です。ほかの論文系記事もありますので、ぜひご参考にしてください。