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  • 色彩検定1級1次試験に合格する勉強法

    色彩検定1級1次試験に合格する勉強法

    デザイン系・アパレル系などをはじめ、色の知識を必要とする職業には、色彩検定の資格が強い武器になります。色彩検定の中でも1級は「高い難易度」「マニアの領域」などと呼ばれますが、取得すれば「色彩のプロ」として公に認められ、活躍できます。

    この記事では、色彩検定1級1次試験に合格するための勉強法について解説します。
    まずは取得の背景について理解し、モチベーションを上げ、その後に勉強法に進んでください。




    色彩検定1級を取得するメリット

    色彩検定公式サイトや多くの資格サイトには、多くのメリットが書かれています。それら以外に、色彩検定1級取得のメリットは、大きく2つあります。

    少しの努力で「1級」資格を取得

    取得のメリットというより、取得を目指すメリットになります。
    人生には、就職・転職などでの履歴書や、プロフィール・自己紹介作成の際に、保有資格・特技を記載する機会があります。そこに「○○1級」と書けることはどれだけ素晴らしいことでしょうか。どんな資格でも「1級」というのは、その道のプロです。

    「1級」という1つの分野の道を極めたことは、努力の成果に値し、勤勉な姿勢を評価してもらえます。

    色彩検定の1級は、ほかの有名な検定である日商簿記やFP、語学系などの1級に比べて難易度は低く、数カ月の学習期間で合格できます。英検をはじめ語学系の1級は、数年かけても取得は困難です。「1級」という冠を数カ月で取得できることはお買い得で、目指す価値は大きいといえます。

    資料作成などスキル汎用性が高い

    色彩検定の資格自体は「これがあれば稼げる」「給料アップに直接つながる」とはいきません。しかし、色彩検定1級の汎用性は高いです。世の中のたいていのデスクワークには「資料作成」が付いてきます。「資料作成」において「色使い」は切っても切れない関係なので、資格保有により、その配色センスを期待されます。

    資料作成だけでなく、チラシ・ポスター・貼り紙・会場の装飾など、色彩スキルを発揮できる領域は多岐にわたります。もちろん、本来のターゲットであるデザイン系職種にも力を発揮できます。

    資料作成をはじめとしたビジネススキルにおいて、配色スキルがあること。これは就職・転職などのステップアップの際に、加点が期待されます。




    準備期間

    すでに2級や3級の知識があるかどうかによって、1級試験の準備期間は異なります。「2級取得済み」「3級取得済み」「いきなり1級受検」の3パターンです。合格できる目安の期間として書いていますが、もちろん早いにこしたことはありません。また、早すぎるのも燃え尽きてしまうので、注意です。

    2級取得済み|2カ月前から

    1次試験の2カ月前から取り組みます。試験日までおよそ9週間あります。

    「2級取得だが3級は取得していない」という場合でも3級の学習に注力する必要はありません。

    3級取得済み|3カ月前から

    1次試験の3カ月前から取り組みます。試験日までおよそ13週間あります。

    最初の3~4週間で2級のテキストを3~4周読み込み、2級の内容をだいたい把握しておきます。1級の過去問を解く必要はありません。

    2級の内容把握ができた時点で、1級1次試験まで残り9週間ほど残します。ここから1級の1次に向けて取り組みます。

    いきなり1級受検|3カ月前から

    上の「3級取得済み」の場合と同じく、1次試験の3カ月前から取り組みます。試験日までおよそ13週間あります。

    最初の3~4週間で2級のテキストを3~4周読み込みます。理解できないときに、3級公式テキストを参照する程度に利用します。3級公式テキストを端から端まで読む必要はありません。

    2級の内容をだいたい把握しておき、1級1次試験まで残り9週間ほど残した時点で、1級の1次に向けて取り組みます。

    1次試験勉強法

    原則、毎日学習しましょう。目安は、平日は1日2時間、休日は4時間以上確保します。
    とにかくテキストの内容をひとつでも多く暗記することが大切です。以下に、時系列に沿った学習内容の一例を挙げます。

    1~2週目|テキスト読み込み

    最初の2週間は、1級公式テキストをひたすら読みます。まず1周目は、理解できなくてもいいのでとにかく読み進めます。どんなことを学び、覚えるのか、雰囲気をつかむ程度で十分です。

    音読してもいいですが、さすがにボリュームが多いので、黙読で十分です。

    2周目は内容に入っていき、理解するよう努めながら読みます。1周目よりは少し時間がかかるかもしれません。どきどき2級・3級のテキストも参照しながら読み進めます。

    巻末の「参考資料」は読まなくても合格できます。合格してから余裕をもって読むことにします。

    3週目|過去問1回目

    前年度の過去問を解いてみます。まだ解けない問題もあるかもしれませんが、問題のボリューム感や難易度、設問への理解度を把握します。とにかく最後まで解答します。

    テキストをチラ見したり、答えを見ながら解答するタイプの人もたまにいると思います。最後に答えを見るか、見ながら解くか、それはどちらでもいいでしょう。
    真の実力把握や、弱点の見える化のためにも、本当は何も見ないで解いたほうがいいです。しかし、ギリギリまでがんばってからその瞬間に答えを見ると、インパクトがあり、頭に残りやすいこともあります。
    体裁よく学習することが目的ではありません。知識を最も習得できる、自分に合う手法を選びます。

    答え合わせをする時は、試験合格に向けた知識を多く習得できる大切な時間です。過去問の解答解説ページには、誤答肢にも解説があります。正解肢だけでなく誤答肢についてもテキストを参照し、関連の分野の知識も幅広く吸収しましょう。2級・3級のテキストもこの段階で多く活用して、周辺知識を固めます。

    答え合わせが全問終わる頃には、最初のほうの学習内容を忘れていることが多いですので、2周以上やることをおすすめします。

    4~5週目|テキスト読み込み

    3周目に過去問を解いたことで、覚えるべき事項や学習のポイントがつかめています。ここであらためてテキストを読みます。今度は今までより詳細に、本質的な内容理解を伴った読み方です。
    たとえば色彩文化であれば、人名・年代・理論名とその内容、色彩理論であれば、模式図とその仕組みを覚えながら読み進める、といった具合いです。テキストには、重要箇所が太字になっているので暗記必須です。

    6週目|過去問2回目

    まだ手を付けていないほうの過去問を解きます。過去問1回目の時と同じく、自分に合った手法でOKです。1回目の過去問のときと類似した問題であれば、答え合わせ時にもう1つの過去問のほうも確認します。これによって出題のバリエーションも把握できます。

    1回目の時よりもスムーズに解答できることでしょう。1次試験は基本的に知識問題なので、効率的にテキストを読めていれば、この2回目では合格点である7割を上回っているかもしれません。

    7週目~|テキスト・過去問再確認

    過去問を2年分こなせば、知識の習得だけでなく、出題傾向や自分の得手不得手など、さまざまなことが明確になります。

    あとはテキストを徹底的に読み込むだけです。問題集を新たに購入、ということは考えません。出題範囲を越えた問題に対応する時間が無駄で混乱を招くからです。本試験では、ほとんどの問題がテキストからの出題です。応用力を養うとか、真の力を付ける必要はありません。貪欲にテキストを何回も読み、内容を理解することに全力を注ぎましょう。どきどき過去問を再確認して、忘れかけていた知識やポイント、設問傾向などを思い出します。

    試験まで残り1~2週間となったら、暇さえあればテキストを読みます。テキストを見なくても人名・技法・年代・理論・色・模式図・表・フローなどを口頭で唱えられるように、徹底的に読み込み、試験に備えます。





    おわりに

    色彩検定1級は、2級・3級を取得していなくても、効率的に勉強することで十分合格できます。ポイントは、毎日少しでもいいのでテキストを読んだり慣用色名を覚えたり、頭の中を色彩の事柄で埋めていくことです。
    筆者は実は、試験対策2カ月間の中で別の資格試験の提出物があったため、2週間ほど色彩学習から離れています。3級・2級を取得済みで、効率的に取り組めれば、1次試験の1カ月ちょっと前からの対策開始でも合格できると思っています。でも早いに越したことはありませんので、開始時期と1日の学習量を調整しながら進めてみてください。
    2次試験まであって大変ですが、ぜひ合格して、1級色彩コーディネーター資格証を手にしましょう。本記事が試験対策の役に立てば幸いです。










  • 会社規模によって、社員の業績評価・昇進の要件はこのように視点が異なる

    会社規模によって、社員の業績評価・昇進の要件はこのように視点が異なる

    会社には、社員の業績を評価する仕組みや基準が存在します。それはどの会社にもあるでしょう。
    会社によっては、上司など評価者の好き嫌いで決まってしまうケースもあるかもしれません。

    昇進したいと思ったら、自分の会社がどのような評価基準をもっているか確認するのはもちろん、実際の傾向もとらえる必要があります。

    筆者はたくさんの会社を経験しましたが、明文化されている評価基準や上司の好き嫌い以外に、会社の規模による評価傾向の違いも感じました。会社の規模によってどのように異なるのか、分析してみたいと思います。

    まず結論から。

    ◎小さな会社
    めざましい実績をあげて売り上げに貢献したり、これまで会社にはない成果物を創出して新しい領域を開拓、といった個人ベースの活躍が評価されやすい。

    ◎大きな会社
    周りの人や部門を巻き込み活発に物事を進め、チームが定常業務を円滑に進めるよう調整、他部門に自身の名前が広まるような、組織運営型の人が評価されやすい。





    複数社経験がある人もない人も、自分の会社の規模によって、上記のような傾向は感じませんか?
    会社規模にかかわらず、上記の両方できるのに越したことはありませんが、なかなかそんなスーパーマンにはなれません。
    「小さな会社」とは、社員数が数百人くらいまでの規模、「大きな会社」は数千人以上の規模と考えます。

    なぜこのような傾向が見られるのでしょうか。
    これから会社で働く、という人はこれからどのようにして振る舞えば昇進できるか、就活中の人は自分の適性として大小どちらの会社が自分に合うか、参考になるかもしれません。

    小さな会社の場合

    会社の規模が小さいと、以下のような傾向が考えられます。

    • 事業規模そのものが小さく不安定
    • 複数の事業が確立しておらず、事業間で支え合えない
    • ちょっとしたことで売り上げが下がると、会社の存続が危うくなる

    会社がこのような状態で、会社はどうなりたいかというと、もっと成長するために事業の規模拡大や商品・サービスのラインナップ強化、存続と発展のために必要となる十分な売り上げです。

    たとえば、年商20億円・社員100人程度の小規模な会社で、上記のような意向があった場合、自分は昇進するために、次のどちらを選択するでしょうか?
    「自身が所属するチームの風土を盛り上げ、チーム員と上司・他部門とのパイプ役となり健全で円滑な業務運営に導く」
    「従来にはないサービスを開拓し、新しい部門を設立し事業化、年間で5千万円を稼ぎ出す事業へ成長させる」
    当然、後者になります。

    規模が小さい会社では存続・発展のため、たとえスケールが小さくてもラインナップ強化や、短期的でも金になる実績が会社を支えます。
    年商20億円・社員100人の会社の社員の1人がずば抜けた能力による個人プレーで年間1億円稼いだとします。この実績は、年商の5%にあたる金額を1人で稼いだことになり、会社の存続・発展に大きく寄与しています。会社は、発展に寄与したこの社員を高く評価するでしょう。

    チームレベルの小さな単位で考えてみます。たとえば、業務遂行を大幅に効率化する手法を開発し、これまでにない業務フローが全社に確立。このような光る個人プレーも評価の対象になるでしょう。これがリードタイム短縮につながり、売り上げアップとなり、さらなる評価が期待されます。

    規模の小さい会社では、以下のような実績が評価の対象になりそうです。

    • 商品やサービスのラインナップ強化
    • 新規事業立ち上げにつながる新領域の開拓
    • 年商を支える程度の売り上げ実績
    • まぐれ当たりであっても高い売り上げ
    • 業務手法の開発や業務領域の拡大
    • その他めざましい個人プレーでの活躍





    大きな会社の場合

    規模が大きな会社は、社会的に知名度や信頼が高い場合が一般的。社員には、会社の地位や名誉を汚すことがないよう、規律を重んじる教育を施します。多くの社員が組織人としてモラルある行動をし、チームワークをとり調和して仕事を進めることが求められます。
    センセーショナルな成果物・ドラスティックな変化などがいち社員に求められることは稀です。

    大きな会社、たとえば年商1500億円・社員5000人の会社で考えます。
    1人の社員の個人プレーでのめざましい活躍で1億円稼いだとします。それはそれで凄いことですが、会社の年商の0.1%にも満たず、屋台骨を支えるほどの稼ぎではありません。
    ずば抜けた発想力で商品やサービスを新規開発して事業化したとしても、年商1500億円の中でほかの事業と肩を並べるには少なくとも百億円規模の事業なくては成りたちません。ひと息に百億円は現実不可能で、1人の社員の活躍にも限界があります。
    会社がある程度の規模まで成長すると、新しい事業を始める場合、既存の事業から分割・子会社吸収・M&Aなどで、一気に年商の○割という規模の事業を作るほうが効率的なのです。

    このように、大きな会社では、いち社員はめざましく発想・開発したり、個人レベルでの大きな数字を出したりするのは、会社規模で見ると評価の対象にはなりにくいといえます。会社発展のための直接的な運営は、役員クラスの人たちが舵取りをします。
    社員1人ひとりは、この大規模な会社の安定的な運営を部や課単位で危なげなく推進することが求められます。
    規模の大きな会社では、社内の多くの部門が互いに関連し合います。1つの部門が不安定になると、会社全体に影響します。部門1つひとつが着実に運営されなければなりません。部門の運営には、多くのスタッフを束ねて同じ方向を向かせる必要があります。リーダーシップを発揮し、部内外の社員に影響を与える、つまり名前を売る、ということも評価を得るための要件になるでしょう。
    組織が大きいと、なかなか名前が広く通ることは難しいのが現状。たとえばプログラミングスキルを生かして新しい業務プロセスを開発し、生産性向上に寄与した社員が、昇進・昇格の大台に乗ったとします。その時に評価部隊の1人が「俺はこんな奴知らない」と言ったら、昇進レースから脱落することがあります。名前を広く売るには、研究・開発・オペレーションなどの個人プレーに没頭するのではなく、他部門と多く接触したり、人に感謝されたり、活発に周囲の人たちを盛り上げたりしたほうが、会社の存続に役立っているとして、評価の対象になるでしょう。

    たとえ専門スキルや発想力をもち合わせていなくても、元気で人の役に立ち、人をコントロールすることに長けていれば、昇進の可能性がある、ということです。
    むしろ研究や開発に没頭していると、「あの人は職人だから」「コミュ障」などと揶揄されて窓際に追い込まれるリスクがあるくらいです。

    規模の大きな会社では、以下が評価の対象になりそうです。

    • チームの日常業務を安定して回す調整力
    • 部内外で多くの人と関わり、名前を売る
    • 人の役に立つようなサポート
    • 組織の風土を盛り上げて活発にする動き
    • 規律・モラル・業務手順などを遵守した統制
    • その他、会社や組織運営に寄与する活動





    まとめ

    以上をまとめると、次のようにまとめられます。
    規模の小さな会社では、光る個人プレーや成果物がそのまま評価につながるケースがある。
    規模の大きな会社では、組織運営や仕事全体を回すことが評価される傾向がある。

    あくまで傾向であり筆者のコラムですが、あながち間違ってはいないと思います。
    また、個人プレー要件・組織運営要件、それぞれ会社の規模の大小にかかわらず大切な要素であることは、いうまでもありません。
    個人の実績を高く評価する大企業もあるでしょうし、組織運営を重視する小規模企業もあるでしょう。

    本記事により、会社や評価者がどのような観点で社員を見ているかを知るだけでも、少しは道が開けるかもしれません。









  • 包装・梱包の設計やお仕事、どんなことをやるのか数式なしでかんたんに理解する

    包装・梱包の設計やお仕事、どんなことをやるのか数式なしでかんたんに理解する

    梱包・包装という技術領域は、直接携わっていないとなかなか知る機会のない分野だと思います。
    少なくとも、箱のサイズを決めて中に製品を入れるだけではありません。
    この記事は、文系職種の方や、理系でも包装技術に馴染みのない方が、包装設計・包装技術についておおよそのエッセンスを理解できるような内容になっています。数式や難しい計算例を用いた解説ではありません。
    「包装技術」は包装・梱包に関わる技術全般のことで「包装設計」はその設計や検証に関わることですが、ここではまとめて「包装設計」と呼ぶことにします。

    包装の必要性、その役割は3つ

    包装は製品をただ包むだけではなく、明確にその理由があります。主に以下の3つです。

    • 製品を保護する
    • 衝撃・振動・荷重、雨・湿気、ほこりなど、外部から製品に加わるさまざまなダメージを防ぐ

    • 製品の荷扱いをする
    • 取っ手をつける、複数個1セットにまとめる、安定して置くなど、効率的にハンドリングする

    • 販売を促進する
    • 外箱に商品名やデザインを施すことで製品に魅力を付加し、見た人に「買いたい」と思わせる

    世の中の商品のすべてに上記3つが漏れなく該当するわけではありません。しかし製品に対して上記のいずれかに該当する場合は、ふさわしい包装をしたほうがいい、ということになります。
    この「ふさわしい包装」というところが、包装設計の難しさであり、おもしろさでもあります。




    包装に必要な部品とその材料

    包装部品にはどのような物があるでしょうか?
    代表的な材料と共にいくつか挙げてみます。

    • 外箱
    • 段ボール箱や厚紙の箱が主流。木製の箱、プラスチック製の箱などもある。「外装箱」と呼ぶことが多いが、製品1セットずつ梱包する箱を「個装箱」、個装箱を複数個入れる箱を「集合箱」などと呼ぶ。輸送される際の集合箱は段ボール箱が一般的。

    • 緩衝材
    • 製品を保護するためのクッション材で、箱の中に敷き詰められている。発泡スチロールが主流。折り曲げた段ボール、エアキャップ(プチプチ)、エアバッグ(空気を充填してシーリングしたポリシート)、各種発泡プラスチックなど、さまざまな種類がある。

    • パレット
    • 絵の具のパレットではなく、日常的には目にする機会は少ない。たくさんの梱包箱をたくさんまとめて梱包する部材。長距離の輸送や海上輸送などが目的。木製やプラスチック製が主流。

    • ポリエチレン製の袋が一般的。製品を入れる袋、小さな部品を入れる袋で厚さが異なることが多い。袋が外箱の代わりになる商品も多い。密閉用に表面にアルミをコーディングしたものや、静電気防止のために炭素を含ませたものなどもある。

    • テープ・固定部材など
    • 製品が輸送中にバタつかないように固定する。テープにはセロテープ、頑丈に固定するポリエステル製の工業用途のものまである。固定部材は、プラスチック部品や段ボールシートなど多種多様。

    これら以外にも紙や保護フィルムなどがありますが、特に高い品質が要求されるときに使用されます。




    包装設計の方法をかんたんに解説

    製品包装の段階を見てみたいと思います。包装段階が進むにつれて規模が大きくなります。

    製品の個装梱包

    まずは、製品1セットを梱包するイメージです。

    集合箱の梱包

    次に、その製品梱包状態の箱を複数個セットで集合箱に梱包します。

    集合パレット梱包

    次に、その集合箱複数個をパレットに積載し、集合パレット積載状態にします。

    製品の寸法によっては集合箱が存在せずに個装箱だけをまとめてパレットに載せたり、パレットに対して個装箱1個だけを載せる場合もあります。

    コンテナバンニング

    最後に、その集合パレット積載の貨物を海上コンテナやトラックに載るだけ載せます。搬入することを「バンニング」と呼ぶことがあります。

    包装設計の手順

    1つひとつの包装部品を設計するところから始めるのではなく、全体の系を考えてから進める必要があります。

    • 製品1セットのサイズ感から考えて、個装箱のおおよその寸法を想定する
    • 個装箱寸法→集合箱寸法→パレットの外寸法を概算する
    • 海上コンテナの標準寸法をもとに効率良く積載できるようなパレットの外寸法と集合箱寸法を微修正する
    • 逆算した集合箱寸法をもとに、個装箱の寸法を見極める
    • 個装箱寸法をもとに、製品との隙間に収まる緩衝材の設計、箱の必要強度算出と材料選定を行う
    • 最終的な個装重量から算出してパレットの構造設計を行う

    個装箱のねらいの寸法が決まってからが、包装設計の本格的な「設計」の始まりになります。

    ちなみに、すでにできあがっている梱包形態に修正を加える場合、または部品や製品をただ包めばいい、などの状況であればその包装部品を設計するところから始めても十分です。

    包装設計の内容

    先ほど「個装箱のねらいの寸法が決まってからが本格的な包装設計」と書きましたが、その包装設計には以下の設計行為があります。

    • 外装箱の設計
    • 緩衝材の設計
    • パレットの設計

    1つずつその設計概要を解説しますが、決して独立した設計行為ではなく、それぞれが密接に関わっています。外装箱の構造を変更したら緩衝材形状にも影響しますし、緩衝材の厚さを増やしたかったら外装箱寸法にも影響します。
    3次元CADを使用して設計を行うことが普通です。
    ここでは設計の細かいやりくりではなく、各包装部品の設計方法の概略を解説します。




    外装箱の設計

    外装箱を設計するには、前提となる条件を用意するところから始めます。
    必要となる箱強度がどれくらいかを決めます。この「強度」とは、箱を段積みしたときに箱の上に何kgまで積載しても潰れないか、を表す強度です。

    強度の前提条件が用意できたら、その強度を満足する箱の構造や材質を決めます。
    電化製品のような重量物なら強度をもつ段ボール箱を、菓子や文具などの軽量物では厚紙や薄いプラスチック製の箱を選定することが一般的です。小型の軽量物では、1セット用の箱に強度をもたせた設計をすることは稀で、個装の箱を複数個まとめて梱包する集合箱のほうに強度をもたせます。集合箱は、強度のある段ボール箱です。

    段ボール箱の強度は、箱の形や段ボール紙材料がもつ特性などから算出します。算出した段ボール箱の強度が、こちらの要求する強度以上であることを確認します。安全率をいくつに設定するかも重量なポイントです。

    菓子や文具などの軽量物より、電化製品などの重量物の箱選定のほうが設計難易度は高いです。

    緩衝材の設計

    緩衝設計を行います。緩衝設計とは、衝撃が加わった時にその衝撃を吸収して内部の製品を保護する部品の設計です。
    緩衝材には発泡材料や段ボール、ゴム材、エアバッグなどさまざまな種類がありますが、緻密に緩衝計算して最適な品質保証を行うのは発泡材料です。主に発泡スチロールです。

    外装箱と同じく前提条件が必要です。製品そのものがどれだけの強度をもっているか明らかにします。梱包状態で落下させたときにどれくらいの高さまでの落下衝撃なら保証するか、どのような落下を何回想定するか、などを決めます。

    前提条件がそろったら、それら各条件、製品の重量、選定する発泡材料の特性値などから発泡緩衝材の厚さや製品への受け面積を算出します。あとは緩衝材の詳細形状を決めます。

    パレットの設計

    パレットは木製とプラスチック製が主流ですが、積載物の重量などを考慮して最適な設計を行う必要があるのは木製パレットです。

    外装箱や緩衝材と同じく前提条件が必要です。積載物の重量と形状、パレットのどの部分にどれくらいの荷重がかかるかを明らかにします。できれば、そのパレットがどのような荷扱い環境におかれるか調査することが理想です。

    前提条件が決まったら、ブロックや板材などの組み合わせにより、パレットの部材構成を検討します。材料強度や材料特性から梁の計算をしたり、強度確保の難しい板材の下にブロックをあてがったりします。
    部材の結合のための釘打ち箇所や本数検討もします。

    その他の包装設計検討

    数式による算出や構造の設計とは異なりますが、以下のような検討事項もあります。

    • 同梱アイテムのリストアップや配置
    • 包装量産工程にふさわしい仕様の検討
    • 最終梱包品の物流事情の把握
    • 最終梱包品の品質検証
    • 設計部品の製造工程の確認
    • 採用部品のエコ対応
    • 部品点数やコストを最小限に抑えた設計
    • 販売促進目的の外箱の外観意匠デザイン

    ほかにもたくさんあります。メーカーによって包装設計エンジニアがどこまで掌握するかは異なります。少なくとも上記の事項くらいはエンジニア自ら把握しないと「井の中の蛙」状態になり、計算してCADを操作するだけの職人さんになってしまいます。包装設計そのものから離れたさまざまな領域を網羅することにより、その設計センスが磨かれていきます。

    包装設計の難しさ、大変さ

    包装設計は製品設計より立ち位置は下に位置付けられる傾向があります。立場の難しさもありますが、設計業務的な難しさをいくつか挙げます。

    • コストを最小限に抑えて要求品質を満足させる
    • 計算結果をもとに構造を実現できないことがあり、チョイスできる材料の範囲で実現させなくてはならない
    • 正しい理論で設計したつもりでも、実機での検証は一発ではうまくいかないことが多い
    • 検証がうまくいっても、市場での物流トラブルにより包装設計問題と突きつけられることが多い
    • 実機での検証パスはもとより、理論でも完璧・鉄壁の設計裏付けをもっておく必要がある
    • 基本ルール・規格・設計手順などを熟知しただけでは足りず、ものづくり・機械工学・物理学・物流事情などの周辺知識や経験、設計センスも要求される
    • 包装設計部門に対して、製品設計・製造・品質・物流などさまざまな部門から困難な要求をされることがある



    包装設計の楽しさ、やりがい

    包装設計職は、楽しいことより大変なことのほうが多いと考えられます。その中で自分がいかにやりがいを見つけていくかが大切です。楽しさ、やりがいは以下のようなものです。

    • 自分の設計した成果物で製品をお客さまに届けることができる喜びがある
    • 製品から個装包装、コンテナ輸送まで、スケールの大きい系を把握できて視野が広がる
    • 3次元CADのオペレーションに慣れると、自分の思い描く包装形態を可視的にモデリングでき、創造力を磨ける
    • 包装技術は機械・材料・製造・品質・物流・環境・量産など関連する領域が非常に多く、設計業務を通して製品化が実現する過程を知ることができ、見識が広がる
    • 自らが設計した包装形態にて検証が合格した瞬間や、大量生産が軌道に乗ったときは、苦労が報われた感、満足感がある

    まとめ

    包装技術・設計業務は簡潔に以下のようにまとめることができそうです。

    包装の目的は、製品保護・荷扱い・販売促進という3つの側面があり、外装箱・緩衝材・搬送用パレットをはじめとした部品により包装の仕様が構成されます。
    包装設計の職務は、製品を梱包する包装設計を行うところから海上コンテナに積載するところまで、広い範囲を扱います。その中で多くの職務の人たちと関わり、幅広い見識を身に付けられるメリットがある反面、その調整は大変です。設計業務には基本の学問や技術全般の知識、経験、センスが要求されますが、慣れてくれば自分の考える包装形態を実現できるやりがいのある仕事でもあります。

    これから包装技術に関わる人、関心のある人は本記事でそのエッセンスを感じていただけましたでしょうか。本記事を読むだけでは設計はできませんが、より深く知りたい人は書籍や専門のWebサイトでの学習を進めてみてください。







  • 技術職に就くなら大学で専門の学問を学んだほうがいい、具体的な理由

    技術職に就くなら大学で専門の学問を学んだほうがいい、具体的な理由

    成果主義、実力主義が一般化してきた現代社会では、学歴が問われることは少なくなりました。しかし、大学で体系的に広く学問を学んでいないと苦しくなる職種があります。技術職です。
    医師、弁護士、薬剤師など、大学での学問と国家資格ありきですが、電気、機械、化学といった技術職は、その職に就くための資格は必要ありません。会社によっては希望によりその技術職に就けてしまう場合があります。
    この記事では、技術職に就くために大学で学ぶ必要があることについて解説し、さまざまな具体的事例をご紹介します。

    理系の大学で学ぶことは? おさらい

    学部や大学によって異なる部分もありますが、理系の学部では以下のようなことを学びます。

    • 専門分野
    • 専門基礎分野
    • 専門の実験・演習
    • 語学
    • 一般教養やスポーツ

    たいてい専門分野の科目ボリュームが最も大きく、難易度も高いです。
    専門基礎分野というのは、幾何学や微分積分、力学などで、専門教育の基礎となる学問です。
    専門分野における実験や演習も多く課せられていることで、座学だけでなく実際のモノの仕組みや現象、理論を体感できる機会を経験します。
    語学については英語が必須で、第二外国語として中国語やフランス語、ドイツ語などが課せられる場合もあります。これらに加え選択科目としてイタリア語、ロシア語、韓国語などさまざまな言語を学ぶことも可能です。
    一般教養は幅が広く、文学、教育学、考古学、経済学、数学などほとんどの人文科学・社会科学・自然科学の科目を学ぶことができます。スポーツの授業やスポーツ科学も選択できる大学が多いです。

    このように大学では、専門科目を中心とした多くの学問を修めます。ひとくちに「電気科で学びました」と言っても、体系的に電気について学び、関連する学問や語学をはじめとするそれ以外の教養を広く学んだことを意味します。




    技術職のためになぜ大学で学ぶ必要があるか

    仕事で技術的な業務を1つ遂行する場合、その行為そのものの知識だけでなく、本人も気付かないくらいに多くの周辺知識が生かされています。

    たとえば機械設計を例に挙げます。「ある装置にモーター機構を追加する」という設計行為にあたっているとき、どのような知識が用いられているでしょうか。

    「要求する駆動スペックと寸法を確認して専用のカタログからふさわしいものを選び、CADデータをダウンロードして図面や3Dモデルに落としこむ」
    一見、問題なさそうですが、これはただの設計オペレーションです。
    今回の設計行為の場合、以下のような知識やスキル、観点も求められます。

    • 設置場所は屋内/屋外のどちらか? 屋外であればモーター部品の耐候性や防水性は問題ないかを見極める
    • 本装置以外からの振動が加わる環境なら、接触部の磨耗は問題ないか? 問題ありそうならゴム材をかます
    • 取り付けにはスプリングワッシャーは必要か? その判断基準は?
    • 重力加速度Gがかかる場面はないか? あるならどんな策を講じるか
    • プラスチック材料は介在しているか? その場合に何に気を付ければいいか?
    • 全体の剛性感は問題ないか?
    • 取り付けはタッピングか、溶接ナットか、ナットか、ボルトか、ネジか、ザグリか、などさまざまな選択肢
    • モーター機構以外に本当にほかの選択肢はないか?
    • 手動の機構もあるがそれではダメか?

    上記の発想が自然に頭に浮かぶには、材料力学、金属材料、非金属材料、振動工学、工業力学などの機械工学の専門分野の体系的な幅広い知識のほか、本質や根本的理由を問いかけるwhy型思考、漏れなく事象を網羅するフレームワーク思考などが基盤となっています。大学で体系的に学ぶことで、さまざまな側面から設計行為をとらえることができるわけです。

    機械工学でいえば、それ以外にも流体力学やロボット工学、機構学、メカトロニクス、熱力学、コンピューターグラフィック、計算機解析、自動制御など、ここには書ききれないくらいのさまざま分野を学び、設計対象の変化に応じて用いる知識を総動員します。

    大学での学問を修めていれば、1つの単元を半年や1年一生懸命学ぶことで少なからず頭に残り、どんなことを学んだかは覚えています。そういう分野があったから、このように調べれば答がわかる、という引き出しが頭の中にできます。たとえ時間が経過しても、引っ張り出すことが可能です。
    大学で学んでいないと「この専門領域にはこのような学問がある」ということを知りません。「自分がそれを知らない」ということすら知らないわけです。

    先ほど、why型思考とかフレームワーク思考などと書きました。そのような思考力を学問として大学で教わることは稀でしょう。しかし大学では4年間でさまざまな先生から講義を受けますので、その中では「本質をとらえよ」「現状を疑え」「会社ではこういう仕事の仕方を求められるから、入社前に○○に備えよ」など多くの指南をしてもらえます。考える力やさまざまな予備知識を養えます。

    専門分野の英単語を定期試験に課す教授も多く、知らず知らずのうちに英単語の知識量も増えます。
    海外に研修旅行に連れていってくれる教育熱心な教授もいます。

    4年生の研究室ではその道の専門家から、専門知識だけでなく、その知識の実業界での生かし方、活躍の仕方、技術的な話の論法などの有意義なお話を聞けます。論文の書き方の基本も学びます。お酒を飲みながら本音で語ってくれる先生も少なくないでしょう。

    元気でバイタリティーにあふれ、これから本格的な大人になる過程で学ぶ幅広い専門学問、語学、教授から直に教わる実用的知識と経験。これらは、大学で学ばずに技術職に就いた場合とは比較にはなりません。技術職として働くためには不可欠といっても過言ではありません。




    大学の学問を修めずに技術職に就いた人の少し残念な事例

    大学で学問を修めずに技術職として働く人を多く見てきました。もちろん優秀な方もいました。人によって異なるのは間違いありません。
    しかし全体的な傾向として、残念ながら力不足と言わざるを得ない技術者は多かったです。
    大学で学問を修めていないとどのような結果を招くことがあるでしょうか?いくつか事例をご紹介します。

    • 概略の計算や暗算が弱い
    • 三角関数や微分積分の概念が薄い
    • 力学的な発想で現象を考えるのが苦しい
    • 基本的な高校物理の法則での会話が難しい
    • その職場での専門学問以外はほとんど知らない

    これらが要因となり、問題が発生したときに1つひとつ原因の可能性をスマートに潰していくことができませんでした。また新しい発想で、従来にないものを創造することもあまり得意ではありませんでした。

    問題発生時にそれを専門的な観点で漏れなくとらえることが困難な例を挙げます。たとえば製品が現地に着荷された時、製品が破損・変形していたとします。その原因をどのような側面から見るかというと、以下のようなことです。

    • 形状、構造などの設計的な問題
    • 組み立て不良上の問題
    • 材料スペックや表面処理などの問題
    • あてがう梱包材の欠品
    • 梱包設計や荷作り状態の不備
    • 過剰な物流条件や輸送上のアクシデント

    このような大枠の視点であれば何年か経験を積めば出てくるようになるかもしれませんが、それらの詳細に関しては苦しいでしょう。
    設計的な問題でしたら、衝撃値Gの想定は適切か、角度をつけた落下でのたわみのシミュレーションは問題ないか、振動でのクリープ、部材の肉厚、材料選定、曲げ部の剛性、溶接箇所、など引き出しが果てしなく必要です。
    梱包設計なら、こちらも衝撃値Gの捉え方、適切な寸法マージンや安全率の取り方、自由落下時の耐久性の限界値など、掘り下げればきりがありません。
    専門の部門に丸投げすると「問題ありませんでした」の回答で言いくるめられます。「○○や△△の仕様は問題なかったのですか?」と他部門にぐいぐい質問をするには、体系的な技術の引き出しがないとできません。
    発生した問題が「筐体表面の異常な変色」であれば用いる知識も異なります。

    大学で技術に関する体系的な学問を学ばず業務経験だけでは、パフォーマンスに限界があります。
    決して無理だとはいいませんが、並大抵の努力では難しいといわざるを得ません。




    大学で学ばずに技術職で成功するには

    大学で技術系の学問を修めずにすでに技術系職種で働いていたり、技術系に就きたかったりした場合はどうすればいいでしょうか?

    単純ですが、その分野に関して大学で学ぶことをリストアップして、ひと通り網羅することです
    関連するアクションは以下になります。

    • 該当の学部や学科で学んだ人から教えてもらう
    • 知人が教科書を持っていたら借りて学習
    • 技術系のWebサイトやYouTubeで無料で学習
    • 関連専門分野の入門編の書籍で学習

    大学で経験するさまざまな実験や実習、レポートなどはどうしようもありませんので、今からの業務経験で補うしかありません。

    もし時間とお金が許すなら、大学の夜間のカリキュラムで学んで大学の学位を取得するか、科目等履修生として特定の科目を学ぶ、という選択肢があります。
    会社で働きながら夜間の大学に通う人を、筆者は多く見てきました。大学に行かなかったこと後悔され、夜間に通いながら本気で学んでいました。このケースですと、目的が明確な中で学ぶので、成果も大きいことでしょう。

    会社では、「技術的な知識と経験」という要素だけでのやりくりではありません。社会人・会社員としての立ち居ふるまいも、成功のために心得ることが大切です。以下の記事には、そのための取り組みやコツを紹介しています。ぜひご参考にしてください。

    高卒でも会社では出世できる。必要な取り組み5つ

    会社で出世するためには何をすればいい? 必要な取り組み5つ

    「人物良好」という評価をもらうために必要な4つの要素

    会社で出世するために、本当に必要なことは? 実力だけではない、ちょっとした心掛け

    会社の論文試験に合格する! 昇進試験、採用試験での論文の書き方のコツ、対策を解説




    高専は?

    大学卒でもなく高校卒でもなく、高等専門学校があります。こちらを出た方々の知識やスキルレベルは平均的にいかがでしょうか。
    筆者が関わった限りでは、技術スタッフとしてのレベルは非常に高いです。16歳から5年間技術の専門科目を学びます。技術系の専門分野だけでなく、社会科学、人文科学、自然科学もまんべんなく学ぶため、大学卒の人と知識レベルにほとんど差はないのが現実です。
    筆者がかつて勤務していた職場、日本の大手AV機器メーカーの開発部門でのこと、光学・機械・電気の総勢20数名の開発者の中で最も優秀な人は最若手(当時20代半ば)の高専電気科の専攻科卒でした。知識の幅広さ、発想力、問題点の発見や解決力、実行力など、高専卒エンジニアのスマートな実力を目の当たりにしました。ほとんどのスタッフが東大をはじめとする日本の上位大学卒揃いでしたが、高専の底力でしょうか。高専卒の技術に関する実力は国のお墨付きかもしれません。

    大学卒の場合は、高校で3年間基本の科目を学び、大学の4年間で専門科目と社会・人文・自然科学を学びます。その7年間と高専の5年間は、技術職を遂行する上では実質的には大差はないと考えられます。
    2年間の教育期間の差や、大学に入るため複数科目の計画的な勉強をする受験を突破している、といった目には見えない苦労や経験が、今日の初任給の賃金差になっているのでしょう。
    ちなみに専攻科卒は、一般の大学の学部卒と同等の学歴に扱われることが多いようです。

    技術職というお仕事に強く関心があれば、高等専門学校に進学することは有効であるといえます。

    まとめ

    技術職として働くには大学での専門の学部・学科で学問を修めたほうがいい、という理由は以下のようにまとめることができそうです。

    • 大学ではその分野の技術領域を体系的に学び、また関連する基礎学問も学ぶため、知識の引き出しが整う
    • 大学では専門の学問だけでなく、職務を遂行する上で助けになる一般教養も多く学び、また教授からはさまざまな個別の技術ノウハウやそれにまつわる関連教育を享受できる
    • 大学の学問を修めない場合、経験と断片的な知識だけでの遂行となり、未知の領域や問題解決への対応に困難が生じる場合がある
    • 高等専門学校で専門学問を修めることは、技術職を遂行する上では有効である

    ただし高校卒でも優秀で出世する人が多くいることも現実です。努力によって自分の未来は変えられますので、大学卒・高校卒にかかわらず就職後してからも学び続けることは怠らないようにしましょう。
    以上、技術職と大学での学問に関するコラムでした。







  • 声優さんから学ぶ、スキルの価値の高さ 声優さんはこんなにすごい

    声優さんから学ぶ、スキルの価値の高さ 声優さんはこんなにすごい

    声優さんのお仕事はとても興味深いところが多いです。一般のビジネスマンの筆者からは当然見えにくい世界ですが、その才能についてビジネス視点で考えてみることは、人材育成やスキルワイドの観点から大きな意味があります。
    このコラムでは、声優さんの才能やそこから学べること、楽しみ方、音声合成との比較、など観る側の視点で論じています。

    声優さんのスキルは?

    普通の人が出せない魅力的な声、これを出せるのが声優さんです。当然、素敵な声を出せるだけでは声優さんにはなれないでしょう。
    声優さんがもっていると考えられるスキルや能力を挙げてみます。

    • いつでも同じ調子での声質
    • 豊かな表現力
    • 声が枯れない強靭な喉
    • 鼻づまりしない安定した体質
    • 風邪を引かない強靭な体力
    • 多くのバリエーションの声
    • 声質を維持した長期での活躍
    • アドリブ、気の利く機転
    • 存在感のある歌唱力

    長期で活躍できると、年月が経過しても続編やゲスト出演が可能で、制作側からは重宝されるでしょう。
    タレント性が重視されるなら、ルックス・ビジュアルやトーク力などほかのスキルも要求されると思います。しかし声のお仕事の場合、顔出しNGのほうがそれでブランド価値が上がるような側面も感じられます。

    たくさんのスキルを所有していることで、オファーも集まるでしょうし、声優さんによってそのスキル領域も大きく異なります。スキルを上げていくことでより多くの活躍ができる、ということろは一般のビジネスマンと共通する部分ですね。
    たくさんのことをできる声優さんをお手本にして、一般のビジネスマンも能力の幅を広げるよう考えることができそうです。

    音声合成技術の発達と声優さん

    筆者は仕事で音声合成ソフトを用いて人工音声を制作することがあり、数種類の使用経験があります。音声合成の技術は目覚ましい進歩が見られ、声質や抑揚、間合いのみならず感情モードなどもあり、時間さえかければかなり品質の高い音声を制作することが可能です。
    たまに「これだけ高品質ならアニメや映画の吹き替えの声にも使えるのでは?」と感じてしまうこともあります。
    しかし声優さんのもつスキルを考えると、音声合成による人工音声は、声優さんから繰り出される生の声にはまだまだ敵わないでしょう。
    声優さんのスキルそのものが証明ですが、特に以下のような技能は音声合成での高品質制作が難しいです。

    • そのキャラクターに感情移入できるからこそ出せる表現力やアドリブ
    • そのキャラクターの声そのもので奏でられる上手な歌声
    • 言葉のような言葉でないような、あいまいなうなずきやため息
    • 「何か違う」という場合の、デジタルではない微妙な声のトーンの使い分け

    声優さんによるお仕事は高品質な声だけでなく、キャラクターになりきる声優さん自身からの新しい発想や提案、出演声優さん同士の掛け合いやコンビネーションによる相乗的な仕上がりは、機械や音声クリエイターには出せない領域です。
    そして何よりも映像を観ている人に与える生の声の暖かさや「この声は○○の声と同じ人の声だね」などと楽しさを感じさせてくれることは、プロの職業声優さんの専売特許といっても過言ではありません。

    AIに取って代わることも、しばらくはないと考えます。たとえばロボットは以下のようなことが得意ですね。

    • 決められたルールのもとで確実に行う
    • 大量のデータから解析・分析する
    • 発生した問題を解決する
    • 具体的な事象をデジタルに扱う

    それに対して人間が得意とするのは以下のようなことです。

    • ルールに書かれていないないことを柔軟にこなす
    • 過去データにないことをかみくだいて表現する
    • 問題を発見して解決する
    • 抽象的なことをアナログで微妙な加減により扱う

    これらを声優さんのお仕事でいうと、おそらく以下のようなことになります。

    • 自身の能力をもとに、要求されたスペック以上の声質を発揮
    • これまでにないタイプのキャラクターを独自の発想で表現
    • 「これは何かが違う」と自らの提案でのやり直しや、演じる側としての全体テイストへの問題提起
    • 声にならない声、話しながら声が高ぶっていく、困ったような嬉しいような含みのある表現など


    音声合成による人工音声だと、声は「制作全体の一部の工程」という位置付けですが、声優さんによる声は「作品に命を吹き込む」というくらいに別物ですね。

    制作費の都合で、音声合成の作業工賃との比較があるとしたらいかがでしょうか。クリエイターの作業工賃は、フリーランスは幅が広いですが、会社員なら1時間あたりの賃率は3千円くらいから6千円くらいです。
    筆者がアニメ音声に匹敵するくらいの音声合成をしても、1分程度の日常会話を作るのに30分以上はかかります。手慣れたクリエイターでもシーンごとに自然な音声合成作り込むのは大変難易度が高いといえます。オペレーションスキルのみならず感性、全体像の把握、微妙なさじ加減、それに加えてスピード感も要求されるからです。
    声優さんの賃金は、そのキャリアによって幅があると思います。費用対効果や生まれる付加価値を考えると、少なくとも現段階では声優さんのほうがメリットははるかに大きいでしょう。

    アニメが人気が出たときに、主人公が歌う主題歌やエンディング、挿入歌がサウンドトラックとしてCD化されることがあります。機械音声だと少し無機質で戸惑いますね。このような商業的な観点から見ても、声優さんが演じることに大きな意味がありそうです。

    セル画はCGに代わりましたが、声優さんの声は音声合成には代わらないでしょう。

    筆者がすごいと思う声優さん

    筆者が好きな声優さん、すごいと感じる声優さんを、ご活動期間の長い順に挙げさせていただきます。「声優さん」とひと言でいってもそれぞれの方々の能力はさまざまです。

    冨永みーな さん

    とてもかわいらしいお声の持ち主ですが、役柄の幅が広く、歌も上手に歌える多才な声優さんです。「サザエさん」のカツオ役が有名です。
    1984年の「魔法の妖精ペルシャ」のペルシャ役が素晴らしくかわいい声です。セクシーな女性の声もお得意で、声質の幅は広いです。冨永みーなさんの地声はペルシャのほうに近いのですが、カツオの声はあまりにもペルシャとは異なる声質でびっくりします。カツオの声を出すことで喉は大丈夫かと心配してしまうほどです。
    台本からは読み取れない話し方のイントネーションを巧みに表現したり、カツオ役は前任者の体調不良時に急遽代行するほど機転の利く対応で、まさに声のプロといえます。

    千葉繁 さん

    独特で分かりやすいお声の持ち主です。渋い声から子供のような声まで楽しめます。
    カッコいい声は、
    ラデイッツ(ドラゴンボール)
    キン肉マンソルジャー(キン肉マン)
    かわいい声は、
    一堂零(ハイスクール奇面組、2頭身のとき)
    ピラフ(ドラゴンボール)
    が代表的といえます。同じ声優さんから創出されるその声色の違いは、アニメの中身以外にも楽しませてもらえます。

    作品出演時にはメインキャラからトーンを変えて通行人の声も担当したり、脇役キャラでもアドリブを利かせ独特の存在感を吹き込み、キャラクターの魅力を引き立てることができる方です。

    小山茉美 さん

    ドクタースランプ・アラレちゃん役が有名です。アラレちゃんのようなコミカルな声のほか、凛々しい声、親しみのある明るい声、しっとりとしたナレーションなど、豊かな表現力が魅力です。

    1979年「機動戦士ガンダム」のキシリア・ザビは怖い上司のような声で、アラレちゃんと同じ声優さんとは思えないくらいの違いです。
    ドキュメンタリーや特集番組などでの澄んだ声のナレーションで、画面の下に「ナレーション 小山茉美」と表示されると驚かされるほどです。

    「アラレちゃん音頭」という曲をアラレちゃんの声で歌ってらっしゃいましたが、「最後までこの声で歌うのはつらかった」とのご本人の言葉があります。演じる声で歌う、というのは大変なことなのですね。
    アラレちゃんについては、放映から35年経過した2016年にも担当するほど声を長期でキープされて、頭の下がる思いです。

    菊地ゆうみ さん

    菊地ゆうみさんは「ちいさなプリンセス ソフィア」の主人公ソフィア役をなさっています。素晴らしくかわいい声を出される方で、演じたキャラクターの存在感にはつい引き込まれてしまいます。
    主人公ソフィアは8歳くらいという設定ですが、菊地ゆうみさんの出される声は、実在の7歳児よりも少女の声です。演じられた当時のご年齢からしても、魔法のような声ですね。
    主にかわいらしい声がお得意のようですが、低い声もカッコいい聞き応えのある、存在感のある響きです。

    「ちいさなプリンセス ソフィア」では、物語のつくりから、主人公ソフィアのさまざまな心の動きの描写が多くの場面で見られます。以下のような描写です。

    • 嬉しい・とても嬉しい
    • 悲しい・とても悲しい
    • 悩む・困る
    • 怒る・叱る
    • 断りたいが断れない
    • 諦める
    • 心の中では悪いと分かっていてもはしゃぐ
    • しぶしぶ認める
    • 反省する
    • 驚く・慌てる・恐がる
    • 疑問を感じる・疑う
    • 諭す
    • ひらめく
    • 安心する・ほっとする
    • いじわるする

    などなど挙げたらきりがないくらいですが、ほかのアニメと比較するとかなり多く、声優さんの幅の広い表現力が求められたと考えられます。
    菊地ゆうみさんは、これらを揺るぎない表現力で演じ切っていらっしゃいます。シーンごとの語りのスピードやトーンのコントロールもとてもお上手で、熱のこもった演劇を観ているかのように引き込まれます。

    菊地ゆうみさんは、歌がとてもお上手です。子供を惹き付けるかわいらしい歌声です。
    「ちいさなプリンセス ソフィア」では、100話を超えるエピソードのほとんどでソフィアの歌う曲が流れます。数年の収録期間でその曲数は数えきれないほどです。本職の歌手でもこれほどの曲数をこなすのでしょうか…。
    それぞれの曲は物語の内容に沿って流れるので、ただ上手に歌うだけでなく、それまでの心の動きに乗せた感情の入った歌唱になります。菊地ゆうみさんの才能が凝縮されています。
    全曲の収録をこなすのも大変だったと思いますが、練習にも個別に時間を費やしたことを考えると、歌唱力のみならず強靭な喉の持ち主さんなのですね。

    ソフィアだけでなく、数多くのキャラクターを演じられ、またTVコマーシャルでのナレーションもお得意とされていて表現の幅も広い方です。年齢もまだお若いので、これからのより一層のご活躍が期待されます。

    菊地ゆうみさんのブログ

    幅広い声質や表現力だけでなく、歌唱力、安定したアウトプット創出といったマルチなスキルをもつことは、ビジネスマンも見習うべき部分ですね。

    まとめ

    声優さんは、多才な能力をもとに作品に命を吹き込み、音声合成には代えられない、価値の高いお仕事をされています。声優さんによって持ち前のスキル範囲は異なるようです。
    スキルワイドにより幅広いお仕事を展開できる、という点は一般のビジネスマンと同じです。また表現力や自らの力でひとつのプロジェクトに付加価値を与える、ということはビジネスマンも忘れてはいけない大切な要素だと気付かされます。
    これからも声優さん方の活躍に目を見張りつつ、自身のスキルアップを考えたいですね。

  • テレビ番組で見られるフリップボードの紙面デザインはマネしないほうがいい

    テレビ番組で見られるフリップボードの紙面デザインはマネしないほうがいい

    会社での資料作りを上手にやりたい、ということで、ほかの人の資料を参考にすることがあると思います。
    ここでは、資料作りの際に参考にしてはいけない「テレビの報道番組に見られるフリップボードの紙面のデザイン」について語ります。

    なぜ、テレビの報道番組でよく見るフリップボードは参考にしてはいけないのでしょうか?
    それは、ビジュアルデザインの法則に従っていないからです。ビジュアルデザインの法則はさまざまな捉え方がありますが、実質的には以下の3つです。

    • 近接
    • 関連要素を近くに配置、そうでない要素を離す

    • 対比
    • 重要な要素を強調、参考程度の要素を控えめに

    • 余白
    • 要素の周りや全体に一定のスペースを設ける

    人に見せて説明するビジネス資料作成の際、ビジュアルデザインの法則を適用するのとしないのとでは、訴求力や分かりやすさ、与えるストレスなど、大きく異なります。


    以下の2つの資料、見ていて内容が瞬時に頭に入ってくるのはどちらでしょうか?


    言うまでもなく、下の資料です。ポイントをつかんで、伝えるべきことが明確にされている、という感じです。「読む」という行為も必要もありません。

    テレビの報道番組でよく見る、フリップに印刷されたデザインやレイアウトは、どちらに似ているでしょうか?
    もちろん上の資料です。筆者が悪い例として作ったものなので、報道番組のフリップボードの紙面デザインは、さすがにここまで酷くはありません。しかし雰囲気がそっくりなことには気付いたと思います。

    報道番組のフリップボードの紙面デザインをマネしてはいけない理由は、以下の通りです。

    • 色の使い過ぎで、その色が何を示しているのか不明
    • ひとつの紙面の中で文字フォントがバラバラ
    • ひとつの紙面の中で複数のテイストのイラストや写真が使用され、落ち着きがない
    • ネット上の無料イラストが使用され、安物感が出ている
    • イラストが多すぎてなおかつ小さい
    • 狭い紙面領域に文章や文字が敷き詰められて見にくい
    • 関連要素もそうでない要素も近接していてまとまりがない

    このようにさまざまな理由がありますが、テレビ番組のフリップボードの仕上がりを否定しているわけではありません。
    テレビ番組では、毎日フリップボードを作らないといけません。そこにデザイナーの添削や作り直しを挟んでいたら本番にはとても間に合いません。

    テレビ番組は長時間にわたって観てもらえるよう工夫が必要です。大胆なレイアウトや、カラフルなデザインのフリップボードに仕上げることで目を惹き、ほかのチャンネルに変えられないようにしたり、消されたりしないようにします。とにかく惹き付ければOKです。


    テレビマンが作るテレビ番組のフリップボードに対して、ビジネスマンが作る発表資料や報告資料は、以下のように相違点があります。

    • 関係者に見られ読まれることが前提にある
    • 内容把握してもらい、決定、評価、代替案など、次のアクションがある
    • 限られた時間で重要ポイントを確実に読み取ってもらう

    テレビ番組のフリップボードのデザインは、ビジネスマンが作る資料のデザインとは別物であることを知っておきましょう。


    まとめとして、以下のことを心得ておきます。

    • テレビ番組のフリップボードのデザインは、まねしない
    • ビジネスマンの資料作りには、ビジュアルデザインを適用する
    • ビジネスマンの資料とテレビのフリップボードは目的が異なる

    以上、テレビ番組のフリップボードの紙面デザインに関するお話でした。