大企業に入りたいが、ハードルが高くて無理、と考える人は多いと思います。新卒でも大企業から内定をもらうことは難しいですが、既卒で手に職もない、という場合は、もっと厳しいでしょう。どうすれば大企業に正社員で入ることができるのでしょうか。
さまざまな方法がありますが、その一つとして、
契約社員から正社員にキャリアパス
するという手段があります。その手法について解説します。
契約社員についておさらい
契約社員は、会社によって呼び方が異なる場合があり、準社員、有期雇用社員、期間社員などとも呼ばれます。契約社員とは、
- 会社から直接雇用されている
- 雇用期間の定めがある
- 一年毎とか半年毎に契約を更新する
- 会社の福利厚生を利用出来る
- 給料は月給、日給が基本、稀に時給制
というのが特徴です。アルバイトとの区別がしにくいときもありますが、主に次の点で異なります。
- 会社との雇用契約がある
- 勤務時間は、フルタイムが基本
- 残業をするときもある
また契約社員の場合、専門性の高い仕事であることは稀です。契約社員に課せられる仕事は、単純作業や定型業務など決まった業務フローにのっとってこなす仕事が多いです。事業企画や開発、営業といった、会社方針や事業方針などを理解して臨機応変に質の高い仕事をすることを求められるのは、正社員のほうです。
どのような職種で募集があるか
会社としてひとつのプロジェクトを数年にわたり実行する際に、実行部隊となるまとまった数の作業員が必要となり、大量の募集が掛かることがあります。工場での生産要員、営業管理など営業職をサポートする秘書係、など定常的に募集されていることもあります。企画、運営、作業指示を行うのが正社員で、その作業に当たるのが契約社員、という見方が強いです。中には、かなり難しい仕事でも契約社員頼み、という会社もありますので、契約社員=○○の仕事、とは一概にはいえないかもしれません。
契約社員の契約期間
労働法では、ひとつの職場で契約社員として働けるのは3年、と決まっており、その年数が経過したら正社員として雇用する、と定められています。専門性の高い仕事や定年後再雇用の場合、5年という決まりもあります。たいていの場合は、3年が節目になります。3年経過しないように、契約期間を最長2年11カ月で募集している会社もあります。
次に契約社員のメリット、デメリットを挙げます。
契約社員のメリット
- 会社の福利厚生が利用できる
- あまり高いスキルを要求されないので楽
- 成果や実績報告、新規取り組みなど要求されない
- 嫌ならすぐに辞めてもいい
- その会社の業務ノウハウを取得できる
- うまくいけば、正社員になれる
契約社員のデメリット
- 3年以上働くことは出来ない
- スキルアップの機会は少ない
- 社会的に信用は大きくない
- 給料は正社員よりは安い
- 契約終了後にはまた就活をする
- 社内での正社員との格差がある
簡単でしたが、こんなところで契約社員のおさらいは出来ましたでしょうか?
契約社員から正社員になる
契約社員を雇用しているすべての会社が正社員への門戸を開いているわけではありませんが、「正社員への登用制度」を設けていることがあります。会社によってさまざまですが、以下のような基準で正社員雇用に変更してもらうチャンスがあります。
- 年に1回登用試験
- 契約期間中に1回登用試験
- 契約期間の終わりに面接
- 部門と人事で協議
大きい会社になるほど、契約社員から正社員に登用するための制度が細かく取り決められていてハードルが高いです。しかし小さい会社の場合、財務上の都合で高い賃金が払えず、3年経過しても正社員登用せずに契約社員として雇用し続けるところもあり、注意が必要です。
契約社員から正社員に登用する際の選考において、正社員になるためにはこうだ、とは一概にはいえませんが、一般的には、次のような選考基準があります。
- 適性検査
- 論文試験
- 面接試験
適性試験とは、数学や国語などの学力試験のことです。会社に正社員登用制度があれば、どのような試験内容があるか調べた上で、対策が必要です。
登用試験などではなく、かなり高いハードルを設けている会社もあります。どうしても正社員になりたかったら、身を粉にして努力し、必死にアピールをする覚悟も必要になります。以下のような要件です。
- 社内のどこを探してもそのスキル所有者がいない
- その人が抜けると課の業務が機能停止するほど重要な職務を担当している
- 所属部門長からの強い推薦がある
これは筆者がこれまで勤務した会社で実際にあった要件です。こんなのその会社の社員にすらいるか?と言いたくなってしまいますが、よぼどのハイスペック契約社員でないと正社員登用しない、ということです。このようなケースでは、特に試験などしなくても、認められれば、人事部門と軽く確認の面接だけして正社員登用となりますので、かえって確実でしょうか。やはり「試験」というのは、失敗する可能性もありますから一発勝負に勝たなくてはなりません。
正社員登用試験では何を見られるか
正社員登用試験がある場合、筆記試験や面接がある、と書きましたが、どのように対策するのでしょうか? だいたいどの会社でも「このような問題が出題されるから、このような対策をしなさい」と、応援する人が助けてくれるでしょう。ここでは、形式的な正社員登用試験として一般的に課されることへの対策を書きます。
正社員登用に値するかの評価対象:
- 基礎学力や地頭力
- 業務での基礎知識
- それなりの専門知識
- 調整力
- ヒューマンスキル
- やる気
会社はその契約社員が、このあと何十年もここで働くにあたり、適性があるかどうかを確認したいのです。試験の項目を1つひとつ解説します。
学力試験の対策(適性検査)
学力試験がある場合、これは、新卒や中途採用の試験に課される試験と同様のものになります。書店でもamazonでもどこでもいいので、J-MATやSPIⅡなどの問題集を5冊ほど練習して解答方法をマスターしておけば、大体7~8割は解けるでしょう。就職試験でも資格試験でも合格ラインは6割ですので、80点獲得できれば、筆記試験はOKです。できれば5冊の問題集を2周勉強できると理想です。
数学
試験ボリュームは、鶴亀算、植木算、食塩水、追越算、確率などの約30問。時間は約40分
数学はすべて文章題なので、1問の解答にかなり時間が掛かります。筆者もこのような筆記試験を何度も受けたことがあります。理系ですが、数学のほうが大変だったという印象です。40分間集中してひたすら解き続けます。迷ったら、「はい、次!」と次の問題に移る、といった感じで時間配分を考えないと、すぐに終了してしまいます。限られた時間の中で的確に判断して多くの正しい答えを導き出す、という能力の客観的スキルを審査されています。
国語
試験内容は、漢字、熟語、反意語、類義語、文章問題などの約40問、時間は約30分。
国語は、知っていればすぐに解答できる、という問題が多いです。数学のように、「まったく分からない、どうしよう」という問題に出会うことはあまりないでしょう。「どっちの選択肢かな~」と迷うことはあります。国語は数学よりも、勉強した分だけ高得点が出せる印象が強いです。言葉の意味や読解力など、仕事をしていく上での基本的な国語力を審査されています。
論文試験の対策
論文試験が課される場合、それほど難しいテーマを出題されることはありません。テーマとして、
「正社員になって変わっていきたいこと」
「契約社員としての業務での工夫とその成果」
「業務で苦労したことと解決策、今後どう生かすか」
などが一般です。会社に入ってからの、昇進試験論文になると、「高利益体質への取組み」とか「組織の生産性向上」など難しいテーマとなりますが、正社員になるための論文の難易度は高くないといえます。また、会社内に「正社員登用のための論文の練習」に関する資料が出回っていたり、上司などが事前に論文の支援をしてくれます。
一般的に論文には、起承転結とか序論・本論・結論の流れ、といったルールがあります。手順は、
- 契約社員として働いてきた中での課題を書く
- その解決策や自らの工夫を書く
- 正社員登用後、その経験の生かし方を書く
⇒簡単そうに見えますが、書いてみるとなかなかうまく書けないものです。論文ですから、その背景やそれに至った経緯なども加えて含蓄のある内容に仕上げなくてはなりません。また何がどう大変だったか、最終的にどのような成果につながったのか、説明しなくてはなりません。事例は1個でいいのでしょうか? 事例はどこまで細かく書けばよいのでしょうか? 配られた用紙の枚数によって、色々とさじ加減も考えなくてはなりません。
論文試験の前には当然練習して書けるようにしておきますが、頭の中に色々なネタがあり過ぎて、「あれもこれも」と題意に沿っていないことを書いてしまわないよう、注意が必要です。これは減点の対象となります。
論文の採点者は、次のようなことを中心に見ています。
- 問題にあるテーマに的確に答えているか
- 正しい文章で書かれているか
- 論文の構成がしっかりしているか
- 自らの工夫やアイデアがあるか
- 会社の利益や発展につながる視点があるか
会社によって採点ポイントは異なりますが、おおよそこの程度が網羅されていれば大丈夫です。
営業アシスタントに従事してきた人が書いた想定での実際の論文例のリンクを貼ります。テーマの捉え方や、流れ、会社員として押さえておいたほうがよい要素の盛り込み方などを拾ってください。
会社の論文試験に合格する! 昇進試験、採用試験での論文の書き方のコツ、対策を解説
面接試験の対策
正社員登用の面接は、新卒の面接とほとんど変わりません。学生時代に打ち込んだことは、さすがに質問されないと思います。昇進試験と比較しても、基本的に面接試験で質問されるはそれほど大きく異なりません。契約社員と正社員との違いは? 正社員になったらどのようになりたいか? などの質問があります。
会社の面接試験に合格する! 中途採用試験、昇進試験の面接のコツ、対策を解説
正社員になるために必要な普段の取り組みは?
会社によって、正社員登用の制度はさまざまです。在籍期間中に一度だけ選考がある、という会社から、年に一度、半年に一度など定期的に開催、といった制度を取っている会社では、日頃の業務でのアピールはそれほど頑張らなくても試験対策だけきっちりやれば、正社員への道は開けます。
ここでは、日頃の業務パフォーマンスから同僚や上司にアピールするためにはどのような取り組みをすれば良いか、を解説します。
「黙っていても選考試験を受けられる」という人も参考にしてください。試験結果だけでなく、人事考課も選考要素には少なからずあります。
正社員にキャリアパスさせるに値する日頃の取り組みとは、すなわち、正社員と同等かそれ以上のパフォーマンスを見せるということです。平社員のサラリーマンが、係長や課長を目指す取り組みと同じことを見せることで、目に留まります。
日頃のアピールは、上司には100%は届きにくいものです。ですから、普通の役職なしの平の正社員より少し抜き出た動き、スキルアピールが必要です。
日々の積み重ねは大変ですが、ぜひ取り組んでみてください。ビジネススキルのアピールに役立つ記事:
■資料を上手につくる
■プレゼン(発表)を上手にやる
■ブラインドタッチを習得
■正しい言葉使い
勤務先の正社員登用制度をチェック
自分が契約社員として働いている会社、または契約社員として働こうと考えている会社の、人事部門や総務部門が契約社員に関する取り扱いをしています。
電話やメールで問い合わせれば、だいたい回答してくれますので、確認してみることをおすすめします。そのとき、以下のことを押さえてください。
・正社員登用の制度はあるか
・どのような制度か
(試験は定期的に開催されるか、誰でも受けられるか、試験項目は何か、何回のチャンスがあるか、など)
もし質問できれば、
・どのくらいの合格率か
・過去の出題例などは入手可能か
・サポートがあるか
など、受かるための徹底的な情報収集をしてください。
上司や他の契約社員との情報交換も忘れないでください。
契約社員から正社員へとキャリアパスするためのノウハウを紹介しました。地道に誠実に取り組み、正社員の座をつかみ取れるよう頑張ってください。