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会社で仕事をする上で、
管理、総務、人事、購買などの文系職種
技術、開発、研究、医療などの理系職種
のどちらがメリットが多いでしょうか?
どちらにもメリット、デメリットがあります。

この記事では、文系職種、理系職種共にどっぷり浸かって仕事をした経験のある筆者が、文系職種に就くことで得られるメリットについて解説します。

この記事の対象者:
文系学部に在籍している学生
文系学部の受験を控えている高校生、浪人生
文系職種に現在就いている社会人




文系職種と理系職種の決定的な違い

仕事には、さまざまな種類がありますが、文系に比べて理系の職種は特殊です。機械設計、電気設計、建築設計、システム開発、化学・生物系研究などが代表的です。営業、企画、管理、調達、人事といった文系職種とは決定的に違うことがあります。

理系の職種は、その職に就くために、大学や大学院、高専などでの専門的なお勉強や実習、実験の経験を必要とする

ということです。例えば、機械工学科の課程では、大学受験時代に勉強した数学や物理の基礎ベースのある学生が、
専門の機械工学(機械製作法、材料力学など)
理系の基礎学問(微分積分や、力学、電磁気など)
を学び、更に選択科目でも、応用化学や宇宙科学、品質工学といった関連の理系分野を学びます。

単に、「建材メーカーで金具の設計やってます」といっても、その学問のバックグラウンドは、受験時代も含めると最低でも5年以上に及びます。その設計業務を行うためには、そこの業務としての設計だけでなく、三角関数や運動方程式などをはじめ、上に挙げたような理系全般の基本的な学術的知識を幅広く駆使する必要があります。

文系の学部で学ぶ、法律や経済論、貿易、文学といった領域も、それぞれ専門性の高い学問を学ぶことは理系と同じですが、その習得学問が就職後の仕事に直接生かされるということはほとんどありません。仕事に必要な知識や経験は、業務をこなしながら吸収できることがほとんどです。理系職種では、業務経験だけでは絶対に足りず、社会人になる前の基礎ベースに加えて、専門性を高めるためにどんどん勉強していかなくてはなりません。

文系職種と理系職種の決定的な違いは、
文系職種 専門の学問無しで仕事ができる
理系職種 仕事に高度な専門の学問が必要

となります。もちろん全ての職種でそうとは限りませんが、ほとんどのケースで当てはまります。この事実から起因して、文系職種には、以下の5つのメリットがあります。

・業務の性質上、問題解決がしやすい
・専門分野の学習時間は少ない
・ビジネススキルのみで戦える
・社内の異動、転職が容易
・給料は理系と同じ

これら5つをひとつずつ見ていきます。
文系職種の人は、その良さを実感し、受験生や大学生は文系職種への意欲が湧いてくると思います。




業務の性質上、問題解決がしやすい

文系職種で扱う対象は、人、もの、金、情報、ルール、安全衛生、サービスなどです。理系職種も同じようにこれらを扱いますが、ポイントになるのは、「もの」が起こす「現象」の部分です。機械、電気、化学、生物、システムなど、取り組んだ結果の成果物が何か良くない現象を起こしたときが、理系職種の最も大変な瞬間です。理系、文系それぞれモデルケースを挙げて解説します。

理系職種の問題解決の例

■問題
駆動機構が動かない不具合が量産ラインで発生
■対策
・どこの機構部品が問題か再現試験で確認
・その原因は、組立作業?組立工具?設計?部品?
・もし部品が原因なら、部品メーカー先で、
 製造工程?製造装置?材料?輸送時破損?
などひとつずつ要因をつぶしながら検討を進めます。もし部品の製造工程に不備があったら、どのように今後ミスなく徹底できるか検討。部品の材料に不備があったら、更にその先の材料メーカーへの適正材料納品や調達などの指南をしたり、、、といった具合いに果てしないアクションや再発防止策が必要とされます。
原因を知っている人が、自分に非がある場合、保身のために真実を語らないケースもあります。

文系職種の問題解決の例

■問題
発注品が納期どおりに客先に届かない
■対策
・何が原因で届かないか発注先に確認
・いつ届くか発注先に確認
・いつまでに届けばよいか客先に確認
・代替品で繋ぐことができるか客先に確認
など、取り巻く環境は限定的です。


文系職種は理系と比較して問題解決の負荷が小さい

発生した問題の規模にも依りますが、簡単にまとめると、文系職種の仕事の場合、問題発生後、
・関係者へのヒアリング
・客先や関連部門への謝罪
・対策案検討
・責任者(担当役職者)から承認
などといったプロセスで解決するケースがほとんどです。関係部門への影響が大きくない場合、責任者やリーダークラスが「この策でいきましょう」と言ったらそれで完結することもあるくらいです。

理系職種では、部品や現象などについて、正しい解が出るまでエンドレスの戦いが続きます。大抵の場合、一件の問題に関わる関係者や部門が非常に多いのです。誰の目で見ても、コスト、品質、納期、環境問題などのあらゆる側面で明らかに妥当な対策で、バランスが取れていることが重要です。責任者が「この策で行こう」と言っても、「品質過剰過ぎて、コストが掛かり過ぎ」「作業が複雑過ぎて今のリソースではさばけない」とメンバーから即否定されることもよくあります。
設計や研究、検証などに多大な時間を費やしてきた成果物に問題発生、ということになると、代替案を遂行するにも同等の時間とお金を掛けて検討や検査を行うため、体力も精神も消耗します。

文系職種である事業企画部門の場合、関連する部門が多いので、人との調整は大変ですが、それでもキーパーソン間での限られたやり取りに終始するため、何度もトライ&エラーを繰り返すようなストレスのある問題解決ではありません。

以上から、文系職種の問題解決は、
・原因究明が比較的容易
・検討、検証のボリュームが小さい
・責任者の一言で片付く場合もある
・心身の疲弊は少ない

というようにまとめることが出来ます。

専門分野の学習時間は少ない

文系職種は、理系のような確たる専門性の高い仕事でないことが多いため、
専門書をたくさん読んで知識の積み上げが不要
というメリットがあります。もちろん文系職種でも専門書を読むことはありますが、理系職種と比較すると、その専門分野の学習量は圧倒的に少ないです。文系職種でも弁護士などの法律専門家は例外ですが、ほとんどの文系職種では、世の中の物の流れや契約、コミュニケーションなどの、社会一般書籍やビジネス書の類いを読むことが多いです。

本当は、理系サラリーマンもこのようなビジネス書を読みたいのですが、その道の専門の勉強をしなければならず、なかなか時間が取れないのが実情です。看護師、薬剤師などの医療従事者になると、日々新しく更新される技術をキャッチアップするだけで精一杯で、ビジネススキルはほとんど身に付けられない、という人が多いです。

文系職種の仕事を遂行するために必要なスキル知識は、大抵の場合、業務のなかで吸収できることが多いです。せいぜい数冊程度の専門書を読んで基本を把握、あとは世の中のトレンドを知るために、その都度インターネットで情報収集する程度で十分です。業務を進めるにあたってのノウハウを解説しているビジネス書を読んで、ビジネスマンとしてのスキルを上げていく学習にたくさんの時間を費やすことが出来ます




ビジネススキルのみで戦える

文系職種は理系ほどの専門の勉強が少ないことで、ビジネススキルアップのための勉強に多くの時間が割けることを前の項で述べました。それに関連した話です。

自分の業務の範囲だけ押さえて、あとは多くのビジネススキルをたっぷり時間を掛けて習得し、社内、社外の人達と高いレベルで対等に会話ができます

ビジネススキルを習得すると、頭が良くなります。対人スキル、ライティングスキル、思考力、プレゼン力やデザイン力をはじめ、Word・ExcelやブラインドタッチなどのOAスキル、これら習得している人がいたら、確たる専門性をもっていなくても、「かなり出来る人」と感じませんでしょうか?

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理系の専門職では、専門分野のことは知ってて当たり前、という過酷な職場もかなりあります。それに対して、文系職種では、ビジネススキルが身に付いている社員を高く評価する傾向があります。同じ時間を使って自己啓発学習をして、評価されやすいのは、間違いなく文系職種です。




社内の異動、職種転換が容易

文系職種は、職種転換が容易です。社内で転部を申し出る場合も、他社を受ける場合も同じです。

理系は専門性が高いため、経験者が求められます。その専門性を武器に仕事が出来るようになるには何年も掛かりますので、部門でそんな長期の育成をしてられません。国家資格が必要な医療系職種は当然のこと、電気、化学、機械系技術部門なども確実に経験者が求められます。

文系職種である、総務、人事、資材調達、経理、サービス、品質管理などは業務ローテーションが実際に可能です。筆者は大小企業を何社も見てきたなかで、これらの部門間での異動者を何人も見てきました。

未経験者を使う部門の部門長は、入って来る人が未経験でも、ある程度教えてから1~2年も頑張ってもらえれば十分戦力になる、と考えています。その人のビジネススキルが高ければ、業務の専門知識をもっていなくても、ぜひほしい、となるわけです。すなわち職種転換にあたり、深い専門スキルはほとんど不要、といえるわけです。転職例を見てみましょう。


容易な転職例1

■社内で転部
資材調達部門で数年働いたが、他の職種にも興味があるため、生産管理部に異動。
要件:
・社内のルールは知っている
・Word、Excel使える
・勤務態度良好
⇒専門性や高い業務スキルがなくても異動は十分可能

容易な転職例2

■他社へ転職
市場サービス部門で5年働いたが、他社の総務部に転職。
要件:
・Word、ExcelなどOAスキルあり
・ビジネススキルを証明
・市場での顧客対応の経験
・問題解決の経験
・さまざまなルール作りの経験
⇒ここに高い専門性は不要
担当業務での実績と、ビジネススキルがあれば、各文系職種間での会社を跨いだ転職が可能

給料は理系と同じ

日本のほとんどの会社が、部門間の給与差をつけていません。たとえば、システム開発部門は年収800万円以上で、総務部門は500万円ということにはしない、ということです。

理系職種は、その職に就くために専門のお勉強をたくさんして、就いてからも必死に勉強して、その上、文系職種と同様にExcel、リーダーシップ他、たくさんのビジネススキルまで学習しなければなりません。それでも給与体系は同じです。

外資系IT企業では、エンジニアは他の職種より高い給与が設定されていたり、職種で給与を決めているところもあります。そういう会社は、部門間での力関係が釣り合わない場合があるので注意が必要です。

理系職種より
・業務の難易度は低い
・職種転換も容易
・専門の勉強に時間を割かない
・ビジネススキルアップに集中できる
にもかかわらず、文系職種の給料は理系職種の人達と同じです。まさに文系職種のメリットといえます。




文系職種にデメリットはあるか

文系職種にデメリットはあるでしょうか?
文系職種のうま味ばかりを述べてきましたが、もちろん文系職種ならではの踏ん張りどころもあります。これを把握しておくことで、文系職種従事者としてビジネスマンをやっていく上での覚悟が出来ます。ある意味、この記事で最も重要なポイントかもしれません。2つ挙げます。

誰でも簡単に就けてしまう

会社は、何の職業スキルもない元フリーターを採用することもありますが、その人を技術系に就かせることはありません。営業、総務、検査、管理、製造、作業系などに配置します。もしその社員が、
・要領がいい
・飲みこみが早い
・感度が良い
・知性が高い
など、人間としての素養が高い場合、あっという間に自分のポジションを奪われてしまいます。このように素養が高い人でも、さすがに5~10年に渡る基礎学力積み上げが必要な理系職業に就かせるわけにはいかず、文系職種配属となるため、さまざまなバックグラウンドの人達がその文系職場に集まりがちです。自分の確たるポジションや、誰にも真似できないスキルを会得しておくことが重要になります。各種ビジネススキルをはじめ、英語力や第2外国語、インターネットスキルなどを身につければ、そうそうは右に出る者はいません。

確たる専門分野をもちにくい

文系職種は、その会社や部門のルールの下で動くことが多いです。一般のビジネス書を読むことはあっても、専門書を読んで知識や考え方を学ぶ、ということを必要としないケースが多いです。仕事を覚えることはできても、何かの専門家になることは大変難しいと考えたほうがよいです。

その会社だけで通用するスキルなのか、一般社会でも通用するスキルなのか、常に見極めながら仕事をする必要があります。会社が倒産したり、人員削減の対象になったときに慌てないように、業務スキルとビジネス全般スキルを確立していってください。

まとめ

文系職種とは、以下のようにまとめることができます。

問題解決が比較的スムーズで
専門の学問を深く学ぶ時間は必要はなく
一般ビジネススキルを武器に活躍できて
異動や転職も踏み込み易い
なのに給料は理系の人達と同じ
という具合いに、良いことだらけだが、専門性を持ち難く、誰でもできてしまうので、自分の確たるスキルレベルを確立しなくてはならない

このことを予め理解した上で、文系職種へ進んだり、文系科目での受験をすれば、自分の目指す姿が明らかになることでしょう。