投稿者: Webライター

  • 成功する小論文! 生成AIにはこう指示を出す!

    成功する小論文! 生成AIにはこう指示を出す!

    生成AIは小論文を上手に提案してくれます。会社での昇進に向けた論文や、就活での自己PR、志望動機など何でも。
    しかし、出てきた論文例は一般論や世の中の傾向・事例をベースにしたものです。自身の体験談からくる臨場感のある記述にはなりません。また出てきた論文例が本当に正しいのか判断するのは自分です。

    AIに書かせた論文を提出するのは良くありませんが、論文の記述パターンを参考にするなら十分に活用できます。

    この記事では、以下について解説します。


    • 生成AIにまずどのような指示を出すか
    • 出てきた論文にどのような修正指示を出すか
    • どのような観点で論文の良し悪しを判断するのか





    生成AIにまずどのような指示をだすか?

    何かテーマがないと話が始まりませんから、「あなたの考えるリーダーシップとは」という仮テーマを扱います。

    まずは書いてもらう

    AIに、以下の指示を出します。

    「あなたの考えるリーダーシップとは」で論文を書いて

    制約なしですから、何が出てくるかまったく予想もつきません。

    最初から細かい指示を出してもいいですが、ガチガチの制約で指示を出すのはおすすめできません。フリー条件で書いてもらうと、そこにはお宝情報が詰まっているかもしれませんね。

    最低限の条件をつける

    条件、つまり目的を伝えます。

    • テーマ
    • 文字数
    • 目的

    目的を伝えるのは、何のための論文か伝えることにより、誤解を防げるからです。これを言わないと、教育論やリーダーシップ論のような学術寄りな内容で出てくるかもしれません。

    AIは優秀ですから、目的を伝えれば、その切り口で書いてくれるでしょう。

    会社の昇進試験のため、「あなたの考えるリーダーシップとは」のテーマの論文を2000文字で書いて





    出てきた論文にどのような修正指示を出すか?

    最初に出てきた論文に対し、内容面で問題なさそうでしたら、次のように指示してみてください。

    この内容で、序論、本論、結論を、2対7対1の割合で書き直してください

    こうすれば、小論文としての体裁がぐっと高まります。利用するAIによっては、すでにいいバランスで書いてくれているものもあるかもしれません。前書きや締めくくりがいまいちなときには、この指示がたいへん有効です。

    ひとつの事例や見解を長々と記述している場合、たとえば「部下の育成」「業務の采配」などに論述が偏っている場合、以下のように指示を出してみます。

    「組織への貢献」の観点も入れて書き直してください。総文字数はそのままで。

    このくらい修正指示を出せば、おおむねできあがってくるでしょう。

    生成AIを利用するにも、目指す形や論述の知識は必要ですね。

    ~小論文記述の基本を学ぶ記事~
    会社の論文試験に合格する! 昇進試験、採用試験での論文の書き方のコツ、対策を解説





    どのような観点で論文の良し悪しを判断するか?

    修正指示を終えてできあがった論文の判定は、自分自身が行います。

    AIが記述するため、ケアレスミス的な誤記はほとんど発生しないと思いますが、論文を提出された側の立場になって査読してみましょう。

    基本的なチェック
    • 文字数は規定の字数に収まっているか
    • 序論・本論・結論のバランスがおおむね2:7:1になっているか
    • テーマに対して的確に解答した記述になっているか
    念のため詳細チェック
    • 誤字脱字
    • ですます調の統一
    • 文の前後関係

    など





    まとめ

    生成AIを小論文の記述練習に利用することは、やり方次第で十分に役立ちます。
    的確な指示で骨格を作り、数回の修正でプラッシュアップ、最後は自分の目で確認します。
    自分なりのAI活用方法も探してみてはいかがでしょうか。





  • 就活での動画エントリー! 動画をどう作ればいい?

    就活での動画エントリー! 動画をどう作ればいい?

    企業の採用プロセスでエントリーの際にプロフィール動画を求められても、どう制作を進めるか分からない、とよく聞きます。

    効果的な動画を作れるように、本記事では、就活での動画エントリーについて詳しく解説します。以下を扱います。


    1.  採用担当者は、その動画から何を読み取ろうとしているか?
    2.  第一印象を整える
    3.  話すテーマは? 文章はどのように作成するか?
    4.  動画のクオリティはどこまで追求すればいい?

    少し長い記事ですが、動画エントリーに関する基本的なことを網羅しています。面接でも生かせる内容ですので、なるべく多くのパートをお読みいただくことをおすすめします。

    採用担当者は、その動画から何を読み取ろうとしているか?

    企業の採用ポリシーや課せられたテーマによって、採用担当者が読み取るポイントは異なります。募集欄には「応募者の◯◯を知るため」のような審査指針の記載がないことがほとんどです。

    採用担当者が知ろうとしていること

    基本的に動画から以下のようなことを知りたいと思っています。

    第一印象
    話し方、表情、髪型、みだしなみなど
    話の中身
    テーマの合致、話の構成、論理性など
    動画の作り
    人物配置、背景、画質、音質など

    ほかに細かいことでいえば、求められた仕様で的確な動画を制作できるか、言われたことをちゃんとできるか、という視点もあります。また、ここぞという提出物の全体的な仕上がり品質に力を注げるか、などの見方もできます。

    なぜ動画を提出させるのか?

    企業によってさまざまな事情があるでしょう。採用活動の際、採用側としては大学名や学科などを考慮に入れた上で、書類審査をします。しかしそれだけで選考を進めると、優秀な人材を採り損ねてしまうかもしれません。そのために面接があります。面接では候補者たちの雰囲気やコミュニケーション能力を見ることができ、自社に合うか判断できますが、時間も限られます。
    そこで、動画エントリーによって、大学名や実績、資格などではなく、その候補者の人柄を面接前に知ることができます。面接は、学生や面接官のスケジュール設定や会場の確保など時間も費用もかかりますから、動画を提出させると、採用活動としては効率的・効果的です。
    動画エントリーにより、企業は学生をより深く知ろうとしてくれているのです。中堅以下の大学の方は、ひょっとしたら大学名や書類内容で切られているかもしれないところ、面接まで食い込めるチャンスです。





    第一印象

    話し方、表情、髪型、みだしなみなどで、清潔感をもたせることは基本中の基本です。
    冒頭でも書いたように、動画エントリーだと採用担当者は、面接を行わなくてもその人の印象を知ることができます。履歴書の証明写真より動画のほうが、人となりが分かります。どんなに練習しても話し方にはその人の癖が出ますから、付け焼刃ではばれてしまうでしょう。表情や髪型も同じです。普段からメリハリをつけて整えていないと、演技や背伸びの感じなど無理が出てしまいます。

    採用担当者が候補者の印象面で見るポイントと概要を以下に挙げます。どのポイントに比重を置くかは、企業ごとの採用ポリシーによります。

    表情
    淡々と話すところと、気持ちが入るところにメリハリをつけましょう。もちろん笑顔が望ましいですが、ずっと笑顔でいるよりは、プレーンなところ、少し力が入るところ、あと笑顔のところ。これが、表情のメリハリです。以下参考です。

    髪型
    清潔感のある髪型が基本。前髪で目や顔の一部が隠れないようにし、顔立ちが分かるようにしましょう。
    かっこいい髪型、素敵な髪型は必須ではありません。ビジネステイストから離れないように注意してください。
    その会社の社風を参考にします。会社のウェブサイトを見れば、おおよその雰囲気をつかむことができます。

    髪色
    自然な黒髪は、まったく問題ありません。
    ヘアカラーを入れる場合、企業によってとらえ方が異なりますから、社風や口コミ、友人・先輩などからの的確な情報収集が必要です。
    以下の髪色の目安では、少し軽さを出している4~5くらい(少し黄赤みを帯びた状態)であれば、一般的に許容されると考えられます。髪色の明度が上がると(より金髪に近くなると)、自然な眉色である黒とのギャップが大きくなり、首上全体が多色使い状態になります。全体的な色みの統一感が損なわれて、印象が低下します。髪と眉の色みとの調整もたいへんですね。
    下図、あくまで一般的目線ですが、矢印の右にいくほど、より無難な髪色です。

    メイク
    ナチュラルに。アイシャドウ、口紅、眉などの色が肌に対して際立ったコントラストにならないよう注意。コントラストが強いと攻撃的な印象を与える場合があります。

    男性は、髭を剃り、眉を整えるのが基本です。鼻毛が飛び出るなど論外です。カサカサ感やそばかすなどが気になるなら、保湿したり、軽くファンデーションを乗せたりしてもいいかもしれません。

    例外|セクシャルな商品やサービスを展開する企業などで、派手なメイクや個性を重視・推奨していれば、適度に合わせることも考慮します。

    服装
    指定や前提条件がなければ、スーツ着用。またはビジネスルック。
    ~「自分らしさ」などの記載がある場合~
    その会社のウェブサイトを見ます。社員の写真が載っていることが多いので、その人の服装のテイストに合わせると、社風に溶け込める印象を与えます。
    「自分らしさ」を鵜呑みにしてまったくのありのままを出すのは間違いです。受かることを考えましょう。
    一般的なスーツのカラーを以下に挙げます。女性も男性も、就活においてスーツのカラーは基本的には変わりありません。黒、ネイビー、グレーなどは、ベーシックカラーと呼ばれ、デザインや流行にかかわらず頻繁に服装に用いられるカラーです。

    話し方
    いかにも覚えた文章を吐き出しているだけ、とか最初から最後まで同じ口調・スピードで突っ走るように話す、などは印象が良くありません。自分の言葉で丁寧に話しましょう。
    話すスピードには緩急・強弱をつけて、強調やアピールのポイントが分かるように話します。





    話すテーマ、文章はどのように作成するか?

    採用担当者はもちろん話の中身にも注目します。テーマの合致、話の構成、論理展開などです。

    テーマに沿った内容で話す

    動画エントリーには、テーマが与えられるはずです。「自己紹介」「自分の長所と短所」「将来の夢」「当社でやりたいこと」などさまざまありますが、そのお題に沿った内容で原稿を作ります。
    たとえば「将来の夢」がテーマなのに、その夢を話す前の体験談に比重を置いてはいけません。

    話の構成と原稿例

    話の構成は、小論文でもスピーチでも原則同じ。
    序論 2
    本論 7
    結論 1
    だいだいこのくらいの配分であれば、締まります。逆にこの配分から離れるほど、聞いている人は理解が難しくなります。

    序論は?
    テーマや話全体の導入、簡潔な主張や結論などを話します。

    「1分の動画」を制作するとしましょう。まず何字で原稿を作ればいいでしょうか。
    ニュースのアナウンサーは、1分あたり350字程度といわれます。その2割を序論にあてるので、70字程度だとバランスが良くなります。
    (ひらがなでの文字数が基本ですが、少し速めの話し方を許容して、ここでは漢字も含めてのカウントにします)

    「当社でやりたいこと」がテーマの場合、以下が序論の例です。


    ◯◯(名前)です。御社に入社して、やりたいことは、海外でのマーケティングです。衛生機器事業を海外に幅広く展開していくとのこと、私の語学力と海外経験を発揮し、貢献したいです。


    名前部分を除外すると77字です。

    本論は?
    論理を展開します。理由、事例、逆説、転換、主張など、具体的な内容です。もし1分の動画でしたら、そんなに多くは盛り込めませんので、限定的で大丈夫です。

    以下が本論の例です。


    1年間の留学で現地の文化や生活習慣を経験したことで、社会人になったら海外に関わる仕事をしたいと思いました。御社はこれから本格的な海外展開とのこと、得意の英語とコミュニケーションスキルを生かしながら、販路拡大の施策や、マーケットリサーチなどを行いたいです。
    御社の衛生事業が欧米でも広く通用するのか、興味があります。現地の人たちと話した限り、文化の違いから関心はなさそうです。国民性や価値観を根っこから覆すような仕掛けを、これから作っていかなくてはなりません。すでにあるアイデアを試してみたいです。


    247字。全体(350字)の7割強です。

    気付いていただきたいことがあります。文中に、程度を表す副詞をほとんど書いていません。「とても」「非常に」「まったく」「たくさん」「きわめて」などです。
    このような表現は意味を補強したり、詳細な描写をしたりと、スパイス的な役割がある反面、意味の本質には寄与しません。
    1分間という限られた時間の中に、程度を表す副詞を用い過ぎると、内容がスカスカになります。または、尺に収めようとして早口になり聞き心地が悪くなります。

    「会社に入ってやりたいこと」だけを正直に書いてはいけません。
    そこには以下の観点も入れてみてください。


    • 自分ができることや保有スキル
    • 自分の経験で生かせそうなこと
    • なぜやりたいかの理由や背景
    • 事業や商品などの理解があること
    • そこに質問したくなるような仕掛け
    • 採用したくなるようなキーワード

    話の軸は、「会社でやりたいこと」からぶれないように注意してください。これらを上手に盛り込むことにより、たった1分間で、多くのことを知ってもらうことができ、審査をパスできるかもしれません。
    効率的に内容が伝わらないと、未知数の人に位置付けられて、保留扱いになるでしょう。

    結論は?
    以下のように、簡潔に締め括ります。


    海外マーケティングにチャレンジすることで、会社の発展と自分の成長を実現させたいです。


    42字。全体のおよそ1割。1分間だと、一言加える程度です。

    この結論パートがあると、いかにも「話が終わりました」という締め括り感が演出できます。「話の組み立てができている人」と写り、ビジネスへの通用度を感じさせます結論パートがないと、詳細なコメントが長々と続いて、突然終わる構成になり、聞いている人には違和感が残ります。
    分かりやすくまとめてみてください。

    テーマを考えるときの参考情報|その会社の規模

    会社は、いったいどのような人を欲しがるのでしょうか。社員や入社希望者にどんなことを考えていてほしいのでしょうか。
    ひとつの目安として、会社規模があります。以下は主な傾向です。


    大きい会社
    組織の安定的持続をベースにした着実・堅実な仕事
    小さい会社
    会社知名度や利益の向上につながる斬新で改革的な仕事
    中規模の会社
    上記の平均的な傾向


    もちろん、完全に上記に切り分けられるものではありません。大きい会社も利益を上げたいし、小さい会社も組織維持は重要です。どちらに比重を置くかの傾向ですので誤解なきよう。
    大企業の面接や提出動画で、あまりに個性的・革新的なところを出すよりは、既存事業の発展構想のほうがいいでしょう。また小企業であれば、組織に従順にはまるようなアピールより、新規事業の立ち上げや斬新なサービスのアイデアに関する話のほうが、受けがいいでしょう。
    以下リンクで詳細な解説をしています。参考にしてください。
    会社規模によって、社員の業績評価・昇進の要件はこのように視点が異なる





    動画のクオリティはどこまで追求すればいい?

    会社側から動画スペックについて指定があれば漏れなく従います。動画完成後、指定の仕様から逸脱していないか確認します。
    逸脱があると「言われたことすらできない人」とのジャッジを下される恐れがあるので注意です。

    動画の技術的なクオリティは、どう考えるか

    動画エフェクトや編集上のプロフェッショナル性は、映像クリエイター系の職種でない限り、合否の基準には大きく影響しないと考えて問題ありません。
    採用担当者はあくまでその人を見たいのであって、動画コンテンツ自体を見るのが目的ではないためです。

    以下、筆者の主観的意見にとどまりますが…。
    フェード、字幕、別アングル撮り、ワイプ、アニメーション、クロマキー合成など、特殊効果全般は実装したからといって不合格要因にはならないでしょう。しかし、上手に編集しないと視覚的にはかえってノイズとなり、本人の話が埋もれてしまいます。また肝心の話の内容のほうが合格基準に達していない場合、映像だけキラキラしていてそのギャップがたいへん惨めです。十分な検討が必要だと思います。

    動画の作りで最低限の品質は確保

    快適に見ていただくために、最低限の品質上の配慮をおねがいします。
    これは、採用担当者に対する気遣いでもあります。

    画質
    映像の縦1080pかそれ以下が望ましいです。4k画質(縦2160p)ですと、データ容量が大きくなり過ぎたり、再生環境によって画質が荒れたりすることがあるためです。

    人物レイアウト
    基本的に人物は中心が望ましいです。人物を中心からずらした配置にするのは、画面に字幕を入れたり、人物以外に注目するものがあったりする場合です。右または左に余白を大きく設ける見せ方は、デザインを勉強していないと少し難しいので、ど真ん中が無難です。

    画面下、人物をどこで切るか
    胸付近で切るとどうなるでしょうか?

    アンバランスになったり、顔が大きく映って威圧感が出たりします。
    腰上付近で切るとバランスがいいですね。

    腰上付近で切る場合、関節の部位を避けてください。腰に限りません。腕、手首、首など、関節ピンポイントでは切らず、関節と関節の途中で切りましょう。関節の途中で切れていると、「その先にも体が続いている」という自然な構図が演出されます。

    腰上付近で切ることにして、頭の上に適度な余白を設けられていれば、人物レイアウトはほぼ決まります。

    背景
    クロマキー合成や背景エフェクトは使用しません。ありのままの自然な背景が望ましいですが、散らかった部屋は論外です。片付いていれば問題ありません。

    色合いには最低限の配慮をします。

    鮮やかな色や、多くの色使いによる背景はビジネスシーンではあまり好ましくありません。限定的です。
    自室で撮影すれば問題ないケースが多いです。一般の住宅の壁面は、白や、ベージュ系など色みを主張しない壁紙を使用しているためです。高明度な色、といいます。
    高明度色の背景であれば、肌や髪の色が際立ち、人物にスポットが当たります。

    小物
    あまり目にノイズとならない程度に映りこむ分には問題ありません。多少アクセントになるような鮮やかな色でも大丈夫です。画面全体に占める面積が大きくならないよう注意してください。

    まとめ

    いかがでしょうか。
    採用担当者が、その動画から何を知りたいと思っているのか、あらためて考えてみてくださいね。
    第一印象を自然ながらも上手に作り込み、話の中身を吟味し、そして最低限の動画の品質を確保しましょう。どれかが著しく劣っていると、ほかの2つが素晴らしくても全体として映えず、合否の切り分けになるかもしれません。

    おわりに

    念のためお伝えします。本記事内容は合格を保証するものではなく、一般的なことや参考事例として書いています。会社方針や地域、時代によっても変化します。
    本記事を参考程度に活用いただき、自身で納得のいく動画制作をお楽しみください。









  • ポイントが分かる|500字の小論文はこう書く

    ポイントが分かる|500字の小論文はこう書く

    会社での昇進試験、就職・転職の入社試験やエントリー時の課題で、小論文や短い論述が求められることは多いです。文章を書くことが得意な人と苦手な人がいるため、この得手不得手が合否の分かれ目になることもあるかもしれません。少しでも上手に書くことで、ぜひ合格を手繰り寄せてみましょう。

    いきなり上手に論文を書くことは難しいので、原稿用紙1枚程度(400字)の論文をまず上手に書くことを目指し、そこから幅を広げていきましょう。きりの良いところで、500字程度の小論文を書いてみます。
    まず論文例を紹介し、なぜこんな論文になったのか、解説します。そこには、単純に文章を上手に書いただけでなく、合格するためのさまざまな要素や仕組みを注ぎ込みます。できれば、ご自身で書いてみてから、答え合わせをすると効果的です。もちろん先に見ていただいても学習できます。

    前提として、書き手は「不動産業界」を目指しているとしています。論文は「だ・である」調で書くことが多いですが、ここでは丁寧さを出したいため、「です・ます」調で書いています。「だ・である」「です・ます」いずれかに統一していれば問題ありません。

    会社で仕事をする上での、あなたの夢は何ですか。 500字で論じなさい。
    (論文例はここから)

    私の夢は、自分のアイデアやその実現により人々の暮らしを豊かにし、ハウジングの新しい価値観を創造することです。不動産業界はさまざまな業界とパイプがありますので、一致団結でその夢はかなえられると考えています。
    私のこれまでの希望は、不動産仲介や売買でお客さまのニーズに合った物件を紹介し、喜んでいただくことでした。しかしそこには顧客満足を超える付加価値は発生しません。現代のIoTやAI、DXといった世の中のドラスティックな進化と、不動産業界は無縁ではいられません。たとえばAI機能を利用して、その地域や環境が今後どのように変化していくかを予想することで、そのハウジングがお客さまの未来のニーズに合致していくか検証できます。防犯や家事効率化といったIoT装備標準化の住宅推進などもあります。これらは、不動産業界だけでは成し遂げられません。ハウスメーカーやIT業界、案件によっては政府も巻き込んで進めるような一大事業となり得ます。大変な取り組みですが、次世代の便利で快適で安全な暮らしを実現させることを夢見ています。
    不動産業界も科学の進歩と融合して新しい付加価値を実現できます。私は人々の暮らしを変える中核を担いたいです。






    いかがでしょうか。500字の小論文はあっさりしていて、書いても読んでもあっという間に終わってしまいます。
    会社や採点者によって評点は異なりますが、おおむね小論文評価の観点は以下のようなものです。

    1.  文章構成
    2.  出題への的確な解答
    3.  取り上げたテーマ
    4.  熱意の表れ
    5.  分かりやすい日本語使い

    ひと項目ずつ解説します。

    文章構成

    「500字以内で記述せよ」とあれば、500字以内に収める必要がありますが、「500字程度で」という前提なら、数文字オーバーしても問題ないでしょう。
    論文の書き方については、以下の詳細記事があります。記事では、序論・本論・結論の構成で記述し、それらの比重を2:7:1で書くとバランスが良い、と書きました。

    今回の記述例では、その考え方を忠実に表現しています。以下をご覧ください。

    論文記述上で厳しく決まっているわけではありませんが、この比重で記述すると内容がまとまりやすいメリットがあります。読み手にも伝わりやすく、また書き手である自分自身にとっても、全体を俯瞰して内容をとらえやすいです。

    序論では、まず論文のテーマとポイントについて簡潔に述べます。

    本論では、序論で挙げたことの理由や具体例、今後の施策などの詳細を述べます。
    500字程度の小論文だと、本論部分ではあまり詳細な論理展開にまではいきません。

    結論では、まとめを簡潔に述べます。新しい論理展開は原則しません。

    出題への的確な解答

    「あなたの夢は何か」と質問されているので、序論・本論・結論の各パートでその「夢」や「大きな目標」に関わる記述が必要です。ここでは「仕事論」「世間のニーズ」「業界の目指すところ」といったテーマに寄ってしまわないよう注意が必要です。確実にテーマに沿った軸で記述します。結論部分でのまとめも、テーマに沿った締めくくりにしましょう。

    取り上げたテーマ

    ここでは「夢」がテーマです。単純であっさり実現しそうなこと、ありふれたことは「夢」ではありません。また実現不可能な、飛躍したテーマも良くありません。「夢」のテーマ選びを的確に行います。

    いまいちな例1|あっさり過ぎ
    • どんな問題にもくじけずに対処できる精神力を養う
    • その道のスペシャリストになり後輩の育成も行う
    • 誰とでも上手にコミュニケーションをとる
    • 数々の新製品を世に生み出す
    • 一人前の社員となり会社に貢献する
    いまいちな例2|飛躍し過ぎ
    • 私の力で会社を業界トップにする
    • 社長になる
    • 宇宙の謎を解明する
    • 自然災害の起こらない世界を作る
    • タイムマシンを作る

    [br num=”1″]
    世の中の時流を程よく取り込み、がんばれば実現できそうな内容が無難です。会社とは、破天荒な人材を好まず、組織の中で着実に成果を出してくれる人を好む傾向が強いです。テーマがあまりに飛躍していると、破天荒ぶりを感じ取られてしまう恐れがあります。
    その業界や会社が目指したいだろうな、と考えることを自分事に置き換えて書くのが効果的です。保守的過ぎず、革新的過ぎない、ちょうどいい程度を見極めましょう。

    熱意の表れ

    テーマが「夢」でも「革新性」でも、そこに熱意が表現されていないと、単に文章の羅列です。
    小論文は、学会の研究論文とは違います。昇進や採用などに向け、書き手にフォーカスすることがあるため、意気込みや誠実さ、モチベーションなどの人間性も読み取ります。

    論文例では、お客さまへの強い思い、業界に革新をもたらしたい意気込み、世の中の技術を取り込みたいチャレンジ精神などを盛り込んでいます。

    分かりやすい日本語使い

    漢字や文法など、正しい日本語使いは当然のこと、分かりやすい日本語で書くことが、論文では重要です。限られた文字数で相手に的確に内容を伝えることは、ビジネスの世界では常に求められます。

    「分かりやすい日本語」の目安
    • 一文多義にしない
    • 一文あたり60字以上にしない
    • 専門用語を多用しない
    • 冗長な文章にしない
    • 漢字ばかり使わない(※)

    しないほうがいい内容でまとめました。すべては難しいかもしれませんが気にしてみてください。

    ※「漢字ばかり使わない」の部分だけ補足します。
    接続詞、助動詞、接頭語、接尾語などにはあまり漢字の使用をおすすめしません。もちろん例外はありますが、今回の論文例では以下のようなひらがな使いを活用しています。

    ─例─
    例えば    → たとえば
    検証出来る  → 検証できる
    変化して行く → 変化していく
    喜んで頂く  → 喜んでいただく
    これ迄    → これまで

    「ありがとうございます」を「有難う御座います」と書くことは少ないと思います。このように漢字を多用すると紙面全体が真っ黒になり、洗練感がなくなります。当て字のように見えてしまうこともあります。ひらがなを活用して見栄えや読み心地を改善することを、校正の世界では「開く」と呼ぶこともあります。文を開くことは、読み手への配慮にもつながります。
    難しくはありませんが、普段から文章を書き慣れていないと、少しハードルが高いかもしれません。

    まとめ

    500字の小論文と、3,000字の論文。労力は異なりますが、記述する上での観点は大きく変わりません。
    実のある内容を構成立てて、誠実に、分かりやすく書けば、読み手にきっと伝わることでしょう。
    論文は、ある程度練習しないとスラスラとは書けませんので、練習も必要です。ほかの論文系記事もありますので、ぜひご参考にしてください。





  • 色彩検定1級1次試験に合格する勉強法

    色彩検定1級1次試験に合格する勉強法

    デザイン系・アパレル系などをはじめ、色の知識を必要とする職業には、色彩検定の資格が強い武器になります。色彩検定の中でも1級は「高い難易度」「マニアの領域」などと呼ばれますが、取得すれば「色彩のプロ」として公に認められ、活躍できます。

    この記事では、色彩検定1級1次試験に合格するための勉強法について解説します。
    まずは取得の背景について理解し、モチベーションを上げ、その後に勉強法に進んでください。




    色彩検定1級を取得するメリット

    色彩検定公式サイトや多くの資格サイトには、多くのメリットが書かれています。それら以外に、色彩検定1級取得のメリットは、大きく2つあります。

    少しの努力で「1級」資格を取得

    取得のメリットというより、取得を目指すメリットになります。
    人生には、就職・転職などでの履歴書や、プロフィール・自己紹介作成の際に、保有資格・特技を記載する機会があります。そこに「○○1級」と書けることはどれだけ素晴らしいことでしょうか。どんな資格でも「1級」というのは、その道のプロです。

    「1級」という1つの分野の道を極めたことは、努力の成果に値し、勤勉な姿勢を評価してもらえます。

    色彩検定の1級は、ほかの有名な検定である日商簿記やFP、語学系などの1級に比べて難易度は低く、数カ月の学習期間で合格できます。英検をはじめ語学系の1級は、数年かけても取得は困難です。「1級」という冠を数カ月で取得できることはお買い得で、目指す価値は大きいといえます。

    資料作成などスキル汎用性が高い

    色彩検定の資格自体は「これがあれば稼げる」「給料アップに直接つながる」とはいきません。しかし、色彩検定1級の汎用性は高いです。世の中のたいていのデスクワークには「資料作成」が付いてきます。「資料作成」において「色使い」は切っても切れない関係なので、資格保有により、その配色センスを期待されます。

    資料作成だけでなく、チラシ・ポスター・貼り紙・会場の装飾など、色彩スキルを発揮できる領域は多岐にわたります。もちろん、本来のターゲットであるデザイン系職種にも力を発揮できます。

    資料作成をはじめとしたビジネススキルにおいて、配色スキルがあること。これは就職・転職などのステップアップの際に、加点が期待されます。




    準備期間

    すでに2級や3級の知識があるかどうかによって、1級試験の準備期間は異なります。「2級取得済み」「3級取得済み」「いきなり1級受検」の3パターンです。合格できる目安の期間として書いていますが、もちろん早いにこしたことはありません。また、早すぎるのも燃え尽きてしまうので、注意です。

    2級取得済み|2カ月前から

    1次試験の2カ月前から取り組みます。試験日までおよそ9週間あります。

    「2級取得だが3級は取得していない」という場合でも3級の学習に注力する必要はありません。

    3級取得済み|3カ月前から

    1次試験の3カ月前から取り組みます。試験日までおよそ13週間あります。

    最初の3~4週間で2級のテキストを3~4周読み込み、2級の内容をだいたい把握しておきます。1級の過去問を解く必要はありません。

    2級の内容把握ができた時点で、1級1次試験まで残り9週間ほど残します。ここから1級の1次に向けて取り組みます。

    いきなり1級受検|3カ月前から

    上の「3級取得済み」の場合と同じく、1次試験の3カ月前から取り組みます。試験日までおよそ13週間あります。

    最初の3~4週間で2級のテキストを3~4周読み込みます。理解できないときに、3級公式テキストを参照する程度に利用します。3級公式テキストを端から端まで読む必要はありません。

    2級の内容をだいたい把握しておき、1級1次試験まで残り9週間ほど残した時点で、1級の1次に向けて取り組みます。

    1次試験勉強法

    原則、毎日学習しましょう。目安は、平日は1日2時間、休日は4時間以上確保します。
    とにかくテキストの内容をひとつでも多く暗記することが大切です。以下に、時系列に沿った学習内容の一例を挙げます。

    1~2週目|テキスト読み込み

    最初の2週間は、1級公式テキストをひたすら読みます。まず1周目は、理解できなくてもいいのでとにかく読み進めます。どんなことを学び、覚えるのか、雰囲気をつかむ程度で十分です。

    音読してもいいですが、さすがにボリュームが多いので、黙読で十分です。

    2周目は内容に入っていき、理解するよう努めながら読みます。1周目よりは少し時間がかかるかもしれません。どきどき2級・3級のテキストも参照しながら読み進めます。

    巻末の「参考資料」は読まなくても合格できます。合格してから余裕をもって読むことにします。

    3週目|過去問1回目

    前年度の過去問を解いてみます。まだ解けない問題もあるかもしれませんが、問題のボリューム感や難易度、設問への理解度を把握します。とにかく最後まで解答します。

    テキストをチラ見したり、答えを見ながら解答するタイプの人もたまにいると思います。最後に答えを見るか、見ながら解くか、それはどちらでもいいでしょう。
    真の実力把握や、弱点の見える化のためにも、本当は何も見ないで解いたほうがいいです。しかし、ギリギリまでがんばってからその瞬間に答えを見ると、インパクトがあり、頭に残りやすいこともあります。
    体裁よく学習することが目的ではありません。知識を最も習得できる、自分に合う手法を選びます。

    答え合わせをする時は、試験合格に向けた知識を多く習得できる大切な時間です。過去問の解答解説ページには、誤答肢にも解説があります。正解肢だけでなく誤答肢についてもテキストを参照し、関連の分野の知識も幅広く吸収しましょう。2級・3級のテキストもこの段階で多く活用して、周辺知識を固めます。

    答え合わせが全問終わる頃には、最初のほうの学習内容を忘れていることが多いですので、2周以上やることをおすすめします。

    4~5週目|テキスト読み込み

    3周目に過去問を解いたことで、覚えるべき事項や学習のポイントがつかめています。ここであらためてテキストを読みます。今度は今までより詳細に、本質的な内容理解を伴った読み方です。
    たとえば色彩文化であれば、人名・年代・理論名とその内容、色彩理論であれば、模式図とその仕組みを覚えながら読み進める、といった具合いです。テキストには、重要箇所が太字になっているので暗記必須です。

    6週目|過去問2回目

    まだ手を付けていないほうの過去問を解きます。過去問1回目の時と同じく、自分に合った手法でOKです。1回目の過去問のときと類似した問題であれば、答え合わせ時にもう1つの過去問のほうも確認します。これによって出題のバリエーションも把握できます。

    1回目の時よりもスムーズに解答できることでしょう。1次試験は基本的に知識問題なので、効率的にテキストを読めていれば、この2回目では合格点である7割を上回っているかもしれません。

    7週目~|テキスト・過去問再確認

    過去問を2年分こなせば、知識の習得だけでなく、出題傾向や自分の得手不得手など、さまざまなことが明確になります。

    あとはテキストを徹底的に読み込むだけです。問題集を新たに購入、ということは考えません。出題範囲を越えた問題に対応する時間が無駄で混乱を招くからです。本試験では、ほとんどの問題がテキストからの出題です。応用力を養うとか、真の力を付ける必要はありません。貪欲にテキストを何回も読み、内容を理解することに全力を注ぎましょう。どきどき過去問を再確認して、忘れかけていた知識やポイント、設問傾向などを思い出します。

    試験まで残り1~2週間となったら、暇さえあればテキストを読みます。テキストを見なくても人名・技法・年代・理論・色・模式図・表・フローなどを口頭で唱えられるように、徹底的に読み込み、試験に備えます。





    おわりに

    色彩検定1級は、2級・3級を取得していなくても、効率的に勉強することで十分合格できます。ポイントは、毎日少しでもいいのでテキストを読んだり慣用色名を覚えたり、頭の中を色彩の事柄で埋めていくことです。
    筆者は実は、試験対策2カ月間の中で別の資格試験の提出物があったため、2週間ほど色彩学習から離れています。3級・2級を取得済みで、効率的に取り組めれば、1次試験の1カ月ちょっと前からの対策開始でも合格できると思っています。でも早いに越したことはありませんので、開始時期と1日の学習量を調整しながら進めてみてください。
    2次試験まであって大変ですが、ぜひ合格して、1級色彩コーディネーター資格証を手にしましょう。本記事が試験対策の役に立てば幸いです。










  • 会社規模によって、社員の業績評価・昇進の要件はこのように視点が異なる

    会社規模によって、社員の業績評価・昇進の要件はこのように視点が異なる

    会社には、社員の業績を評価する仕組みや基準が存在します。それはどの会社にもあるでしょう。
    会社によっては、上司など評価者の好き嫌いで決まってしまうケースもあるかもしれません。

    昇進したいと思ったら、自分の会社がどのような評価基準をもっているか確認するのはもちろん、実際の傾向もとらえる必要があります。

    筆者はたくさんの会社を経験しましたが、明文化されている評価基準や上司の好き嫌い以外に、会社の規模による評価傾向の違いも感じました。会社の規模によってどのように異なるのか、分析してみたいと思います。

    まず結論から。

    ◎小さな会社
    めざましい実績をあげて売り上げに貢献したり、これまで会社にはない成果物を創出して新しい領域を開拓、といった個人ベースの活躍が評価されやすい。

    ◎大きな会社
    周りの人や部門を巻き込み活発に物事を進め、チームが定常業務を円滑に進めるよう調整、他部門に自身の名前が広まるような、組織運営型の人が評価されやすい。





    複数社経験がある人もない人も、自分の会社の規模によって、上記のような傾向は感じませんか?
    会社規模にかかわらず、上記の両方できるのに越したことはありませんが、なかなかそんなスーパーマンにはなれません。
    「小さな会社」とは、社員数が数百人くらいまでの規模、「大きな会社」は数千人以上の規模と考えます。

    なぜこのような傾向が見られるのでしょうか。
    これから会社で働く、という人はこれからどのようにして振る舞えば昇進できるか、就活中の人は自分の適性として大小どちらの会社が自分に合うか、参考になるかもしれません。

    小さな会社の場合

    会社の規模が小さいと、以下のような傾向が考えられます。

    • 事業規模そのものが小さく不安定
    • 複数の事業が確立しておらず、事業間で支え合えない
    • ちょっとしたことで売り上げが下がると、会社の存続が危うくなる

    会社がこのような状態で、会社はどうなりたいかというと、もっと成長するために事業の規模拡大や商品・サービスのラインナップ強化、存続と発展のために必要となる十分な売り上げです。

    たとえば、年商20億円・社員100人程度の小規模な会社で、上記のような意向があった場合、自分は昇進するために、次のどちらを選択するでしょうか?
    「自身が所属するチームの風土を盛り上げ、チーム員と上司・他部門とのパイプ役となり健全で円滑な業務運営に導く」
    「従来にはないサービスを開拓し、新しい部門を設立し事業化、年間で5千万円を稼ぎ出す事業へ成長させる」
    当然、後者になります。

    規模が小さい会社では存続・発展のため、たとえスケールが小さくてもラインナップ強化や、短期的でも金になる実績が会社を支えます。
    年商20億円・社員100人の会社の社員の1人がずば抜けた能力による個人プレーで年間1億円稼いだとします。この実績は、年商の5%にあたる金額を1人で稼いだことになり、会社の存続・発展に大きく寄与しています。会社は、発展に寄与したこの社員を高く評価するでしょう。

    チームレベルの小さな単位で考えてみます。たとえば、業務遂行を大幅に効率化する手法を開発し、これまでにない業務フローが全社に確立。このような光る個人プレーも評価の対象になるでしょう。これがリードタイム短縮につながり、売り上げアップとなり、さらなる評価が期待されます。

    規模の小さい会社では、以下のような実績が評価の対象になりそうです。

    • 商品やサービスのラインナップ強化
    • 新規事業立ち上げにつながる新領域の開拓
    • 年商を支える程度の売り上げ実績
    • まぐれ当たりであっても高い売り上げ
    • 業務手法の開発や業務領域の拡大
    • その他めざましい個人プレーでの活躍





    大きな会社の場合

    規模が大きな会社は、社会的に知名度や信頼が高い場合が一般的。社員には、会社の地位や名誉を汚すことがないよう、規律を重んじる教育を施します。多くの社員が組織人としてモラルある行動をし、チームワークをとり調和して仕事を進めることが求められます。
    センセーショナルな成果物・ドラスティックな変化などがいち社員に求められることは稀です。

    大きな会社、たとえば年商1500億円・社員5000人の会社で考えます。
    1人の社員の個人プレーでのめざましい活躍で1億円稼いだとします。それはそれで凄いことですが、会社の年商の0.1%にも満たず、屋台骨を支えるほどの稼ぎではありません。
    ずば抜けた発想力で商品やサービスを新規開発して事業化したとしても、年商1500億円の中でほかの事業と肩を並べるには少なくとも百億円規模の事業なくては成りたちません。ひと息に百億円は現実不可能で、1人の社員の活躍にも限界があります。
    会社がある程度の規模まで成長すると、新しい事業を始める場合、既存の事業から分割・子会社吸収・M&Aなどで、一気に年商の○割という規模の事業を作るほうが効率的なのです。

    このように、大きな会社では、いち社員はめざましく発想・開発したり、個人レベルでの大きな数字を出したりするのは、会社規模で見ると評価の対象にはなりにくいといえます。会社発展のための直接的な運営は、役員クラスの人たちが舵取りをします。
    社員1人ひとりは、この大規模な会社の安定的な運営を部や課単位で危なげなく推進することが求められます。
    規模の大きな会社では、社内の多くの部門が互いに関連し合います。1つの部門が不安定になると、会社全体に影響します。部門1つひとつが着実に運営されなければなりません。部門の運営には、多くのスタッフを束ねて同じ方向を向かせる必要があります。リーダーシップを発揮し、部内外の社員に影響を与える、つまり名前を売る、ということも評価を得るための要件になるでしょう。
    組織が大きいと、なかなか名前が広く通ることは難しいのが現状。たとえばプログラミングスキルを生かして新しい業務プロセスを開発し、生産性向上に寄与した社員が、昇進・昇格の大台に乗ったとします。その時に評価部隊の1人が「俺はこんな奴知らない」と言ったら、昇進レースから脱落することがあります。名前を広く売るには、研究・開発・オペレーションなどの個人プレーに没頭するのではなく、他部門と多く接触したり、人に感謝されたり、活発に周囲の人たちを盛り上げたりしたほうが、会社の存続に役立っているとして、評価の対象になるでしょう。

    たとえ専門スキルや発想力をもち合わせていなくても、元気で人の役に立ち、人をコントロールすることに長けていれば、昇進の可能性がある、ということです。
    むしろ研究や開発に没頭していると、「あの人は職人だから」「コミュ障」などと揶揄されて窓際に追い込まれるリスクがあるくらいです。

    規模の大きな会社では、以下が評価の対象になりそうです。

    • チームの日常業務を安定して回す調整力
    • 部内外で多くの人と関わり、名前を売る
    • 人の役に立つようなサポート
    • 組織の風土を盛り上げて活発にする動き
    • 規律・モラル・業務手順などを遵守した統制
    • その他、会社や組織運営に寄与する活動





    まとめ

    以上をまとめると、次のようにまとめられます。
    規模の小さな会社では、光る個人プレーや成果物がそのまま評価につながるケースがある。
    規模の大きな会社では、組織運営や仕事全体を回すことが評価される傾向がある。

    あくまで傾向であり筆者のコラムですが、あながち間違ってはいないと思います。
    また、個人プレー要件・組織運営要件、それぞれ会社の規模の大小にかかわらず大切な要素であることは、いうまでもありません。
    個人の実績を高く評価する大企業もあるでしょうし、組織運営を重視する小規模企業もあるでしょう。

    本記事により、会社や評価者がどのような観点で社員を見ているかを知るだけでも、少しは道が開けるかもしれません。









  • 昇格試験論文例「職場における私の役割と課題」

    昇格試験論文例「職場における私の役割と課題」

    会社の昇格・昇進論文で典型的なテーマである、
    職場における私の役割と課題
    の類いのお題。
    「会社の利益」「顧客満足」などの特定の主題ではなく、リーダークラスになる上での当事者意識や総合力が試される難しいお題ともいえます。

    本ページでは、このお題に必要な記述のための考え方について解説し、論文例を1つ紹介します。

    会社の採用試験、昇進試験などの対策に関する記事一覧はこちら

    出題側がこちらに求めていること

    論文を書く前にまず前提を確認します。
    この論文は、昇格・昇進試験ですから「この人は課長やリーダークラスの適性があるか」を見極める目的があります。これが最大の目的と思っていいでしょう。

    リーダークラスになる上で把握しなくてはならないことは、会社によっても異なるとは思いますが、主に以下のようなことです。

    • 組織運営に強く関わる
    • 部門や会社の利益向上を図る
    • 業務を回し効率を上げる(生産性向上)
    • 部下を育成する(人材育成)
    • 新しい価値観で物事を取り入れる
    • 会社や部門方針に忠実に沿う

    リーダークラスに昇格するには、これらの観点をいくつか押さえた論文にする必要があります。出題側は、論文の中にこれらに関する記述が、解答者自身の言葉で書かれているかをチェックします。「自身の言葉」というのは、どこかからもってきた定型文ではなく、自分のシチュエーションのベースで書かれているか、ということです。

    ほかにも、以下のようなビジネススキルがあるかチェックする会社も多いでしょう。

    • 限られた時間で自分の考えを表現できるか
    • 文章の論理的な構成は的確か
    • 主題に対してとしてふさわしい記述か
    • そもそも文章力・語彙力があるか

    論文に関する基本的なことや全般的な解説は、以下の記事をご参照ください。
    会社の論文試験に合格する! 昇進試験、採用試験での論文の書き方のコツ、対策を解説

    自身の会社が昇進に対して、どのような要件を求めているか、会社の規模によって異なるケースもあるので、以下のコラム記事も参考にしてみてください。あくまで目安です。
    会社規模によって、社員の業績評価・昇進の要件はこのように視点が異なる

    役割と課題の考え方

    お題は「職場における私の役割と課題」ですから「役割」と「課題」がテーマになっています。しかし「職場における」というまくら言葉があるので「役割」と「課題」の一般論を展開した論文ですと、減点になりますので注意してください。職場での自分を記述します。お題を一字一句読んで、何を質問されているか確認しましょう。

    「役割」と「課題」は明確に切り分けるのが難しく、とらえ方が重複する部分もあります。
    STARメソッド、という有名な考え方があります。
    状況 Situation
    課題 Task
    実行 Action
    結果 Result
    「○○な状況で、課題は△△であった。そのために□□を実行したことで、✕✕の結果をもたらした」
    という論理的な表現になります。
    ここで「課題」は「状況」から生まれたミッションや問題点などが含まれます。このように、会社で明確なとらえ方が推奨されている場合には「課題」を限定的に書きます。
    しかし「役割と課題」が主題だと考えると、「課題」の部分で問題提起をして終わってしまい、論文として成り立ちにくくなります。
    したがって、ここでは「課題」の部分に「実行」に関わる要素を含ませることで「課題」に自分の意志を含ませることができ、論文として中身が伴ってきます。
    「実績」を書かせる論文であれば「結果」までかけますが、「今後の取組み」についてであれば「このような結果をもたらすと考える」という記述になります。

    自身の会社で、書き方のトレンドがあるはずです。論文練習の前に、最低限の前提条件は確認しておきましょう。
    この記事での「私の役割」は、組織内での立ち位置や、推進するミッションのようにとらえています。
    「私の課題」は「役割」から落とした具体的なアクション、つまり実行する内容で記述します。「私の課題」といっても、「私」にばかりフォーカスするのではなく、「課」や「組織」にフォーカスした上での「私がやること、考えること」で記述したほうが無難です。それも事前のリサーチが必要です。

    では、あくまで一例ですが、生産性向上や人材育成などの上位概念から、自分の職場での役割と課題に落としていきます。

    人材育成

    職場における人材育成です。課長やリーダーポジションになるためには「後輩の指導」より1つ上の観点でとらえます。つまり「課・チーム全体の育成」というとらえ方であれば、リーダーポジションとしての適性を感じさせることができます。

    私の役割

    • 課として任務を遂行する上で必要なスキルや専門領域を明確に把握し、課の中心ポジションとして、課員に不足している部分を補うよう推進する
    • 課としての今後の可能性を予測し、数年先を視野に入れた人材育成を推進する

    私の課題

    • 課員のモチベーションは人によって異なるため、全員に一律の教育でスキルアップを期待するのは難しく、各々の適性を考慮した育成の検討が必要
    • 自身の課ができること、できないこと、できたら実現することなどを詳細に把握できていないため、課の将来を見通した上での育成プランが必要
    生産性向上

    人材育成からつながるストーリー、人材育成をベースとした生産性向上だと書きやすくなります。人材育成とは切り離して、工夫だけで実現できるならそれでもOKです。

    私の役割

    • 課業務の円滑な遂行に常に目を配り、無駄や改善点がないかを見極め、業務効率やアウトプット品質の向上・改善を推進する
    • 課員の現スキルやインフラをもとに、将来的な課機能の付加価値向上を推進する

    私の課題

    • 現在の遂行上の問題について課員へヒアリングを行い、改善の余地を確認し、できる施策と実現性を明確化・実行する
    • 他部門から期待されている事や時流に乗るべき課業務、それに対する現状との差異を明確にして補填し、リソースを維持したまま課機能の強化を図る
    組織の活性化

    人材育成や生産性向上の実現には、課の全員が同じ目標に向かって足並みをそろえる必要があります。モラルやモチベーションを維持・向上、課を盛り上げる意気込みを表現します。

    私の役割

    • 各課員に課の目標を共有して意識させ、一丸となった風土を醸成する
    • 課が組織としてもつべき風土、あるべき姿を明確にして、それを維持する仕組み作りを推進する

    私の課題

    • 課員各々が自分の仕事だけを淡々と遂行する風潮があり、横のつながりが希薄。忖度なしで意見交換を行う機会を設けるなどで、課内の風通しを改善する
    • 一時的な風土盛り上げではなく、あるべき姿を課員の負荷なく維持できるようにしたい。そのために最適な仕組みを作り、課員みんな守り抜く風土を醸成する

    一例でした。自身のミッションに当てはめてみてください。




    書き始める前に要約メモを完成させる

    論文はいきなり書き始めるのではなく、どのような流れで書くか概略をメモ書きして作戦を練り、そこから詳細内容を膨らませていくやり方が望ましいです。
    今回は「人材育成」「生産性向上」「組織の活性化」をテーマに挙げて要約メモを作成します。

    前書き

    • 職場での現在の自分、業務の概略
    • 自分のありたい姿の概略
    • 自分の役割と課題の概略

    人材育成
    役割

    • 課の中心ポジションとして課員のスキルアップと、先を視野に入れた人材育成を推進

    課題

    • 各々の適性を考慮した育成計画の検討
    • 人を動かし、課の将来を見通した育成プランの検討

    生産性向上
    役割

    • 業務効率やアウトプット品質の向上・改善を推進と、将来的な課機能の付加価値向上を推進

    課題

    • 課員へヒアリング、改善の余地を確認、施策と実現性の明確化・実行
    • リソースを維持したまま課機能強化をする

    組織の活性化
    役割

    • 課の目標を共有した、一丸となった風土の醸成

    課題

    • 横のつながり希薄⇒意見交換会開催、課内の風通し改善
    • あるべき姿を維持する仕組みを作り、みんなで守る風土

    結論

    • 私の考える役割と課題は3つのカテゴリー
    • 今後、実務だけでなく、課全体・人・取り巻く環境を見て、未来を見て仕事をする

    ここまで書ければ、あとは実情に即した具体策や自分の気持ちなどの肉付けで論文ができます。文字数は多くなりそうなら、たとえば「生産性向上」のパートは不採用にしたり、各役割・課題の項目を1つずつにしたりして、文字数を減らす工夫をします。
    まんべんなく広い視点で書くほうがおすすめです。「生産性向上」まるごと削ると、その役割・課題は感じていないことになりますのでバランスよく書きましょう。「1つのことを掘り下げて論文じることがよい」とされている会社であれば、1つに絞って問題ありません。いずれにしても人材育成・生産性向上・組織の活性化をはじめ、課長としてもつべき視点のカテゴリーを網羅的に書けるようにしておきます。「人材育成」を削って、「生産性向上」の中に「部下に任せて自主性をもたせる」といった「人材育成」の要素を入れる、といったこともできます。

    論文を書いていくと、メモ書きと少しずつ内容ずれていくことがあるかもしれません。メモ書きはあくまで全体の骨格なので、おおまかな流れができていれば、厳密にこだわる必要はないと思います。




    あえて触れない題材

    今回取り上げない記述事項をお話ししておきます。
    課長として最も重要なことは「組織を円滑に回す」ことだと筆者は考えます。しかし、あたりまえなの事なので、論文の題材として取り上げて論じても、あまり映えません。ありふれた記述だと「用意してきた定型文」となり高得点を狙うのが難しくなります。
    あと、現在思考・未来思考の考え方です。まず目の前にある課題を解決する現在思考。中長期的な視点での取り組みである未来思考。この観点で掘り下げると論文が長くなったり、ボリューム調整でその他の各論の内容が薄くなったりします。また階層構造が複雑化して読みにくくなります。
    ご検討ください。

    論文記述例

    要約メモをもとに論文を実際に書きます。先にも述べましたが、「実績」記述パターンと「今後の取組み」記述パターンがあります。ここでの論文例は、後者の「今後の取組み」として書きます。論文試験で「実績」の記述を求められているなら、「~のような結果となった」「~をもたらした」というテイストで書けばいいと思います。

    たいてい会社の論文試験では業務の細かいことは書かないほうがいいです。ただしある程度の前提条件は必要なので自分の所属部門を設定します。
    自分のポジション|営業担当者
    テーマ「職場における私の役割と課題」

    以下の比率を心掛けて書いてみましょう。
    序論 2
    本論 7
    結論 1

    (ここから論文)

    法人営業担当として8年間、販売促進や営業企画をはじめとする営業全般の業務に従事してきた。ここ1年は、顧客が抱える問題の早期解決を進めるソリューション推進が主なミッションとなっている。

    私はソリューション推進チームのリーダーとして、3人のメンバーを指揮して日々顧客対応にあたっている。リーダーとしてチーム業務を円滑に回す、という多忙な中であっても顧客からは一定の評価を頂いている。自分がこれまでに培ってきた経験や知識を体系的にまとめ、そのノウハウをメンバーに周知した結果として顧客満足が得られたと考えている。
    現状ではまだチームとしての課題もあり、今後はリーダーとしてさらに大きな成果を上げる必要があることも認識している。

    これまで自らの実績も上げ、リーダーとして小さなチームの運営を回してきた経験をもとに、今後は大きなプロジェクトや課といったより大きな組織を率いていくことを目標とする。

    現在のチームの改善や今後の大人数の組織マネジメントを視野に、私はおおまかに以下のことを念頭に置いて業務に取り組んでいる。

    1. 人材育成
      メンバー個々のスキル向上とチーム全体の力量向上
    2. 生産性向上
      全員参加のもと、アウトプットの質と量を改善
    3. 組織の活性化
      風通しの良い、働きやすい職場作り

    これらに対する役割・課題とは、以下のような意味でとらえる。
    役割 : 担うべき立場や推進事項
    課題 : 未解決事項と具体的任務

    1. 人材育成
    ◎私が考える役割
    課の人材育成推進の中心ポジションとして、任務遂行に必要なスキルや専門領域を明確に把握し、課員の適切な力量管理、組織の発展を推進する。
    ◎私が考える課題
    課題は、各々の適性を考慮した人材育成の推進である。
    現在の課では各担当者の力量がばらばらで、スキルの高い担当者に業務が集中、その担当者不在時に誰も案件を理解できない、といった状況が多発している。そのため、スキルが不足している課員に対し苦手領域を補い、個人のスキルアップと全体の底上げを行うことが必要と考えている。まず課業務のカテゴリーごとの全員の力量管理を確立する。その上で各担当者の業務領域の中でのスキル不足に対し、本人の意向も踏まえ具体的な教育プログラムを策定する。実際の教育は、そのスキル領域に長けている担当者からの個別教育やOJTを想定している。これにより教育側の担当者にも、知識の確認や教育者としてのスキルアップが見込める。私は関連の諸部門と良好な関係を築けているため、当該部門に知見のある人がいれば、依頼も検討する。
    さまざまな手法で個々の力が向上することにより、組織としての全体の力量が上がり、発展へとつながる。
    本人のモチベーションや実力的な配慮も必要である。あまりなびかない担当者には、小さなミッションを与えたり、本人からの希望を聞いて可能な限り応じたりしながら、徐々に育成することを考えている。人材育成は人に対して実施するものであるため、手法を間違えるとモチベーションダウンや不満につながる恐れがある。ゆくゆくは異動願いや退職願いへとつながりかねない。自身が行う人材育成も、それを部下に委ねる場合も、組織の健全な存続のためには慎重に進めることが重要である。

    2. 生産性向上
    ◎私が考える役割
    業務効率やアウトプット品質の改善・向上、将来的な課機能の付加価値向上を推進することである。
    ◎私が考える課題
    課題は、課員へのヒアリングをもとにした改善余地の確認と、数年先を見越した最新トレンド導入である。
    まず、営業現場やオフィスワーク全般の課題を課の各チームリーダーにより抽出する。その中から、改善可能な案件に対して各チームまたは課全体でブレーンストーミングや協議を行ってもらい、改善の方向性や目標を示してもらう。私は世の中のオフィスワークトレンドや最新インフラ、IT機器などを調査し、各チームの観点の漏れや検討不足などを指摘する。自らの参加も心掛ける。
    実際当課では、顧客とのトラブルや非効率な事務処理による、類似問題の再発などが顕在化している。課題の解決・改善のためには、業務標準書の見直しや徹底、トラブル&解決事例集などの新たな構築、近未来的な手法による業務遂行のトライアル、などが必要と感じている。
    標準書や事例集はチームリーダークラスに一任し、自らは適宜修正指示や助言を行う。基盤が整い、ミスが減少すれば、たくさんの営業案件をさばけるようになり、アウトプット量増加が見込める。
    近未来的な手法の開拓では、IT部門や外部と密にコンタクトを取り、リーダークラスと連携した遂行を考えている。営業手法や新規市場開拓、ソリューションに現在検討中の最新のIT機器・手法の導入を実現することで、リソースを維持したままアウトプットの質が向上する。また課機能をさらに強化する具体策も策定でき、数年後の課としての存続・発展を確たるものにしていく。
    アウトプット品質の向上のためには、課題の抽出による問題解決・無駄を省き基盤固め・新案による更なる進歩、という手順で着実に実行に移したいと考えている。

    3. 組織の活性化
    ◎私が考える役割
    課の目標を共有した、一丸となった風土の醸成することである。
    ◎私が考える課題
    課題は、方針の明確化と、横のつながりがある働きやすい職場作りである。
    当課は、担当者個人がそれぞれに動く傾向が強く、横のつながりがやや希薄になっている。横の会話が少ないと、お互いの見識の理解がそがれるだけでなく、必要な情報共有も不足してしまい組織風土が低下する。組織風土醸成のため、意見交換会や営業実績発表会など、課内の風通し改善を行うことを検討中である。
    現在、課のミッションステートメントはあるものの形骸化している傾向があり、刷新が必要と感じている。ミッションは毎年更新されるが、似たような文言が並び、課員一人ひとりにその根拠やエッセンスが浸透しているとは言い難い。ソリューション営業のユーザー視点を盛り込んだ重点項目を新たに策定し、課員にその本質的な理解を促す。各自の業務が課のミッションに直結していること、全員が同じ目標に向かっていることを共有してもらう。そのためのあるべき姿を可視化し、横のつながりを仕組みとして構築する。
    組織風土醸成には、基本として仕組みを作り、そこに向かって全員が軸足をそろえることができるよう定期的な会合の場を設ける。それが一堂に会さず、たとえオンラインであっても、お互い活発にコミュニケーションを図れる機会を常に提供したい。課の長として、課員の業務に支障をきたす状況を改善し、「働きやすい職場」として組織風土を醸成していく。

    私の考える、職場における役割と課題は、人材育成・生産性向上・組織の活性化、の3つのカテゴリーである。これらの中には、人に寄り添う、人に任せる、人を動かす、といった要素が基盤となっている。1つの課の長として、人と一緒に日々の仕事をすること、人が組織を形成することを常に意識し、円滑な組織運営を目指す。人の要素のほかにも、問題解決や仕組み作りなどの業務処理にも、部下に目配りをしていく。最新の知見の活用や世の中の標準を取り入れる、といった時流に乗った動きを取り入れて切れ味の良い遂行を心がけたい。
    今後は、自らの定常業務だけでなく、課全体・人・取り巻く環境を見て、未来を見て課運営に携わりたい。

    (論文終了)

    序論   約530字
    本論 約2160字
    結論   約290字

    おおよそ 2:7:1、バランスのいい比率で書けました。




    まとめ

    「職場における役割と課題」という論述では、リーダーに求められていることを把握し、自分の言葉で書くことが重要です。自分のリーダーとしての軸を定め、会社の文化として求められる人材育成・新規市場開拓といったテーマに沿って、大儀と現状把握、具体的方針などを的確に記述することです。
    文章力そのものを見られる場合もあるので、伝わりやすく、全体のバランスも考えます。
    昇進・昇格論文は、会社によって求められる論述のスタイルが異なることが多いので、事前のリサーチを怠らないことです。本記事での論文例はあくまで一例ですので参考として読んでいただき、自身の会社のスタイルにうまくはまるようにしてみてください。







  • 色彩検定|慣用色名のPCCS対応表(参考資料)

    色彩検定|慣用色名のPCCS対応表(参考資料)

    色彩検定1級で学習する、慣用色名とPCCSの対応表です。2級・3級の慣用色名をだいたい網羅しています。

    慣用色名の色味によってはPCCSに1対1で対応しない色があります。本サイト以外で見られる対応表や専門家の判定とは異なる部分があるかもしれませんので、参考としてご利用ください。

    かっこ()書きは、特に判定が難しかった色です。かっこのなしのほうが有力な分類になります。




    vivid|ビビッドトーン

    bright|ブライトトーン

    deep|ディープトーン





    light|ライトトーン

    soft|ソフトトーン


    dull|ダルトーン

    dark|ダークトーン





    pale|ペールトーン

    light grayish|ライトグレイッシュ

    grayish|グレイッシュ

    dark grayish|ダークグレイッシュ

    black-white|無彩色











  • 上手な資料デザインに必要なこと、押さえるポイントは3つ

    上手な資料デザインに必要なこと、押さえるポイントは3つ

    仕事で資料を作成するとき、うまく作れないことはないでしょうか。
    この記事では、どうすれば上手に資料をデザインできるか、具体的な資料例を用いて解説します。




    資料を上手にデザインするポイントは3つ

    いい資料とはどういうものか考えると、見た目がきれいに整っいて、統一感のある配色で、何を伝えたいかひと目で分かるシンプルな構成、といったところです。これより、上手に資料を作るポイントは、以下の3つとなります。

    • レイアウト
    • 情報量

    文字の大きさや、貼り付け画像、文章など、さまざまな要素の検討は、上のポイント3つのいずれかに集約されます。
    レイアウト・情報量・色、それぞれのパートを上手に駆使することは、それなりに大変ではあります。しかし、これらがポイントであることを知っていて、少しでも改善するだけで、資料は良くなっていきます。

    レイアウト

    レイアウトをきれいに表現するにはいくつかのルールがあります。

    左右や上下などの整列
    関連する情報を近接
    重要度に差をつける対比

    これら3つをうまくコントロールできると、きれいで心地よく、情報の分類が分かりやすく、重要ポイントが見える資料になります。
    「反復」という考え方もあり、資料全ページ通してデザインルールを統一する、というものです。しかしここでは、1ページのデザインにフォーカスします。
    基本は、整列・近接・対比ですので、これらを1つずつ見ていきます。

    整列

    資料を構成する要素はたくさんあります。文章、画像、図形など。これらの位置を徹底的にそろえます。左端や中央、右端もそろえる、など、そろえ方のルールだけは決めておきます。
    以下は、そろえ方の一例です。左端をそろえ、右半分のグループの左端や、各グループの右端もきれいきにそろえています。

    たとえ各グループの文章量や画像の大きさがバラバラでも、整列するだけで統一感や清潔感が生まれます。

    近接

    図形でも文字でも、関連する要素はすべて近づけてグループ化します。関連の薄い要素や他のグループとは、明確な余白を設けます。

    これにより情報グループが見えやすくなり、資料を見る人の理解が深まります。

    対比

    要素にコントラストを設けます。重要な要素とそうでない要素の違いをはっきりさせることです。たとえば重要な要素は大きく太く、色を付けて、一等地に配置し、参考情報は小さく…といった具合いです。

    資料を見た人は、瞬間的にどれが重要ポイントか分かります。作り手が伝えたいことを確実に伝えることができます。




    情報量

    文章や図形、画像などの個数や、各要素のボリュームがコンパクトにまとめられていると、レイアウトしやすくなり、きれいに作ることができます。
    つまり、情報量がしっかり集約されていることで、情報グループ間の余白を十分に確保できたり、要素を整列させたりしやすい、ということです。
    レイアウトしやすい、といった作成者側のメリットのほか、資料を見る人が情報収集にかける負荷が格段に少なくなります。伝えたいことが確実に伝わる資料になります。

    情報量モリモリの資料の例です。

    何を伝えたいのかさっぱり分かりません。情報量を削減してポイントを絞ると、以下のようになります。

    仕事での資料では、見る人・読む人に受け取ってもらいたい重要ポイントがあるはずです。そこにごちゃごちゃと関連情報を盛り込み過ぎると、重要ポイントがぼやけて、何がいいたいのかよく分からない仕上がりになります。
    どうしても資料に含めたいときは、参考資料として巻末に設けるか、外部サイトへのリンク、サイト名やURLの記載など、情報の出し方に緩急をつけます。




    色のことだけで1つの確立した専門分野です。色の技術をマスターするのは難しいですが、資料作成に必要なテクニックをいくつか習得するだけでもだいぶ違います。

    資料作成に役立つ基本的なテクニックは、以下になります。

    使用する色数を限定する
    適切なイメージカラーを選択する
    文章は読みやすい明るさで表現する

    色数の限定

    目立たせたいと思って、ついついたくさんの色を使ってしまうことがあるかもしれません。しかし、たくさんの色を使ってしまうと、色情報が多すぎて、どの色が何を意味しているか分からなくなります。

    多色にて資料を作る確たる事情がなければ、徹底的に色数を減らします。基本色は黒、強調させる箇所だけ色を付ける、といった具合いにルールを決めてしまえば、「ここは何の色で目立たせたようか…」という悩みもなくなります。資料を作る時間も大幅に短縮できます。

    たくさん色を使った例です。

    使用する色を、文章の黒と、強調部分の青に絞ると以下のようになります。

    この例ではレイアウトも変えていますが、色を限定することで、色に惑わされることがなく、また統一感が生まれ、肝心の文字情報に集中できます。

    イメージカラー

    色にはイメージカラーがあります。資料の内容に合う色を選ぶと、自然な見た目になります。

    標準的な色が持つイメージの例を挙げます。
    あか  |警戒、注意、情熱
    きいろ |注意、幼稚、元気
    みどり |若さ、未熟、自然
    あお  |まじめ、冷静、孤独
    むらさき|高貴、上品、不安定

    そのコンテンツに合う色を正しくとらえることが大切で、さみしいからカラフル、ということにはしません。また、「強調したいから赤」という考えも、必ずしも効果的とはいえません。上に挙げた5色以外にもたくさんの色がありますし、複数の色を選択した場合、もとの色とは異なる印象を与えます。

    いくつかの色を使って、そのコンテンツが持つ印象を表現してみます。無意味にカラフルに作ってしまった資料です。

    色から何のイメージも伝わってきません。たくさんの色を使っている、ということも問題です。ワインがテーマであればその色をイメージします。たとえばブドウの実と葉っぱ、枝などをイメージする、と決めたらその色をバランスよく使います。

    答は1つではありませんが、決めたイメージカラーは、資料全体を通して統一して使います。

    読みやすい明るさ

    色数を限定したり、イメージカラーを付けたり、いろいろ対応しても、見栄えがにぎやか過ぎて見にくい場合があります。
    これは、色の明るさ(明度)の調整が不十分なことにより起こります。
    イメージカラーを青に設定しても、その青がギラギラした標準色の青であれば、「イメージを感じる」より「まぶしくて見えない」という印象の方が強くなります。

    色数は限定していますが、鮮やかな色で構成した例です。赤も緑もギラギラして見にくく、文字の色も墨で塗ったような黒で読む気になれません。

    赤も緑も黒も、ちょうどいい明るさに修正することで、下のように心地のいい見栄えになります。

    まっ赤な色は、類似の色相である茶色を穏やかな明るさにしています。ある程度の長さの文章を読む場合、背景白で真っ黒が文字は避けたほうが無難です。

    色数やイメージカラー設定だけでなく、さらに読みやすい明るさにすると、一気に資料の完成度が上がることが、お分かりいただけたと思います。

    まとめ

    上手な資料デザインをめざして完成度を上げるには、レイアウト・情報量・色、の3点に気を付けると効果的、という解説でした。
    いきなりうまくはいかないかもしれませんが、何が問題でうまくいかないか分かることで、対応箇所が明らかになります。
    レイアウトや色は、多少掘り下げないといけませんが、できる範囲で問題ありません。この記事での改善サンプルを参考にして、ぜひトライしてみてください。









  • PowerPointスライドのビジュアルデザイン化の事例、色によってもこんなに印象が変わる

    PowerPointスライドのビジュアルデザイン化の事例、色によってもこんなに印象が変わる

    PowerPointの資料作りや、チラシ、ポスターなどを作っていると、なかなか大変だと感じることが多いと思います。
    レイアウトをしっかり整えるだけでも見映えを改善できますが、より効果的に仕上げるには要素から文字まで総合的にビジュアルデザインを適用し、その上、配色にも気を配ります。完成度の高いスライドに仕上げるには、やや高いテクニックが必要になります。
    この記事では、実際のスライドのビジュアルデザイン化についてご紹介します。

    元スライド

    このようなスライドがあります。

    ギュッと詰まった感じや、賑やかな色使いに圧倒されてしまいます。




    資料をビジュアルデザイン化する

    この資料の修正ポイントは以下のようになります。

    • 適切な余白を設けて要素を整列させる
    • 関連要素ごとに明確なグループ分けをする
    • 重要語句、読み物、イラストでメリハリをつける
    • 全体のギラギラ感を緩和する
    • 適切な色使いを適用する

    これらの観点を踏まえて修正すると、このようになります。

    スッキリと風通しの良いレイアウトになっただけでなく、全体的に落ち着いた雰囲気の中に重要ポイントがしっかり浮き出てくるのが分かると思います。
    イメージさせる色は、段ボール箱の色からくる薄茶色で設定しています。

    イメージカラーを吹き込む

    先ほどの修正例では、3つ目のイラストに赤色が施されているため、その赤に悪目立ち感があります。用意されている素材にそもそも不備があるわけです。

    資料全体を通して完成度を上げるためには、イメージさせる素材にも気を配ります。元のイラストをすべて削除してピクトグラムを制作します。ピクトグラムとは、単色で表現するイメージイラストです。
    このピクトグラムを用いることにより自分で好きなように配色できるため、全体の仕上がりをコントロールできるわけです。

    今回、イメージカラーとして青を設定します。このようになりました。

    具体的なイラストを用いなくても、ピクトグラムで十分に理解促進の機能を持たせることができました。また、全体で青色のもつ性格である「真面目」「冷静」などのイメージを全面に押し出すことができました。

    配色を変えると、また違った印象になる

    もし、資料が複数ページで全体的にエコ(環境保護)なイメージで通したい、という事情があれば、緑を配色します。

    純色の緑だと、少し重い感じが出るため、少し青みに寄せた緑を採用しています。スッキリとした印象になります。

    まとめ

    以上、にぎやかなレイアウトや配色の元資料にビジュアルデザインを適用した例でした。レイアウトを整えるだけで、ひと目で理解できる効果的な資料に変身させることができます。
    配色に関しては、さまざまな配色パターンはありますが、ここでは青や緑を単独で使用した例をご紹介しました。色には性格があって、その配色を施すことにより、その色がもつ印象をぐっと前面に押し出す効果を見ていただくことができたと思います。
    さまざまな色によるパワポ資料についても、またご紹介したいと思ます。









  • 包装・梱包の設計やお仕事、どんなことをやるのか数式なしでかんたんに理解する

    包装・梱包の設計やお仕事、どんなことをやるのか数式なしでかんたんに理解する

    梱包・包装という技術領域は、直接携わっていないとなかなか知る機会のない分野だと思います。
    少なくとも、箱のサイズを決めて中に製品を入れるだけではありません。
    この記事は、文系職種の方や、理系でも包装技術に馴染みのない方が、包装設計・包装技術についておおよそのエッセンスを理解できるような内容になっています。数式や難しい計算例を用いた解説ではありません。
    「包装技術」は包装・梱包に関わる技術全般のことで「包装設計」はその設計や検証に関わることですが、ここではまとめて「包装設計」と呼ぶことにします。

    包装の必要性、その役割は3つ

    包装は製品をただ包むだけではなく、明確にその理由があります。主に以下の3つです。

    • 製品を保護する
    • 衝撃・振動・荷重、雨・湿気、ほこりなど、外部から製品に加わるさまざまなダメージを防ぐ

    • 製品の荷扱いをする
    • 取っ手をつける、複数個1セットにまとめる、安定して置くなど、効率的にハンドリングする

    • 販売を促進する
    • 外箱に商品名やデザインを施すことで製品に魅力を付加し、見た人に「買いたい」と思わせる

    世の中の商品のすべてに上記3つが漏れなく該当するわけではありません。しかし製品に対して上記のいずれかに該当する場合は、ふさわしい包装をしたほうがいい、ということになります。
    この「ふさわしい包装」というところが、包装設計の難しさであり、おもしろさでもあります。




    包装に必要な部品とその材料

    包装部品にはどのような物があるでしょうか?
    代表的な材料と共にいくつか挙げてみます。

    • 外箱
    • 段ボール箱や厚紙の箱が主流。木製の箱、プラスチック製の箱などもある。「外装箱」と呼ぶことが多いが、製品1セットずつ梱包する箱を「個装箱」、個装箱を複数個入れる箱を「集合箱」などと呼ぶ。輸送される際の集合箱は段ボール箱が一般的。

    • 緩衝材
    • 製品を保護するためのクッション材で、箱の中に敷き詰められている。発泡スチロールが主流。折り曲げた段ボール、エアキャップ(プチプチ)、エアバッグ(空気を充填してシーリングしたポリシート)、各種発泡プラスチックなど、さまざまな種類がある。

    • パレット
    • 絵の具のパレットではなく、日常的には目にする機会は少ない。たくさんの梱包箱をたくさんまとめて梱包する部材。長距離の輸送や海上輸送などが目的。木製やプラスチック製が主流。

    • ポリエチレン製の袋が一般的。製品を入れる袋、小さな部品を入れる袋で厚さが異なることが多い。袋が外箱の代わりになる商品も多い。密閉用に表面にアルミをコーディングしたものや、静電気防止のために炭素を含ませたものなどもある。

    • テープ・固定部材など
    • 製品が輸送中にバタつかないように固定する。テープにはセロテープ、頑丈に固定するポリエステル製の工業用途のものまである。固定部材は、プラスチック部品や段ボールシートなど多種多様。

    これら以外にも紙や保護フィルムなどがありますが、特に高い品質が要求されるときに使用されます。




    包装設計の方法をかんたんに解説

    製品包装の段階を見てみたいと思います。包装段階が進むにつれて規模が大きくなります。

    製品の個装梱包

    まずは、製品1セットを梱包するイメージです。

    集合箱の梱包

    次に、その製品梱包状態の箱を複数個セットで集合箱に梱包します。

    集合パレット梱包

    次に、その集合箱複数個をパレットに積載し、集合パレット積載状態にします。

    製品の寸法によっては集合箱が存在せずに個装箱だけをまとめてパレットに載せたり、パレットに対して個装箱1個だけを載せる場合もあります。

    コンテナバンニング

    最後に、その集合パレット積載の貨物を海上コンテナやトラックに載るだけ載せます。搬入することを「バンニング」と呼ぶことがあります。

    包装設計の手順

    1つひとつの包装部品を設計するところから始めるのではなく、全体の系を考えてから進める必要があります。

    • 製品1セットのサイズ感から考えて、個装箱のおおよその寸法を想定する
    • 個装箱寸法→集合箱寸法→パレットの外寸法を概算する
    • 海上コンテナの標準寸法をもとに効率良く積載できるようなパレットの外寸法と集合箱寸法を微修正する
    • 逆算した集合箱寸法をもとに、個装箱の寸法を見極める
    • 個装箱寸法をもとに、製品との隙間に収まる緩衝材の設計、箱の必要強度算出と材料選定を行う
    • 最終的な個装重量から算出してパレットの構造設計を行う

    個装箱のねらいの寸法が決まってからが、包装設計の本格的な「設計」の始まりになります。

    ちなみに、すでにできあがっている梱包形態に修正を加える場合、または部品や製品をただ包めばいい、などの状況であればその包装部品を設計するところから始めても十分です。

    包装設計の内容

    先ほど「個装箱のねらいの寸法が決まってからが本格的な包装設計」と書きましたが、その包装設計には以下の設計行為があります。

    • 外装箱の設計
    • 緩衝材の設計
    • パレットの設計

    1つずつその設計概要を解説しますが、決して独立した設計行為ではなく、それぞれが密接に関わっています。外装箱の構造を変更したら緩衝材形状にも影響しますし、緩衝材の厚さを増やしたかったら外装箱寸法にも影響します。
    3次元CADを使用して設計を行うことが普通です。
    ここでは設計の細かいやりくりではなく、各包装部品の設計方法の概略を解説します。




    外装箱の設計

    外装箱を設計するには、前提となる条件を用意するところから始めます。
    必要となる箱強度がどれくらいかを決めます。この「強度」とは、箱を段積みしたときに箱の上に何kgまで積載しても潰れないか、を表す強度です。

    強度の前提条件が用意できたら、その強度を満足する箱の構造や材質を決めます。
    電化製品のような重量物なら強度をもつ段ボール箱を、菓子や文具などの軽量物では厚紙や薄いプラスチック製の箱を選定することが一般的です。小型の軽量物では、1セット用の箱に強度をもたせた設計をすることは稀で、個装の箱を複数個まとめて梱包する集合箱のほうに強度をもたせます。集合箱は、強度のある段ボール箱です。

    段ボール箱の強度は、箱の形や段ボール紙材料がもつ特性などから算出します。算出した段ボール箱の強度が、こちらの要求する強度以上であることを確認します。安全率をいくつに設定するかも重量なポイントです。

    菓子や文具などの軽量物より、電化製品などの重量物の箱選定のほうが設計難易度は高いです。

    緩衝材の設計

    緩衝設計を行います。緩衝設計とは、衝撃が加わった時にその衝撃を吸収して内部の製品を保護する部品の設計です。
    緩衝材には発泡材料や段ボール、ゴム材、エアバッグなどさまざまな種類がありますが、緻密に緩衝計算して最適な品質保証を行うのは発泡材料です。主に発泡スチロールです。

    外装箱と同じく前提条件が必要です。製品そのものがどれだけの強度をもっているか明らかにします。梱包状態で落下させたときにどれくらいの高さまでの落下衝撃なら保証するか、どのような落下を何回想定するか、などを決めます。

    前提条件がそろったら、それら各条件、製品の重量、選定する発泡材料の特性値などから発泡緩衝材の厚さや製品への受け面積を算出します。あとは緩衝材の詳細形状を決めます。

    パレットの設計

    パレットは木製とプラスチック製が主流ですが、積載物の重量などを考慮して最適な設計を行う必要があるのは木製パレットです。

    外装箱や緩衝材と同じく前提条件が必要です。積載物の重量と形状、パレットのどの部分にどれくらいの荷重がかかるかを明らかにします。できれば、そのパレットがどのような荷扱い環境におかれるか調査することが理想です。

    前提条件が決まったら、ブロックや板材などの組み合わせにより、パレットの部材構成を検討します。材料強度や材料特性から梁の計算をしたり、強度確保の難しい板材の下にブロックをあてがったりします。
    部材の結合のための釘打ち箇所や本数検討もします。

    その他の包装設計検討

    数式による算出や構造の設計とは異なりますが、以下のような検討事項もあります。

    • 同梱アイテムのリストアップや配置
    • 包装量産工程にふさわしい仕様の検討
    • 最終梱包品の物流事情の把握
    • 最終梱包品の品質検証
    • 設計部品の製造工程の確認
    • 採用部品のエコ対応
    • 部品点数やコストを最小限に抑えた設計
    • 販売促進目的の外箱の外観意匠デザイン

    ほかにもたくさんあります。メーカーによって包装設計エンジニアがどこまで掌握するかは異なります。少なくとも上記の事項くらいはエンジニア自ら把握しないと「井の中の蛙」状態になり、計算してCADを操作するだけの職人さんになってしまいます。包装設計そのものから離れたさまざまな領域を網羅することにより、その設計センスが磨かれていきます。

    包装設計の難しさ、大変さ

    包装設計は製品設計より立ち位置は下に位置付けられる傾向があります。立場の難しさもありますが、設計業務的な難しさをいくつか挙げます。

    • コストを最小限に抑えて要求品質を満足させる
    • 計算結果をもとに構造を実現できないことがあり、チョイスできる材料の範囲で実現させなくてはならない
    • 正しい理論で設計したつもりでも、実機での検証は一発ではうまくいかないことが多い
    • 検証がうまくいっても、市場での物流トラブルにより包装設計問題と突きつけられることが多い
    • 実機での検証パスはもとより、理論でも完璧・鉄壁の設計裏付けをもっておく必要がある
    • 基本ルール・規格・設計手順などを熟知しただけでは足りず、ものづくり・機械工学・物理学・物流事情などの周辺知識や経験、設計センスも要求される
    • 包装設計部門に対して、製品設計・製造・品質・物流などさまざまな部門から困難な要求をされることがある



    包装設計の楽しさ、やりがい

    包装設計職は、楽しいことより大変なことのほうが多いと考えられます。その中で自分がいかにやりがいを見つけていくかが大切です。楽しさ、やりがいは以下のようなものです。

    • 自分の設計した成果物で製品をお客さまに届けることができる喜びがある
    • 製品から個装包装、コンテナ輸送まで、スケールの大きい系を把握できて視野が広がる
    • 3次元CADのオペレーションに慣れると、自分の思い描く包装形態を可視的にモデリングでき、創造力を磨ける
    • 包装技術は機械・材料・製造・品質・物流・環境・量産など関連する領域が非常に多く、設計業務を通して製品化が実現する過程を知ることができ、見識が広がる
    • 自らが設計した包装形態にて検証が合格した瞬間や、大量生産が軌道に乗ったときは、苦労が報われた感、満足感がある

    まとめ

    包装技術・設計業務は簡潔に以下のようにまとめることができそうです。

    包装の目的は、製品保護・荷扱い・販売促進という3つの側面があり、外装箱・緩衝材・搬送用パレットをはじめとした部品により包装の仕様が構成されます。
    包装設計の職務は、製品を梱包する包装設計を行うところから海上コンテナに積載するところまで、広い範囲を扱います。その中で多くの職務の人たちと関わり、幅広い見識を身に付けられるメリットがある反面、その調整は大変です。設計業務には基本の学問や技術全般の知識、経験、センスが要求されますが、慣れてくれば自分の考える包装形態を実現できるやりがいのある仕事でもあります。

    これから包装技術に関わる人、関心のある人は本記事でそのエッセンスを感じていただけましたでしょうか。本記事を読むだけでは設計はできませんが、より深く知りたい人は書籍や専門のWebサイトでの学習を進めてみてください。