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昇格論文を書くためには、その論文を書くための業務ネタを用意できないと、論文の構成づくりや題意に的確に答える、といったテクニックを発揮することもできません。
本記事では、ビジネスマンが日頃の仕事の中で経験する業務で論文のネタに使えるものを紹介します。論文を書く上でのパーツとしてご利用ください。




論文に書くネタとして使える要素

論文に書くネタは、ひとつでも多く所持していることが望ましいです。いざ論文試験開始、となったときに戸惑うこともないでしょう。
多くの自分の実績を把握しておくことで、題意に対してうまくチョイスして、書き進めていくことができます。

使えるネタは、日々の仕事の中にたくさんあります。
たとえば、後輩に仕事のやり方を教えただけで、それは工夫次第で「人材育成」をテーマにした論文に使えます。小さな取り組みであっても、

  • 題意に合致した最終目標を設定
  • 最終目標に向けた自分なりの工夫
  • 周りの人間を巻き込む
  • 最終的な成果
  • そこから考察できること

という具合いに、書き方次第で含蓄のある内容に仕立てることができます。

会社では、業務にのめり込む職人のような気質の社員より、周りに影響を与えて組織単位での成長を促すような人が好まれます。したがって、この記事では、周りの人間を巻き込むような内容のネタを多く取り入れています。

また、テーマや題意に対して、その道の達人や文化人が論じるような掘り下げた論理展開を書くことはふさわしくありません。
日常の業務や問題解決、取り組みの成果を、管理職目線で解釈し、会社への利益貢献や、会社の永続的発展につながる書き方が好まれます。

以下がネタに使えるキーワードです。詳細事例は次の項から記載されています。キーワードをクリックしても参照できます。




品質

  • 製品、商品の品質向上の視点で、使いやすさ改善、見やすい表示に変更、ケガをしにくい構造に変更
  • サービスの品質向上を目指し、お客様の待ち時間や対応時間を短縮するために、会場に説明員を増員した
  • 製造、生産の品質向上のために、組み立て間違えのない方法の提案や、部品の欠品が発生しないような仕組み構築をした
  • 業務の品質向上のために、操作ミスや間違いが発生しない、誰がやっても同じ結果にるような仕組みを構築した

コスト

  • 商品やサービスのコストダウン全般(VE,VA)
  • 要員を減らしたことによる人件費削減
  • 時間を短縮したことによる作業工賃の削減
  • 輸送効率を改善して物流費を削減
  • 物品の集約を実施し、保管スペースを削減したことによる管理費用削減
  • メール、添付資料、テレビ会議、などを活用して、出張を削減したことによる経費削減
  • 従来のやり方を見直して、無駄なツール、ソフトウェア、サービスなどを解約して、経費削減
  • 業者との交渉による仕入値の値下げ

納期

  • 各担当の業務の進捗を週一で報告する会を設ける、というルールを作った
  • すべての取り組みの進捗がひと目で分かるような一覧表を作成
  • コストが余分にかかってでも、納期だけは確実に守る、という文化を醸成
  • メンバー全員の進捗を見て、遅れそうな人をフォローし、足並みを揃えさせる
  • 顧客への回答が遅れないよう問い合わせ一覧を作成し、完了チェックを入れたら項目が消える、というデータベースを構築

環境

  • 規制されている物質の一覧表を常に手元に置いて材料選択をしている
  • 環境を統括する部門と常日頃からり取りして、環境規制に対する意識を高めている
  • 会社が環境保護について取り組んでいるプロジェクトをチェックして、活動内容だけでも把握している
  • 環境規制やプロジェクトの内容を関係部門に周知して、時流に乗った取り組みを推進している
  • 世の中の激しい環境変化に乗り遅れないために、新聞やインターネットで社会のニーズや変化をキャッチしている
  • 社内の激しい環境変化に対応するべく、的確に情報を取れるよう、毎朝メールや社内のイントラサイトを確認している
  • 社内の環境変化を肌身で感じるために、多くの他部門の社員と、仕事以外の話もするようにしている

新しい取り組み

  • 日頃の業務の問題点や不満などをみんなで話し合う会を1カ月に一度設けて、改善する活動を始めた
  • コストダウン、品質、日程管理、教育、指導、衛生管理など、テーマは問わず関係者で定期的に話し合い、最適な状態へと導く活動
  • 業務の改善や新しい取り組みを大小問わず1年間で1人5件をノルマとし、イノベーションを意識付けた



仕事のプロセス

  • 課やチームの業務について、どのようなプロセスであるべきかメンバーで協議し、適正プロセスを策定、それに沿って仕事をしている
  • PDCAサイクルについて、チーム勉強会を行った
  • PDCAサイクルの「P」「D」まではできているが、「C」「D」がないまま次の業務に移っていたため、「振り返りの会」を実施し、「品質向上プロジェクト」を立ち上げた
  • グループ員がみんな自分の好き勝手なやり方で仕事を進めていたが、個人裁量に任せる部分と、共通プロセスに沿う部分を明確にすることで、業務の質が上がった
  • 成果報告では、その内容がPDCAサイクルのどのプロセスに当たるか明確にしながら話している

リーダーシップ

  • メンバー1人ひとりに的確に指示を出すだけでなく、考えさせながら進めるような手法をとった
  • 部下や後輩はいないが、同僚や他部門のスタッフに対して、依頼や協力要請をして動いてもらい、期日までに結果を出した
  • メンバーが気持ちよく仕事を進めることができるような環境整備はするが、無用なクレームには毅然とした対応で接するようにしている
  • メンバー自身で判断して進めてよいこと、リーダーの承認が必要なこと、チーム員全員で協議の上で進めることを明確にして、みんなで共有した
  • メンバーのスキル項目を精査し、スキルの低いメンバーに学びを勧めた

コミュニケーション

  • ほかのチームの人との交流会を定期的に設けて、コミュニケーションの強化を図っている
  • 相手と意見が異なるときには、ふたりの意見を総合して本質を見極めてから、win-winとなる結論を導くようにしている
  • メンバーとはメールだけでなく口頭でも情報共有を図ることで、コミュニケーションを活性にするようにしている
  • 人に説明するときには、口頭だけでなくメモ書きで補足しながら、誤解のないように行っている
  • 重要な説明した後には、コミュニケーションエラーが発生しないよう、議事録をメールで送付している
  • 相手が確実に理解しながら聞いていることを確認するために、「ここまでだいたい理解できましたか?」と言ってフォローしながら話している

生産性向上

  • 要求されてもいない品質にこだわっていたが、必要な品質維持だけに限定し、作業工数を短縮した
  • 複数箇所へ部品の共通化を行い、作業工数はそのままでコストダウンとなった
  • WebサイトにQ&Aを掲載することで、問い合わせ件数を削減し、スタッフが本業に専念できるようになった
  • 業務にPCだけでなく、スマホやタブレットを活用することにより、業務効率がアップした
  • お客様の窓口対応を、一度用紙に必要事項を記入してもらってから対応することで、要員を増やさず、多くの件数をこなし(効率アップ)、聞き間違いなく確実にヒアリング(品質向上)できるようになった

全体最適の視点

  • 顧客サービス対応を強化するために、自部門の要員を増やすことで要員管理が大変になるが、他部門への負担をかけることもなくなり、顧客満足向上、会社の利益アップとなる
  • これまで避けてきた面倒な技術手法を要求されたが、作業員が間違うことなく実行でき、スピードも上がる、検査も時間短縮できる、ということであれば、設計開発部門としては受け入れる
  • 自部門の効率アップや不具合対応防止ばかり考えている部門に対して、品質向上とコストダウンによる全体最適の効果を説明して、面倒な業務を受け入れてもらった
  • 一見ひとつの部門にしわ寄せがいっている取り組みについて、その部門のメリットを明確にして、全社的にメリットを見いだすことができた
  • 明らかにひとつの部門が負担を負うような取り組みだったので、その部門も恩恵を授かるこができるよう更なる一手を講じることで完全な全体最適を実現した



部門間調整

  • 自部門の看板を背負って、出来ることと出来ないことを明確にして話している
  • お互いの部門のメリットを常に考えながら話を進めた
  • 前例のないやり取りは、自分ひとりで進めずに、部門長を巻き込んで慎重に行った
  • 両部門のメンバーに影響することなので、誤解が発生しないよう、5W1Hを明確にして話した
  • 相手が明らかに調整力不足であれば、概略だけ伝え、あとでその人の上司に詳細内容を連絡した
    今後のスタッフ間調整の最適な人選を提案した

問題解決

  • 問題解決の前に、関係部門に連絡し、協議の上で対応している
  • まず問題の影響範囲を考えて、暫定的に取れる対策を迅速に講じ、その後に恒久対策を打っている
  • 問題解決の際には、個別で進めるのではなく、常に関係部門と情報共有を図りながら、最新の情報をもとに進めている
  • 問題解決した際には、原因、対策内容、今後の見通しなどを明確にまとめて、被害を受けた人やクレーム主にアピールし、安心を提供している
  • 問題が発生しても、その緊急度によっては即座の対応ではなく、時間をかけて確実に、失敗しないように対策を進めていく
  • 問題解決がひと段落したら、再発防止策をまとめ、二度と起こらないような仕組みを作る

安全衛生

  • 月に一度、グループ内で安全巡視を行っている
  • 月に一度、課内でオフィスや検討場の整理整頓の会を開催している
  • オフィス内では、物品を積み上げる高さに制限を設けて、万が一、落下しても大事故にならないような措置をとっている
  • 課内に安全衛生担当者を立てて、あらゆる安全衛生に関わることの窓口や取り仕切りを任せている
  • 毎週金曜日の定時前に、自席の机を整理する決まりを設けている

クレーム対応

  • クレーム主が言っていることに対して対策するのではなく、その本質をとらえてから的確な対応をする
  • 明らかに単なる不満であれば、毅然とした対応でお断りする
  • クレームには、その意見の背景にある、自分たちの大きな誤算を発見する良い機会でもあるため、うわべだけをとらえるのではなく、全体像を俯瞰(ふかん)して漏れのない対策を検討する
  • クレームは、処理するだけでなく、対応リストも作成し、課内で内容を共有して対応方法が基本的に統一されるようにする
  • クレームを定期的に受ける部門のため、入力フォームを作成し、インプットされるようクレーム情報のスタイルを一元化した
  • 同じクレームが再度起こらないように、再発防止案も毎回検討する

ユーザー目線

  • あらゆる要素より、ユーザーのメリットを優先する、というマインドを課内でのモットーにしている
  • 管理の手間が発生するが、多くのユーザーの利用のしやすさが見込まれるので、取り組みを実施した
  • 貼り紙やポスターへの文章表現を、書き手側の視点でなく、見る人側の視点で書いた
  • 発表資料の記載内容を、文字量少なめでビジュアルデザインを意識した作りにしている
  • 「このようにしてください」との説明書きをしてユーザーに操作させるのではなく、そんなことをしなくてもいいような構成になるよう、議論を尽くす
  • これまで良いと考えていた製品やデザインを、部外者や専門家、モニターに改めて検査、評価してもらい、ユーザーが本当に求める品質へと改善した
  • ユーザーは実際のお客様だけでなく、自分たちの成果として上がった業務や仕組み・ルールを運用する社内の関係者すべてをユーザーとしてとらえることで、より品質が上がる

ルールの見直し

  • ルールは、時代の移り変わりとともに改定されるべきだが、特にユーザー向けは定期的に協議して見直している
  • 社内規格の厳しさが原因で物事が前に進まないときは、そのルールを疑い、時代のトレンドに乗っているか協議する
  • ルールが存在しない業務を進める場合、類似するルールを拡大解釈して進める



課長の補佐

  • 課長の補佐的ポジションだが、ほぼ課長と同等の仕事を行い、課長には部長に近い職務をしてもらっている
  • 課長が多忙で手が回らないため、本来課長が行うべき職務のうちいくつかを自分で代行すると提案し、実施した
  • 課長不在のときには自分が課をまとめる必要があるため、日頃から課長の仕事についてレクチャーをお願いしている
  • 課長に直接意見を言いにくい人もいるので、スタッフとの架け橋になれるよう、課長とスタッフの両方と日頃のコミュニケーションを密にとっている
  • 課長の代わりにスタッフへ見解を述べるときには、私見ではなく、課の指針に沿ったり会社の利益をを考慮したりして述べている
  • スタッフに対して、課としてのぶれない方向性を示すには、課長の意見に異を唱えず、確たるものとして伝える

小集団プロジェクトでの活動

  • 課としての取り組みで、本業と少し異なる独立した業務の場合、プロジェクトとして立ち上げ、目標や日程、成果を見えやすくする
  • 課内に小集団での活動を複数作り、各スタッフにプロジェクトリーダーを任せることで、モチベーションも上がり、リーダーシップの養成にもなる
  • プロジェクト終了後には、リーダーがその成果や問題点、今後の目標などを体系的に発表する機会を設けることで、総合的なビジネスのスキルアップを図った
  • 小集団の中では、平社員であるリーダーがある程度自分の好きなようにプロジェクトをコントロールしてよいルールにして、自分で考える力を養うようにした

組織の活性化

  • 課のスタッフ間のコミュニケーションが良くないため、困っていることや仕事と関係ない部分での意見を各人からもらい、何が問題かを追及した
  • 月に一度、昼休みにランチミーティングを開催し、仕事のことも仕事以外でも何でもいいので、フリーディスカッションスタイルをとって皆で食事をしている
  • 課のスタッフ全員が発言できるようなミーティングを設定した
  • チーム間でスタッフをローテーションして、より多くのスタッフのコミュニケーションを図れるようにする
  • 定期的に各スタッフの業務進捗発表を開催して、お互いの業務を詳しく知る機会を設けている
  • 「何か困ったことや新しい発見、みんなで取り組んだらいいと思うことがあったら、ぜひ声を出してみんなに伝えてくださいね」と日頃から課のスタッフに働きかけている

海外拠点や外国人とのやり取り

  • 単に英語で情報交換するだけでなく、率直に分かりやすく意見を述べたり、国の治安や経済情勢を考慮するなどの、相手国の文化に配慮したやり取りを心がけている
  • 外国人がいる場面で、日本人同士の長時間にわたる日本語会話をしないようにしている
  • 相手の国に歩み寄るために、最初の挨拶だけでも相手国の言語であいさつする
  • 業務で使用する最低限の英語について、課内で勉強会を開催している
  • TOEICの点数と実際の英語力には解離があるため、課のスタッフの英語スキルの見える化を行った
  • 英語が得意ではないスタッフのために、挨拶文や結びの文、定型化されたやり取りの英文パターンを何通りも作り、担当者による英文ばらつきを低減した



自発的に動く

  • 関係部門やお客様には、いつも「何かご不明点はありませんか?」とこちらから質問している
  • 部門やプロジェクトの改善すべき点を提案した上で、自ら説明資料を作り、キーパーソンに説明する
  • 自分の業務を日程通り遂行することは当然のこと、チームのメンバーで遅れが発生しそうでないか自ら確認し、もし遅れそうであれば、自ら手伝うか、リーダーへ支援を打診する
  • 課の中で明らかに全体のパフォーマンスが落ちていれば、何か原因があるので、自らキーパーソンを集めて協議する
  • 経験をたくさん積む必要があるため、誰かが代表で出張や出席、研修を受講して課で共有などの機会には、自らが志願している

人材育成

  • 直接いろいろなことを教えるのも育成だが、答えを教えずに考えさせることで、思考力を育んでいる
  • 後輩や部下との普段の会話の中で、どのように成長したいか、そのためにどのような意識で仕事をするべきか話している
  • 研修や講習、さまざまなWeb学習サイトの情報を日々入手し、自分で受けるだけでなく、課のほかのスタッフにも受講を促して全体のレベルアップを図っている
  • 部下、後輩に少し高めの目標をもたせ、成果を挙げさせることで、仕事へのモチベーションを引き出せるような指導ををしている
  • 課に必要な知識、スキル項目をリストアップして、スキル不足のスタッフと今後の学びの計画について、本人と話し合っている

まとめ

大規模プロジェクトの一員としての見えやすい成果や、上司から与えられたミッションは、考えなくてもすぐにネタとして浮かびます。それ以外にも、論文に書けるネタは日常業務の中にこれだけたくさんあります。中には一見パンチ力の弱い内容もありますが、正しい目標設定と、自分の工夫が盛り込まれ、管理職目線で書けば、論文のネタとして十分使えます。
もし本記事で挙げた事例で自分の業務に該当するものがほとんどなければ、それは昇進昇格するに値する成果をまだ出せていない、ということになります。今からでも自分の業務にいくつか実施してみてはいかがでしょうか。論文に書けるくらいの影響力のある業務を実践することが、昇進昇格へと近づくことになります。