学生時代とは異なり、会社に入ると、言葉使いのマナーをわきまえないと人間関係をうまく構築出来ません。
この記事では、会社で上司や先輩、関係部門の人達とうまくコミュニケーションを取り、信頼関係を作れるような言葉使いについて解説します。
言葉使いが上手にできると、人間関係をうまく構築できることに加え、上司からの信頼も厚くなり、さまざまな対外的な仕事も任されて、昇進が早くなる、というメリットもあります。
会社で使用する言葉使いの種類
会社で使用する言葉といっても、その職場によって言葉の文化はさまざまです。しかし、仕事で他の会社の人と話す時には、言葉使いの一般的なマナーが求められます。
会社で使用する言葉のマナーには、
・丁寧語
・尊敬語
・謙譲語
があり、それに加えて、
・依頼するときの言い方
・命令形の言い方
があります。
上記ひとつずつ、例を挙げながら解説します。
丁寧語
文節の語尾を丁寧に表現する言い方です。
「です」「ます」を語尾に付けます。
これだ ⇒これです
する ⇒します
職場で話す時は、基本的にこの丁寧語で話すことが無難です。
独り言を言うときには、あえて丁寧語を外します。
「なるほど、そういうことか~」と言います。
「なるほど、そういうことですか~」と言ってしまうと、周りの人は、自分に話しかけられていると誤解してしまいます。
尊敬語
相手の言動に対して使います。相手を持ち上げるニュアンスがあります。
「れる」「られる」「なさる」などを語尾に付けます。
するのですか ⇒されるのですか
言う ⇒言われる、おっしゃる
来る ⇒来られる、お越しになる
来場する ⇒来場される、ご来場なさる
いる ⇒いらっしゃる
などです。
■参考:「れる」「られる」の使い方
尊敬を含めて4通りあります。覚えておくと便利です。
・尊敬 歩かれる
・受身 教えられる
・可能 作れる
・自発 案じられる
「そのように思われる」という言い方がありますが、上記の「自発」にあたります。自分でそう思うつもりがなくても、自然にそう思ってしまうニュアンスです。
■二重尊敬語に注意
敬語を重複して言うのは間違いです。
間違い例1
「そうおっしゃられましたので、」
正しくは↓
「そうおっしゃいましたので、」
または、
「そう言われましたので、」
間違い例2
「お越しになられる」
正しくは↓
「お越しになる」
または
「来られる」
間違い例3
「○○部長殿」
正しくは↓
「○○部長」
⇒「先生様」とは言わないのと同じです。
謙譲語
自分の言動に対して使います。自分を下げるニュアンスがあります。
「いたす」「いただく」「おります」などを語尾に付けます。
行く ⇒参る、参上する
もらいます ⇒頂きます
言わせてもらう ⇒言わせて頂く
言う ⇒申す
~しています ⇒~しております
させてもらいます⇒させて頂きます
手配します ⇒手配致します
あります ⇒ございます
「ございます」は的確に使うことが少し難しいかもしれません。例えば、お店でお客様から「~はありますか」と訊かれて答えるときに、「はい、ございます」という具合になります。かなりかしこまった言い方です。自分達の、取り揃えている行為について謙譲しています。
謙譲語っぽく聞こえる言い方で、
「こちらが、おつりのほうになります」
というのがありますが、間違いです。
「~のほう」の意味合いは、2つです。
・方向
・比較
です。例を挙げます。
■方向
東京のほうに向かう
■比較
こちらの大きいほうが該当する
ちなみに間違い例の「おつり」、ですが、前のやり取りで明らかに「渡す商品」に対して「おつり」であれば、「商品ではなくおつりのほう」という言い方も正当化できるかもしれません。
依頼する言い方
自分のために何かをしてもらう時の言い方です。基本的に目上の人や初対面の人にお願いするときに使用します。
語尾に「~して頂けますか」「~して頂けますでしょうか」などを付けます。
・対応してもらえますか⇒
対応して頂けますか
対応お願いできますでしょうか
対応して頂いてよろしいでしょうか
など
年上の後輩、のように、それほどかしこまらなくても良いが命令口調は避けたい、という場合には、次のような言い方をします。
・対応してもらっていいですか
・対応してもらえますか
・対応お願いできますか
目下に対しての命令形
「~してください」という言い方です。「~しろ」「~しなさい」というのも、もちろん命令形ですが、会社内やビジネスの現場では、使用しないほうがいいです。
命令形は、基本的には後輩のような目下に対して使いますが、使い方には注意が必要です。モラルが低いと見られる恐れがあるためです。
命令形は、英語と対比させると分かりやすいです。
・しなさい/しろ
Do it.
・してください
Please do it.
ビジネスの現場で使う命令形は、上記のPleaseが付いているほうの表現になります。
・資料を作成してください
・資料の作成をお願いします
・資料の作成をよろしくお願いします
⇒3つ目の表現は、一見丁寧に見えますが、命令形です。間違って上司や先輩に使用しないようご注意下さい。「よろしくお願いします」を単独で文末に使用するなら、括りの挨拶文ですので問題ありません。
目上に対しての命令形
上司、先輩のような目上に対しても命令形を使うことがあります。これは、相手に利益があるときに話す場合です。
例えば、上司にパソコンの操作方法を教えて欲しい、とお願いされたとき、
「このボタンをクリックして頂けますか」
と言うと、少し不自然です。自分が上司に依頼している訳ではないからです。上司がゴールにたどり着くまでの道のりを、教えてあげているからです。最初だけは「依頼」して、それ以降は「命令」で十分です。
「ではまず、こちらを開いて頂けますか」
「次にこれを押してください」
「これを選んでください」
「最後にこれを押してもらって完了です」
このような流れが自然なコミュニケーションになります。この言い方は、もちろん目下に対しても使って大丈夫です。
間違った使い方
ビジネスの現場では、多くの人が間違った使い方をしているのを見かけます。いくつかご紹介します。間違いのないよう、お気をつけください。
頂いてください
「この列に並んで、順番に整理券を頂いてください」というような例です。イベント会場や遊園地などて、係員がたまに言っています。
「頂く」は謙譲語ですから、話している相手の行為に対して「頂く」を使うと、「相手を下げる言い方」になってしまいます。推奨する言い方は、
「この列に並んで、整理券をお受け取りください」
「この列にお並びください。順番に整理券をお配りします」
などです。「もらわれてください」は複雑なので、良い言い方ではありません。
「おります」の誤用
「おります」は、丁寧に聞こえるので、何でもかんでも使用する人がいます。謙譲語ですから、相手に対して自分の行為を下げる場合に徹底しましょう。
間違った使い方
・雨が強くなってきております
・電車が遅延しております
・書類が破れております
全て間違いですので、単純に、
・雨が強くなってきています
・電車が遅延しています
・書類が破れています
と、状況を説明する言い方で大丈夫です。
履歴書や職務経歴書への記入、資料内の表現についても、自分の経歴や特技、事実、実績などを下げる必要はありません。限られたスペースのなかで事実を淡々と述べるような場合には、普通の「です、ます」調が望ましいです。
「ございます」の誤用
「おります」と同様に謙譲語です。丁寧に言いたいがために、やたらと多用するのは、好ましくありません。次のような言い方は間違いです。
・こちら、おつりでございます
・イベントは中止でございます
・こちらが履歴書でございます
推奨の言い方は、
・こちら、おつりになります
・イベントは中止になります
・こちらが履歴書になります
単純に、「~です」と言っても良いです。
どうしても謙譲語で表現視たい場合には、あくまで自分の行為に対して謙譲します。
・おつりをお渡しさせて頂きます
・イベントは中止とさせて頂いております
・履歴書を提出させて頂きます
しかし、おすすめはしません。
「申す」の誤用
謙譲語ですから、相手には使用しません。
・先ほど申されてましたが
・関係者にそう申し上げてください
推奨の言い方は、
・先ほどおっしゃいましたが
・関係者にそうお伝えください
ご承知おきください
この表現は、メールでよく見かけますが、目上に対して使う表現ではありません。主に、
・試験事務局が受検者に、
・人事部門が社員に、
・チーフがプロジェクトメンバーに、
という具合に使います。警告のようなニュアンスを持ちます。
事前の理解を促したい場合には、
・予めご了承くださいませ
とか、ケースにも依りますが、
・ご理解のほどお願い申し上げます
のような言い方ができます。
やたらと尊敬語も不自然
相手が特定されていなかったり、一般的なことに対して尊敬語を使用すると、不自然に聞こえます。間違いではありませんが、好ましくありません。
・もしそうおっしゃる方がいたら、
・日本人は朝食を召し上がる際、
推奨の言い方は、
・もしそう言う人がいたら、
・日本人は朝食を摂る際、
空気を読んで、「タメ口」を使うことも大切
会社やビジネスの現場では、言葉使いを適切にすることが重要ですが、周りの雰囲気をよく観察して、合わせることも出来ると良いです。
皆が、フレンドリーに「タメ口」で話しているのに、自分だけ「皆様がご覧になっているので、私も拝見させて頂きます」などと言うのは、好ましくありません。
皆と距離を置いている、と思われたり、空気の読めないやつだ、と差別視されてしまい兼ねません。
しかし、「タメ口」で話すにしても、正しい言葉使いができた上での「タメ口」であってください。
内と外で言葉の使い分けができると、周りの人からは、確実に一目置かれ、信頼感が増します。
コミュニケーションのコツ
話しかけるときには、気遣いの一言があると嬉しいです。
・ちょっと失礼致します
・少しよろしいでしょうか
・今、少し時間ありますか
・時間空いたとき声かけてください
など、第一声を発してから話しかけると、うまくコミュニケーションが運びます。
相手への気遣いがあれば、自然に出てくるようになります。
あと、他人の言葉使いが間違っていた時については、実際のところ、あまり指摘しないほうが良いかもしれません。ただし、自分の後輩や部下が顧客やVIPと話す折りには、一言アドバイスがあってもいいです。
まとめ
言葉使いを上手にできると、人間関係の良好な構築、幅広い対外的な仕事のチャンス、昇進など、良いことだらけです。
30代、40代のビジネスマンでもあまり言葉使いが上手でない人も多く見かけることがあり、てきとうに何年か会社で働けば身に付くものではない、と筆者は考えます。ある程度ルールを頭にいれておくと良いでしょう。言葉使いに関する本を一冊、読破し、あとは、実践です。
ぜひ言葉使いの上手な、ハイレベルなビジネスマンを目指してみては、いかがでしょうか。