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会社には、社員の業績を評価する仕組みや基準が存在します。それはどの会社にもあるでしょう。
会社によっては、上司など評価者の好き嫌いで決まってしまうケースもあるかもしれません。

昇進したいと思ったら、自分の会社がどのような評価基準をもっているか確認するのはもちろん、実際の傾向もとらえる必要があります。

筆者はたくさんの会社を経験しましたが、明文化されている評価基準や上司の好き嫌い以外に、会社の規模による評価傾向の違いも感じました。会社の規模によってどのように異なるのか、分析してみたいと思います。

まず結論から。

◎小さな会社
めざましい実績をあげて売り上げに貢献したり、これまで会社にはない成果物を創出して新しい領域を開拓、といった個人ベースの活躍が評価されやすい。

◎大きな会社
周りの人や部門を巻き込み活発に物事を進め、チームが定常業務を円滑に進めるよう調整、他部門に自身の名前が広まるような、組織運営型の人が評価されやすい。





複数社経験がある人もない人も、自分の会社の規模によって、上記のような傾向は感じませんか?
会社規模にかかわらず、上記の両方できるのに越したことはありませんが、なかなかそんなスーパーマンにはなれません。
「小さな会社」とは、社員数が数百人くらいまでの規模、「大きな会社」は数千人以上の規模と考えます。

なぜこのような傾向が見られるのでしょうか。
これから会社で働く、という人はこれからどのようにして振る舞えば昇進できるか、就活中の人は自分の適性として大小どちらの会社が自分に合うか、参考になるかもしれません。

小さな会社の場合

会社の規模が小さいと、以下のような傾向が考えられます。

  • 事業規模そのものが小さく不安定
  • 複数の事業が確立しておらず、事業間で支え合えない
  • ちょっとしたことで売り上げが下がると、会社の存続が危うくなる

会社がこのような状態で、会社はどうなりたいかというと、もっと成長するために事業の規模拡大や商品・サービスのラインナップ強化、存続と発展のために必要となる十分な売り上げです。

たとえば、年商20億円・社員100人程度の小規模な会社で、上記のような意向があった場合、自分は昇進するために、次のどちらを選択するでしょうか?
「自身が所属するチームの風土を盛り上げ、チーム員と上司・他部門とのパイプ役となり健全で円滑な業務運営に導く」
「従来にはないサービスを開拓し、新しい部門を設立し事業化、年間で5千万円を稼ぎ出す事業へ成長させる」
当然、後者になります。

規模が小さい会社では存続・発展のため、たとえスケールが小さくてもラインナップ強化や、短期的でも金になる実績が会社を支えます。
年商20億円・社員100人の会社の社員の1人がずば抜けた能力による個人プレーで年間1億円稼いだとします。この実績は、年商の5%にあたる金額を1人で稼いだことになり、会社の存続・発展に大きく寄与しています。会社は、発展に寄与したこの社員を高く評価するでしょう。

チームレベルの小さな単位で考えてみます。たとえば、業務遂行を大幅に効率化する手法を開発し、これまでにない業務フローが全社に確立。このような光る個人プレーも評価の対象になるでしょう。これがリードタイム短縮につながり、売り上げアップとなり、さらなる評価が期待されます。

規模の小さい会社では、以下のような実績が評価の対象になりそうです。

  • 商品やサービスのラインナップ強化
  • 新規事業立ち上げにつながる新領域の開拓
  • 年商を支える程度の売り上げ実績
  • まぐれ当たりであっても高い売り上げ
  • 業務手法の開発や業務領域の拡大
  • その他めざましい個人プレーでの活躍





大きな会社の場合

規模が大きな会社は、社会的に知名度や信頼が高い場合が一般的。社員には、会社の地位や名誉を汚すことがないよう、規律を重んじる教育を施します。多くの社員が組織人としてモラルある行動をし、チームワークをとり調和して仕事を進めることが求められます。
センセーショナルな成果物・ドラスティックな変化などがいち社員に求められることは稀です。

大きな会社、たとえば年商1500億円・社員5000人の会社で考えます。
1人の社員の個人プレーでのめざましい活躍で1億円稼いだとします。それはそれで凄いことですが、会社の年商の0.1%にも満たず、屋台骨を支えるほどの稼ぎではありません。
ずば抜けた発想力で商品やサービスを新規開発して事業化したとしても、年商1500億円の中でほかの事業と肩を並べるには少なくとも百億円規模の事業なくては成りたちません。ひと息に百億円は現実不可能で、1人の社員の活躍にも限界があります。
会社がある程度の規模まで成長すると、新しい事業を始める場合、既存の事業から分割・子会社吸収・M&Aなどで、一気に年商の○割という規模の事業を作るほうが効率的なのです。

このように、大きな会社では、いち社員はめざましく発想・開発したり、個人レベルでの大きな数字を出したりするのは、会社規模で見ると評価の対象にはなりにくいといえます。会社発展のための直接的な運営は、役員クラスの人たちが舵取りをします。
社員1人ひとりは、この大規模な会社の安定的な運営を部や課単位で危なげなく推進することが求められます。
規模の大きな会社では、社内の多くの部門が互いに関連し合います。1つの部門が不安定になると、会社全体に影響します。部門1つひとつが着実に運営されなければなりません。部門の運営には、多くのスタッフを束ねて同じ方向を向かせる必要があります。リーダーシップを発揮し、部内外の社員に影響を与える、つまり名前を売る、ということも評価を得るための要件になるでしょう。
組織が大きいと、なかなか名前が広く通ることは難しいのが現状。たとえばプログラミングスキルを生かして新しい業務プロセスを開発し、生産性向上に寄与した社員が、昇進・昇格の大台に乗ったとします。その時に評価部隊の1人が「俺はこんな奴知らない」と言ったら、昇進レースから脱落することがあります。名前を広く売るには、研究・開発・オペレーションなどの個人プレーに没頭するのではなく、他部門と多く接触したり、人に感謝されたり、活発に周囲の人たちを盛り上げたりしたほうが、会社の存続に役立っているとして、評価の対象になるでしょう。

たとえ専門スキルや発想力をもち合わせていなくても、元気で人の役に立ち、人をコントロールすることに長けていれば、昇進の可能性がある、ということです。
むしろ研究や開発に没頭していると、「あの人は職人だから」「コミュ障」などと揶揄されて窓際に追い込まれるリスクがあるくらいです。

規模の大きな会社では、以下が評価の対象になりそうです。

  • チームの日常業務を安定して回す調整力
  • 部内外で多くの人と関わり、名前を売る
  • 人の役に立つようなサポート
  • 組織の風土を盛り上げて活発にする動き
  • 規律・モラル・業務手順などを遵守した統制
  • その他、会社や組織運営に寄与する活動





まとめ

以上をまとめると、次のようにまとめられます。
規模の小さな会社では、光る個人プレーや成果物がそのまま評価につながるケースがある。
規模の大きな会社では、組織運営や仕事全体を回すことが評価される傾向がある。

あくまで傾向であり筆者のコラムですが、あながち間違ってはいないと思います。
また、個人プレー要件・組織運営要件、それぞれ会社の規模の大小にかかわらず大切な要素であることは、いうまでもありません。
個人の実績を高く評価する大企業もあるでしょうし、組織運営を重視する小規模企業もあるでしょう。

本記事により、会社や評価者がどのような観点で社員を見ているかを知るだけでも、少しは道が開けるかもしれません。