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後輩や部下に昇格試験の論文を指導するようなポジションになったとき、どのようにすればいいのでしょうか。
自分が受かったときに論文を体系的に学んだ人は問題ありませんが、なんとなくやって受かっちゃった、という人は指導するのが大変だと思います。
この記事では、会社の昇格論文指導をどのようにするか解説します。自分の人材育成実績にも役立つことでしょう。




やってはいけない指導

やってはいけない指導について、知っておきましょう。このやり方では、受け身になり、言われるがままにやるだけです。考えることもしなくなるため、指導相手の上達が見込めません。

書き方をひたすら説明する

「眠くなる講義」と同じです。基本的にはおもしろい内容ではありませんので、やる気に満ち溢れた相手ならまだしも、頭には残りにくいです。考えさせる時間を設けて引き込む必要があります。

ここはこう書く、と答えを教える

「こういうお題では、このように書きます」と教えるだけでは効果はありません。指導相手は考えることなく「そうなんですね」と受け止めて終わりになります。自分の業務と照らし合わせて考えさせないと書けるようになりません。

書かせて直す、の繰り返し

とりあえず書かせてそれを添削して、と繰り返して少しずつ改良していく、というのは効率が良くありません。その論文を自力で書けるようにならないと意味がないのです。基本を押さえて、少しずつ書かせながら膨らませるほうが、かえって近道です。

論文試験がなぜ課せられるのか説明する

会社が、昇格や昇進に際して論文試験を課すのには理由があります。それを説明します。
論文試験が課せられる理由を知っておく必要があるかというと、以下の通りです。

  • 理由も分からず論文勉強してもモチベーションが上がらない
  • 会社が求めていることが分かれば、論文に書く視点が定まりやすい
  • 「試験があるから勉強」ではなく、「なぜ?」と本質を追求する

3つ目は、根本的なところ捉える着眼点を先輩・上司として見せるために言います。

まずは、本人に考えさせます。ある程度考えさせた上で、伝えてください。
会社が昇格・昇進に論文を課す理由:

  • いずれは幹部クラス候補として、会社の利益や発展に必要な高い視点、経営目線を有していることの確認
  • テーマに沿った考えを、限られた時間で的確に文章で表現するビジネススキル

横並びで同じ試験を受けさせる、とか、論述の最低限のスキルを見る、論文があることで日常の業務を改めて振り返らせる、などほかにもさまざまな理由があります。それらもひととおり伝えてもいいかもしれません。しかし「論文試験」である理由は、上のふたつに集約されます。面接では細かい考えや論述を聞くには短すぎます。
会社によってはほかの理由もあるかもしれませんので、あれば付け加えてください。




目標を設定する

何事にも最終ターゲットがないと、モチベーションが上がりません。先の見えない取り組みだと、途中で練習しなくなる可能性があります。終わりがないことで、果てしなく練習論文を持ってこられても、こちらも大変です。

目標はもちろん、試験合格 ⇒昇進 ⇒給料アップ、ですが、書くことにおける目標が具体的ではないので、ここでは「どの程度の論述スキルまで到達するか」を話します。
以下のチェックポイントを設定します。

  1. 前書き ⇒詳細内容 ⇒まとめ、のメモ書きを短時間で作成できる
  2. 自分の業務の中から事例を柔軟に引き出し、論文テーマに当てはめられる
  3. 文章、内容、構成、テーマへの的確な記述により正しく論文が書ける
  4. 制限時間内に高品質な論文を書ける

指導相手の初期レベルにもよりますので、相手に合わせて「いつまでに○○、そのあと□□」という感じで進めます。指導相手のモチベーションが切れないよう工夫が必要です。

しゃべることを書かせる

こちらがまとめたものを提供すると、たくさんある資料のひとつとして特別感がありません。読んでもくれないかもしれません。
こちらがしゃべることを自分で筆記させることにより、自分だけの特別なメモになり、頭にも入り、特別感が出ます。まとめて文で表記する練習にもなります。「帰ってからそのメモを自分なりにまとめて、今後書くための参照用にして」と促すのもいいかもしれません。

論文に合格するための必要事項を知ってもらう

昇格試験の論文に合格する要素は、会社によって基準が異なる部分もあると思います。一般的に必要なこと、自分の会社特有のこと、を伝えます。
まず相手に考えさせます。おそらく簡単には出てこないでしょうから、その後に説明します。説明しても肝心なところは言わず、相手に言わせるようにします。それでも出てこなければ、答えを教えます。
最初に考えさせることで、後から聞いた答えのインパクトが強くなり、頭に残りやすくなります。

昇格論文合格のための要素で一般的なことは、以下になります。

  1. テーマに対してふさわしい記述がされている
  2. 少ない誤字脱字での正しい日本語文章で記述されている
  3. 前書き、本論、まとめ、のような読みやすい構成になっている
  4. 自分の業務経験をもとに、実績や自らの工夫ベースで書かれている
  5. 経営目線や業務改善、リーダーシップ、生産性向上などの、会社の発展につながる記述がされている

1つひとつの根拠:
1は、「質問されたことに的確に答える」という基本中の基本。
2は、部下のお手本になる管理職にいずれなっても、恥ずかしくないように。
3は、物事の筋道を立てて論理的に結論に導く、管理職、リーダーとしての素養を見る。
4は、業務の確たる実績を有し、何が良かったか把握し、テーマに応じて即座に説明できる瞬発力。
5は、そういう視点をもっていることが、管理職候補として不可欠、ということ。

5は少し注意が必要です。「出題されたテーマによっては、あまり書きすぎないように」と伝えます。また「リーダーシップ」「生産性向上」などのキーワードも連発させないことです。用意した文を書いただけ、テーマに合致していない、との判断を下される可能性があります。




指導相手の記述力が低ければ、まずメモ書きから

自分が論文練習をしたときには、自分のレベルやペースに合わせて進めれば問題ないですが、他人を指導する場合、その人のレベルによって指導する方法は異なります。

論文記述が苦手な人には、まず、要約メモ書きから始めてもらいます。おおよそ以下のような構成です。

  1. 前書き
  2. 仕事について簡単な説明
  3. 主題、問題、課題
     ・事例1
     ・事例2
  4. 事例に対する自分の取り組み詳細
  5. 今後の取り組み、抱負
  6. まとめ

(自身の会社の論文スタイルに合わなければ、それに応じて修正してください)
各項目、数行程度で書いてもらいます。まずは論文の全体の流れを把握してもらうことが第一歩です。

昇格試験の論文をスムーズに書くコツ。要約メモを作って試験合格へ

論述が得意な社員は、論文記述の基本スタイルを知っていますから、この工程をスキップしても問題ありません。書かせた練習論文の質が良くなければ、この手法を勧めてみます。

文章を書くことが苦手な人に、文章の基本を丁寧に教えたほうがよいのでしょうか? おそらく文の書き方まで教える必要はないと思います。

文章を上手に書くための6つの基本、例文で解説

そこは個別に学ばせるか、論文添削のときに、ピンポイントで教える程度で問題ありません。論文合格には、飛び抜けて上手な文章である必要はないためです。




自分の工夫を入れさせる

昇格論文では、一般論を長々と掘り下げて書くのはふさわしくありません。自身の業務経験や実績から、テーマにうまくはめ込んで分かりやすく文章で表現する、というのが会社の論文の一般的な書き方です。一般論を書くとすれば、前書きや取り組み事例を書くところで、世の中の動向から自分の仕事に落とし込むときくらいでしょう。

アピールする事例のところでは、とことん自分の工夫を入れることを伝えてください。業務での大きな成果が出せていない人でも大丈夫です。小さな成果であっても、そこに以下のような視点があれば問題ありません。

  • 問題点を抽出する感度
  • 会社や組織、部門の発展
  • その目標達成への工夫
  • プロセスを踏んだ対応
  • 周りの人を巻き込む積極性

たとえば、
「共有フォルダの中のファイルを整理した」
という、頼りない実績しかないときでも、書き方次第で大きく見せることは可能です。少し長いですが、いかにも高い意識で取り組んだように内容を膨らませた記述例をご覧ください。

テーマ: 生産性向上

チームメンバーの事務処理作業に多くの時間が割かれ、本業の開発業務に専念できないことが問題になっていた。
全メンバーの1カ月の事務処理総工数は、数十時間に及んでいる。この原因を追究したところ、共有フォルダ内の必要ファイルのカテゴリー分けの不備、多すぎるフォルダ数、階層の深さ、などにより無駄なPC操作による時間のロスが発生していることが明らかになった。
これを解決して業務効率を向上させるために、フォルダ構成の刷新を実行することを決め、以下のアクションをとった。

  • 最も時間が掛かる操作の聴き込み
  • メンバーの意見集約による新構成提案
  • 新構成による作業短縮時間の算出
  • フォルダ構成の組み換え作業

これらを進めるにあたり、メンバーやリーダーとも逐次情報共有を図りながら協議を重ね、必要に応じて先輩メンバーにも作業の協力を仰いだ。単純なフォルダ整理ではなく、需要の高いカテゴリーの重点的なユーザビリティ向上、不要なファイルの破棄、ショートカットやリンクの整備といった、生産性向上を実現するためのあらゆる手段を取り入れた。
結果として、作業時間半分への短縮が実現され、開発業務に専念できる環境が整った。また余裕時間で、月に一度の「品質向上ミーティング」の開催も可能となり、密度の濃い業務品質へと導くことができた。
そもそも、この事務処理が必須なのか、作業そのものを集約できないか、という協議も関連部門との間で進めている。‥‥(続く)

書き方やプロセス、自分なりの工夫を入れた感じを出すことで、大きな実績に見えます。今回の「フォルダ整理」くらいのことであれば、そのこと自体は長く書かせないようにします。そこに至る問題意識や周りを巻き込む姿勢が前面にくるようにし、目線を高くもつように伝えます。

後輩・部下の書く実績があまりにも少ない場合、単純作業に徹しすぎている証拠です。会社での人材育成の上でも問題があり、やらされ仕事により思考停止に陥ってしまうことも考えられます。1人ひとりのスタッフに、主体性をもって自分の判断や工夫で仕事を進めるミッションを与えることも、組織として必要な人材育成です。

思考を働かせて仕事の成果をあげる5つの方法、実用例で解説

もし論文試験まで期間があるなら、現在の業務に加えて新たなミッションを追加することも考慮しましょう。これにより、指導相手の成果と意欲が向上することも期待できます。




実践させる

論文が苦手な人には、まず要約メモを書き始めてもらいます。最初は1週間与えて問題ありません。そのかわり、しっかり考えてもらいます。
優れた要約メモを1回目で持ってきたら、早速すべて書かせてみます。
要約メモがいまいちでしたら、何度か続けて流れをつかむことに慣れさせます。メモ書きすらまともにできないと、長文は到底読めるものではないのが目に見えています。

提出日に期限を与える

練習論文や要約メモを自宅で書いてきてもらうことになると思いますが、提出期限を与え、守らせましょう。

期日に余裕を与えたり、出来てない場合に延長したりすると、次回以降の期日に対してもルーズになり、時間内に物事を達成するマインドが低下します。

論文を書くことに慣れてきたら、少しずつ期日を短くして、集中して書かせるようにします。最終的には実際の試験時間を設定して書かせるところまでもっていきます。

社会問題や時事ネタには気を配らせる

指導相手が、あまり経済や社会問題に関心がなければ、今からでも毎日少しずつ最低限の情報を取り入れるよう伝えます。
論文では、基本的に自らの取り組みや会社の発展を中心に書きますが、内まった記述になるのはよくありせん。ところどころ以下のようなフレーズを用います。
「世界的な不景気の影響を受けて個人消費が冷え込んでいるため」
「原油の高騰により仕入値が上がっているため」
「政府の施策により各企業の義務範囲が広くなり」
これらは、料理のスパイス的な効果があります。世間一般の動向だけでなく、業務関連の学会やその分野のトレンドを追うことも同じです。

論文が良くなるだけでなく、書くことそのものがアピールにもなります。
世の中の動向を論文に取り入れることによるメリット:

  • 自社との比較や、前提、背景を添えることで論述の幅が広がる
  • 広い視野をもち、業務と関連付けるセンスをアピールできる
  • 社外での環境変化に追従していることをアピールできる

もし論文テーマとして、「自社の○○の状況を、世の中のスタンダードと比較して論ぜよ」のような感じで出題されたら、日頃から新聞やニュースから情報を得ていないと書けません。
世の中の情報をキャッチして自分たちの仕事に適用する感度は、いずれ管理職になるなら必要になるスキルです。昇格するなら、社内外の両方の情報を取りにいく訓練が必要になる、ということです。

書くネタがなければ今からでも実践させる

論文に書くネタがなければ、まだ昇格には遠い、ということになります。
論文に嘘は書けません。書く内容が足りなければ、真実を書くためにも、今から足りない部分を業務で実践させましょう。

書くネタが本当にないのか、あらためて日頃の業務を振り返るよう勧めましょう。以下の記事には、日頃の業務の中にありそうなアクションを100以上集めています。

昇格試験の論文を書くネタ、知っておくと使える22の記述材料

いきなり大きな仕事をさせるのは難しいかもしれませんが、取り組みの意識を変えさせます。「共有フォルダの整理」でも、ただ整理するだけでなく、周りの人に色々質問して意見を集約したり、協力を仰いだりするだけで、書くネタが増えます。あとは、書き方次第です。

実際の指導シミュレーション

これまでの指導内容の中から、さわりの部分だけ指導のシミュレーションをしてみます。論文の指導だけに留まらず、今後の成長を視野に入れた人材育成視点での指導です。前提は、
自分: マネージャーの補佐的ポジション
相手: 若手、論文は苦手、ルーチン業務中心

自分「いよいよ昇格のための論文試験を受ける段階に入って来ましたね。論文を書くのは得意ですか?」
相手「いや、苦手ですね、大学の卒論は書きましたけど、教授が、直せ、って言ったとこ直しただけですから。」
自「今以上にステップアップするには、昇格試験の論文に合格しないといけませんね。なぜ論文試験が課せられるかか知っていますか?」
相「分かりません、なんでですか?」
自「ちょっと考えてみてください」
相「足きりのためですよね」
自「論文である理由は?」
相「文章が書けるかどうか見るとか」
自「それもひとつの理由ではあります。論文の中で多くのことを書かせることで、文章力以外に、ほかのことも分かりますが、何か思い浮かびませんか?」
相「その人のやった成果とかですかね」
自「そうです。それ以外に、何かありませんか? 論文のテーマ、つまり出題されることは、
“生産性の向上”
“会社の発展”
“これまでにない事業の立ち上げ”
のような、平社員には少し高いレベルの内容ですよ。」
相「ああ、課長とかのレベルで物事を考えることができるか見るってこと‥」
自「そうですね。ではここから、私が話すことをドンドンメモしてくださいね。
その論文を書いた人がいずれ幹部クラスになっても大丈夫か、利益や発展を考えられる経営者目線をこの段階でもっているか、ということを会社は確認したいわけですね。そして、先ほどあなたが言った、文章力に関すること、試験には制限時間がありますから、その文章力を‥」
相「時間内に正しい文章で、、正確な内容で答えを出せるか?」
自「正しい文章で正確な答え、そうです。テーマに沿った考えを、限られた時間で的確に文章で表現するビジネススキルをもつことが、マネージャークラスには必要になってくるんですね。論文が課される理由、だいたい分かりましたか?」
相「高いレベルの視点、時間内で正しい答えを文章で出す、って感じですか」
自「だいたいそんな感じでいいです。先ほどメモした内容をまとめて、もう一度考えてみてください。なぜこんな論文を書かなきゃいけないのだろう、と分からずにやるより、根本的な理由を理解して進めたほうが方向性も定まるでしょう。」
相「会社が私たちに何を求めてるかってのは、なんとなくつかめました。」
自「論文の理由を理解したところで、目標の話をします。今回論文試験に望むわけですが、どのようなレベルを目標にしますか?」
相「昇進して給料上げるってことです」
自「もちろん、それを目標にしてもらってもいいですが、論文を書く上での目標は?」
相「時間内にちゃんと合格レベルで書けるようになる。 でも、論文はハードル高すぎるんすけど。」
自「時間内に書く、というのはいいと思います。論文が苦手なら、いきなりそこまでは難しいでしょうから、チェックポイントを設けるのはどうでしょうか。どのくらいのレベルをまず目指しましょうか?」
相「そうですね、簡単な文だけでも書けるようになる、というのはどうですか?」
自「そうしましょう。まずは、全体の概略を示す要約レベルのメモを書いてみましょう。メモ書きレベルでの小規模な論文を書いて、それから少しずつ肉付けしていき、本格的な論文に仕上げていきましょう。出来そうですか?」
相「それなら簡単そうです。」
自「短いメモ書きでも、ポイントはしっかり掴んでいないといけません。合格する論文とは、どういう書き方か分かりますか?」
相「会社の発展とか、高い視点、正しい文章?」
自「だいぶ分かってきましたね。それらもあります。論文を書いているわけですから、最初から最後まで自分の意見だけを書き続けたらどうですか?」
相「それはさすがにおかしいですね。」
自「どんな書き方がふさわしいと思いますか?」
相「前書きみたいのがあって、次に自分の主張があって、最後まとめ、のような形ですか?」
自「そうです。論文の構成がしっかりしてないといけません。今あなたが言ったことは、序論、本論、結論、という流れです。ほかには? たとえば、会社は社員にプロの執筆家のような論文を求めてますか?」
相「それはないと思います。自分なりの工夫が入っていることが必要でしょうね」
自「その通りです。作家や評論家でもないのに一般論を繰り広げても滑稽なだけですね。自分の実績をうまく説明できることが重要です。あと、重要なことがもうひとつあります。非常に基本的なことです。何でしょうか?」
相「何でしょうね‥」
自「試験問題には、○○について論じなさい、と出題があります。○○について論じなくてはなりませんね。」
相「あ、出題に対する答えになっていること、ですか?」
自「正解。出題されたテーマに的確に論じた内容に仕上がっていることです。○○について論じないといけないのに全然違うこと書いていたら、用意してきた文を書いただけ、と捉えられてしまいますね。
では、合格する論文に必要なこと、おさらいしましょう。メモしてください。

  1. テーマに対してふさわしい記述
  2. 正しい日本語文章での記述
  3. 読みやすい構成
  4. 自分の実績や工夫が書かれている
  5. リーダーシップや会社の発展につながる記述

ですね。5番目は、論文テーマにそぐわない場合、あまり書きずぎないようにしてください。」
相「わかりました。メモ書きとはいえなんか難しそうですね。」
自「要約メモは、先ほど少し話した、序論・本論・結論だけを端的に書けばOKです。要約メモとは、○○○○です(説明する)。」
相「論文の骨格が分かりやすいですね。」
自「この程度のメモ書きなら、そんなに長い期間考えなくても出来ますね。論文のテーマはこれでどうでしょう。
“会社は、各部門の連携がうまく機能することにより、その相乗効果で多くの実績をあげます。自分の所属する部門の付加価値を上げるためには何が必要ですか。そのために自分が取り組んでいることを述べなさい”
一週間後に要約メモを見せてください。」
相「承知しました。1週間あればできそうです。」
自「でも、しっかり考えて進めてください。合格する論文に必要な5つの項目がすべて網羅されているか、メモ書きを見て確認してください。採点者の気持ちになって、この論文の書き手がマネージャーやその候補に推薦されても問題ないか、という視点でメモを読み返してみてください。」
相「質問ですが、書くことがないんですけど‥何を取り上げればいいんですか?」
自「あなたの業務の中で本当にありませんか? それも含めて考えてみましょうか。ヒントは、

  • 単純作業の中でも工夫したこと
  • 不要だと思って切り捨てたこと
  • 必要だと思って追加したこと
  • ほかのスタッフと協業したこと
  • 結果的に改善されたこと

です。どんな小さなことでもOKです。自分の仕事を振り返るいい機会ですね。もし、書く内容が足りない、と思ったら、論文に書けるような行動を、意識的に業務に取り入れてみるのもいいですね。そのときは私にぜひ相談してください。」
相「まずは、考えてみたいと思います。」
自「がんばってみてください。」

以上です。いかがでしょうか。
自分の思ったように指導相手が発言してくれないかもしれませんが、決して答えを明かさず、本人の口から言わせるようにしましょう。
要約メモをすんなり書けるようになれば、あとはそのメモに、前提条件や取り組み事例の詳述といった肉付けをするだけです。
指導相手の論述スキルが徐々に上がると、自らの人材育成の手応えを感じてきます。

まとめ

やってはいけないことから、目標設定、要約メモの作成方法など、ひととおりご紹介しました。
ただ論文を教えるだけではなく、人材育成観点で良い指導を心がけたいところです。
メモを本人に取らせ、ポイントや答えを本人に言わせて印象付けることも効果的です。考えて自ら知恵を絞る、という姿勢に向かわせることが部下・後輩の育成につながります。
相手のレベルにより、指導内容や話すレベルは変わると思いますので、ぜひ人を見て指導をすることも心がけてください。

論文の書き方や記述例は、以下の記事で参照できます。

会社の論文試験に合格する! 昇進試験、採用試験での論文の書き方のコツ、対策を解説

昇格論文には、総合力が試されます。テーマに対する的確な解答にくわえ、文章、構成、視点、工夫がうまく取り入れられているか見られます。部下、後輩の成長による総合力の発揮と、自分の教育、指導力のステップアップのために、実りのある時間をお過ごしください。