英語を話す相手によって自分のスピーキングを加減すること
今回は、自分の英語を上達させることに関する内容ではなく、話している相手を見て英語でのコミュニケーションをより円滑に取れるような考え方についてお話しします。
「英語を話す」ということは、アメリカ人やイギリス人と話すだけでなく、第二言語として話すヨーロッパやアジア諸国の人達とも英語で話す機会も多く巡って来るということです。
自分がある程度、英語ペラペラっぽくなりつつある、だいぶ言いたいことが言える、というレベルになってきた時に、自分が話せる英語をバンバン発射してもそれが相手に伝わらなければ意味がありません。
「英語ペラペラ」とか、「英会話マスター」というのは自分が言いたい事を言えて、相手の言っていることを聞き取る、ということが目標ではありません。目標はあくまで、
外国人との英語でのコミュニケーションを円滑に出来るようになること
です。そのために気に掛けておくべきことがあります。それは、
相手のレベルによって自分の英語力をコントロールする
ことです。相手の英語のレベルが自分とほとんど同じ、ということは結構まれです。自分よりレベルが低ければ、簡単な言い回しでゆっくり話して伝える、また相手のレベルが高ければチマチマと簡単な言葉で説明するのではなくやや難易度の高い単語をスラスラ並べてでもスムーズに会話を運ぶことが重要です。
ヨーロッパの人達と話す時は胸を借りるつもりで
日本人が留学もせず国内で2年程度でマスターした英会話力だと、ヨーロッパ系の人達のほうが遥かに英語が上手です。一緒に会話していると、スピーキング、リスニング共に、とても叶わないと痛感させられます。
自分が覚えた単語、少しでもかじった表現をフル稼働しながら聞いて話さないと、会話のペースが鈍り、コミュニケーションに支障を来たします。
もし話していて厳しいと思ったら、恥ずかしがらずに、
Could you speak a little more slowly?
少しだけゆっくり話してもらえまえんか?
と言って初めからレベルをある程度こちらに近づけてもらえるよう働きかけることも時には必要です。相手はこちらに対してレベルが低いなーとは思わず、「自分の言っていることを正しく理解してくれようとしている」と感じ、より良いコミュニケーションが取れることに繋がります。
ヨーロッパの人達の英語事情について少しお話しします。
ヨーロッパで英語が特に上手なのは、オランダ人やスウェーデン人、デンマーク人などが挙げられます。筆者も話したことがありますが、非常に上手です。友人のスウェーデン人の話では、国内に有る多くの情報が英語で表現された物であり、小さい頃から英語の番組が普通にテレビで流れていた、書物も英語のものは多かった、とか英語で行う授業があったということだそうです。 スウェーデン語で書かれている事で得られる情報が、非常に限られているということになります。
オランダやスウェーデンなどでは、町のお店の店員や通りすがりの若者まで本当に多くの人達が英語が上手で、子供の頃から自然に英語にふれていたり母国語と似ているし、ズルい、と思ってしまうほとです。
ドイツ人やフランス人、イタリア人ももちろん英語が上手です。中でもドイツ人はかなり英語が上手であり、日本在住のドイツ人で日本人を相手に英会話を教えている、という人が居るくらいです。その人達の英語は全くネイティブスピーカーと寸分変わらないくらいの発音、イントネーションです。
しかし多くの文献や情報、エンターテイメントが自国語(ドイツ語、フランス語など)で表現されているため、生活面、勉強や娯楽において自国語しか知らなくても事足りるのです。ですから北欧に比べて中央ヨーロッパ(ドイツ、フランス近辺)のほうが、英語を話せない人はやや多いと感じられます。
実際にドイツ人やフランス人よりもスウェーデン人やデンマーク人、オランダ人のほうが話していてかなり苦労しました。話すスピード、使用する語彙など、ドイツ人やフランス人よりも日本人にとってはハードな印象です。(大勢のヨーロッパ人と話してきたうえでの傾向であり、もちろん人によってレベルは様々です。)
以下の話者の言語人口を見ても、スウェーデン語の話者は少数派ですから、英語が堪能であることにより世界が開けていく、と言えるでしょう。
フランス語人口 2.2億人
ドイツ語人口 1.3億人
スウェーデン語人口 950万人くらい
日本語人口 1.2億人
フランス語やドイツ語は日本語に比べて英語に言語体系が近いため、日本人よりも吸収がよく普通に英語が話せても不思議ではありません。
少し脱線してしまいましたが、このような背景のため、ヨーロッパ系の人達との会話では、うまくレベル差を埋めてもらいながら会話して行くと良いと思います。その中でも自分の会話スキルはアップして行きます。最初は胸を借りるつもりで話していきます。
それにしても日本語人口も1億人以上いるので、英語が出来なくても何とかなってしまうのも納得できます。確かに日頃欲しい情報のほとんどが日本語で入手できると言っても過言ではありません。
この母国語(日本語)だけで何とかなってしまう状況により、日本人が英語を必須と感じることがなくなり、不得意とする事態に繋がっているとも言えるかも知れません。
アジアの人達と話す時はシンプルな英語を心掛けると必ず通じる
ところで、英語を話すと世界中の人達と会話できることになるわけですが、私の経験上、アジア(特に東南アジア)の方々は時制や文法、単語や表現をそれほど上手に使いこなしている人が多くありません。
(※英語を公用語としている国民、フィリピン人やシンガポール人は上手です。)
もちろん英語が上手なビジネスマンのアジア人も居ますが、ヨーロッパの人達と比べると明らかにレベルの差があるのは事実です。
英語で会話することへの慣れは、日本人よりは遥かに上だと思いますが、文法や時制に対する意識は、日本人よりもかなり低いと言えます。
日本人は中学・高校で、主語+動詞+目的語や、過去について話す時には動詞が変化するなどと文法を中心に細かく学習しているので、日本人がカタコトに英語を話しても
You meaning. (you mean が正解)
Yesterday I go. (I went yesterday が正解)
とは言いませんが、アジア系の人と話すと、普通にこのような粗削りな文法での言い方を頻繁に聞きます。相手がもしこのような文法無視の表現で話して来た場合、こちらが正しい文法で話した場合、内容を理解してもらえない可能性があります。
例えば、「あなたもずっとそのように考えていましたか?」というニュアンスを伝える場合、
Have you also thought so?
という英語になります。字面は問題ありませんが、不規則に変化するthink の過去・過去分詞形 thought は、会話の中では聞き取ってもらいにくいことがあります。このケースでは微妙な「ずっとその考えで来ているか」の意味合いをを含めず、
Do you think so?
とあえて簡単に聞くことで、会話をスムーズに運ぶことが重要です。どうしても過去の時点のことを聞きたいなら、
Yesterday you think so too? (昨日もそう考えていましたか?)
と付け加えれば良いです。過去の事でもあえて現在形のthink を使います。
think だけではなく、不規則変化する動詞(take、go、teachなど)はあえて現在形のまま使います。時制を表す語句(yesterday, tomorrow, last weekなど)を付ければいつの時点の事を話しているかは理解してもらえるので、よりシンプルに話すと円滑に理解し合えます。
あくまでその会話の相手のレベルに依りますし、私の個人的な見解になりますが、アジア系の人との英会話において自分が話す際には、時制を表す表現12ケのうち、
1.現在形
2.過去形
3.未来形
だけで話すようにすると会話がスムーズに運びます。
※英語の時制について少し詳しく知りたい方は、以下をご参照ください。
ちなみに、英会話スクールやプライベートでの英語個人レッスンでは、このような文法無視の奇抜な教え方は一切しません。英語として間違いだからです。でも、英語による円滑なコミュニケーションという所に重きを置いて考えた場合、話す相手によってこのようなコントロールも有り!という感じで押さえて頂ければ、と思います。
アジア系の人達のスピーキングについてはそれぞれのお国訛りがあります。日本人特有のカタカナ的な発音だと通じないこともありますので、分からない時には正直に分からないことを伝えてお互い理解できるまで歩み寄る必要があります。
英会話をマスターする目的は、文法も時制もとにかく正しい英語を話す、ということではなく、何度も言いますが、
英語を話す相手と良いコミュケーションを取る
ということです。実際の会話の時には是非心掛けてみて下さい。必ず伝わります。